VUCA(ブーカ)とは
VUCA(ブーカ)は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの言葉の頭文字をとった言葉で、「社会やビジネスの環境が複雑化したことで先行きが不透明になり、予測が困難なことなどが起きやすい状態」を表す。元々軍事用語として使われていたが、2010年以降はビジネス用語としても使われている。
現代社会は、グローバル化によって国家間の関係は日々変化しており、それは経済状