アカウンタビリティとは?説明責任を果たすための具体例や実施のメリットを解説

アカウンタビリティとは?

アカウンタビリティ(accountability)とは、「会計」を意味するアカウント(account)と「責任」を意味するレスポンシビリティ(responsibility)を組み合わせた言葉。日本では、「説明責任」または「説明義務」などと訳される。

従来は、「株主や取引先などのステークホルダーに対して、企業の経営者が会計情報を報告する責任」という意味の会計用語として用いられていた。

しかし最近はより多様なシーンで使われ、会計情報以外にもCSR(企業の社会的責任)活動や環境問題などへの取り組み、不祥事などに対する説明を求める場合などにも用いられる。そのためアカウンタビリティは、事業活動に関連して企業が果たすべき責任の一つという意味も併せ持っている。

さらに広義では対象の範囲も広がっており、説明や報告する責任が生じたときにアカウンタビリティが用いられるようになっている。

例えば、企業以外にも行政機関や政治家、学校や病院などの法人が、活動内容や結果の報告を関係者から求められるという場合にもアカウンタビリティが使われる。そのため企業などの組織だけではなく、個人がアカウンタビリティを求められることもある。

アカウンタビリティの目的

企業に求められるアカウンタビリティは、主に以下の目的のもとに果たされる。

会社法によって情報を開示する義務があるため

会社法では、株主や取引先、関係者などのステークホルダーに対して、財務状況や経営方針、事業活動といったIR情報の提供を義務付けている。これは、経営者は株主から経営を委託されており、その関係は対等であると考えられるからだ。情報に格差がないようにすることが必要なのだ。

ステークホルダーに対する情報開示は、決算期ごとに行われる株主総会などで行われるのが通常だ。

社会的責任を果たしていることを報告するため

企業の社会的責任(CSR)とは、環境問題や人権問題、ダイバーシティ促進など社会に与える影響に対して持つ企業の責任のこと。利益を求めるだけではなく、企業にはこうした社会的責任に積極的に関わることも求められている。

CSR活動への取り組みは、社会的な信用を高めることにもつながる。そのためCSR活動に関する情報発信を行うことで、企業のブランディングにも役立つ。

また、例えば事業内容が自然環境などに影響を与える企業の場合、周辺の住民や社会からアカウンタビリティを求められることもある。こうした企業は社会全体や住民に不利益を与えないように、自社にとって不利な情報でも適切に情報開示をしてアカウンタビリティを果たす必要がある。

経営の透明性や健全性を証明するため

会社法に則って情報開示を行ったり、CSR活動を適切に報告することによって、企業経営の透明性や健全性を証明することができる。会社の目的の一つは利益を得ることだが、正しい事業活動によって利益が得られていることを知らせることで信頼を獲得することにつながる。

また求められていない場合でも、義務の範囲外の情報を開示する企業の事例もある。このようなアカウンタビリティに対する積極的な姿勢は、企業の透明性や健全性をさらにアピールすることになると考えられる。

アカウンタビリティの重要性が高まる背景

アカウンタビリティの重要性が日本で高まったのは、1990年代の薬害エイズ事件がきっかけとされる。関わった企業や行政に対して、企業活動を優先したことで社会全体に薬害が広がった責任が追求された。

事件に関連した企業はコンプライアンス遵守やアカウンタビリティに対する意識が低かったと考えられており、ステークホルダーを含む社会に対する誠意を欠いていたことで、社会から厳しい評価を受けて信用を落としていった。

1990年〜2000年代はこうした企業による不正や不祥事が続き、コンプライアンス経営の重要性が高まった。同時に、「物言わぬ株主」から「物言う株主」が多くを占めるようになり、株主重視経営に切り替わったことも要因の一つに挙げられる。

ステークホルダーとの信頼関係を維持・向上させていくことで、資金調達がしやすくなり企業の成長につながっていく。その手法の一つとして、アカウンタビリティの重要性が高まっていったと考えられる。

アカウンタビリティの具体的な例

アカウンタビリティの具体的な例とは?

さまざまなシーンで用いられるアカウンタビリティの具体的な例を紹介する。

経営におけるアカウンタビリティ

前述したように、上場企業にはステークホルダーに対して株主総会などで財務状況を報告する義務があるほか、金融商品取引法に基いて有価証券報告書や監査証明を受けた財務諸表を金融庁に提出する必要がある。

また、CSR活動や環境問題への取り組みなど、より幅広い業務に対する説明責任が求められるようになっている。この場合、アカウンタビリティを果たす対象となるステークホルダーには、地域住民や社会全体などを含むこともある。

コーポレートガバナンスにおけるアカウンタビリティ

東京証券取引所では、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、コーポレートガバナンス・コードを作成。透明および公正かつ迅速・果敢な意思決定を行うための基本原則として、次の5つのポイントを挙げている。

1. 株主の権利・平等性の確保
2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
3. 適切な情報開示と透明性の確保
4. 取締役会等の責務
5. 株主との対話

引用:コーポレートガバナンス・コード|株式会社東京証券取引所

このうち、特に「3.適切な情報開示と透明性の確保」「5.株主との対話」については、アカウンタビリティに関わると考えられている。

個人におけるアカウンタビリティ

企業内において経営者やプロジェクトリーダー、管理職者など権限を持つ者が、その他の従業員に対してアカウンタビリティが求められることもある。

また企業内だけではなく、医療や介護の現場、小売店など商品を扱う場所においても、アカウンタビリティを果たすことが求められる。具体的にどのようなシーンでアカウンタビリティを求められるか、代表的な例を紹介する。

  • 業務執行に関して、権利委譲されたプロジェクトリーダーが行う業務の進捗状況報告
  • 人事異動が行われる場合、当人に対して行うその背景の説明
  • 購入者に対して、リスクを含めて行う商品の説明
  • 治療や検査に対して患者に行う説明
  • ケアプランを作成した際にケアの方向性を要介護者とその家族に対して行う説明

これらのシーンでは、その業務を担う個人がアカウンタビリティを果たすことになる。

アカウンタビリティを果たすメリット

アカウンタビリティを果たすメリットとは?

アカウンタビリティを果たすことで得られるメリットとして、代表的な以下について解説する。

ステークホルダーとの信頼構築ができる

アカウンタビリティの大きなメリットとなるのが、ステークホルダーとの信頼関係の構築だ。適切に情報を開示することにより、投資家からは安心して会社経営を任せてもらうことができ、取引先からの安心や評価にもつながる。つまり、良好な取引をするためにも、アカウンタビリティを果たすことが重要なのだ。

透明性のある企業であることを示せる

企業がアカウンタビリティを果たすことは、透明性のある企業であることを社外に示すことになる。また、従業員に対しても、健全な経営を行っていることを示すことができる。情報開示をすることで、経営者はより健全な経営を心がけるようになることもメリットの一つと考えられる。

企業のブランド価値を高められる

CSR活動に関する取り組みを適切に発信することは、取引先や顧客などから好印象を得るきっかけにもなる。企業のブランド価値を高めることにもなるため、CSR活動により積極的に取り組むことにもつながる。

社会から信用を得られる

財務状況を含む会計情報、またはCSR活動などの情報を必要に応じて開示することは、企業の健全性をアピールすることにもつながる。企業を幅広く知ってもらうことにも役立ち、社会からの信用を得やすくなると考えられる。

従業員のモチベーションが上がる

企業の財務内容を知ることは、従業員のモチベーションアップにもつながる。自分が行っている仕事が業績につながっているか、事業活動を通して社会にどのように貢献しているかを知ることができるからだ。

また、今後のビジョンや方向性などを知る機会にもなり、コーポレートガバナンスの強化や生産性の向上につながることも考えられる。

優秀な人材採用にも有利に働く

社会的責任を果たし、透明性の高い健全な企業であることが浸透すると、健全性の高い企業で自分の価値を高めたいという意欲の高い人材が集まるなど、採用活動でも優位になりうる。

アカウンタビリティを果たさないことで高まるリスク

一方、アカウンタビリティを果たさない場合、企業を経営する上でリスクが高まることもある。代表的なのが以下の例だ。

社会的信用が低下する

企業がアカウンタビリティを果たさない場合、社会的な信用が低下してしまうリスクがある。特に不祥事などが発覚した際は、新聞やニュースなどで大きく報道されることに加えて、現代はSNSによってさまざまな憶測が拡散されることもある。

企業にとって不利になることであっても正確な情報を提供し、それにどう対応していくか説明義務を果たすことで騒動を最小限にとどめることができる。これはリスク管理の一つにもなる。

資金調達が困難になる

アカウンタビリティを果たしていないと、資金調達が困難になる可能性がある。投資家が投資判断をする際は、企業が開示している情報をもとに行うからだ。

開示した情報に透明性や納得感を感じない場合はもちろん、情報が不足している場合でも投資は行われないのが通常だ。そのため、「アカウンタビリティが果たされていない」と投資家が判断した場合は、資金調達に影響が出てくると考えられる。

法令違反になる

企業や行政機関の場合、適切な情報開示が行われない場合は法令違反に当たる可能性がある。

会社の場合は、会社法や金融証券取引法などによって適切な情報開示を行うことが義務付けられている。情報開示違反には100万円以下の過料が科せられるほか、不正な決算公告によって損害を与えた場合は損害賠償に発展するケースもある。

一方、行政機関は「情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)」において、アカウンタビリティを全うすることが義務付けられている。開示請求権に応じて行政機関が保有する情報を公開することが、公正で民主的な行政の推進につながるからだ。

まとめ

「説明責任」や「説明義務」を意味するアカウンタビリティは、企業においては、会計情報や環境問題への取り組みといったCSR活動などの情報を開示することを指す。また、不正や不祥事などがあった場合は、社会に対する責任としてアカウンタビリティが求められる。

一方、アカウンタビリティは企業などの組織だけではなく、個人に対して求められることもある。コンプライアンスを遵守した正しい行いをするのはもちろん、必要に応じてアカウンタビリティを果たすことは社会的な信用の獲得につながる。組織や個人におけるアカウンタビリティの重要性について改めて認識することが求められる。

参考記事
アカウンタビリティ|野村総合研究所

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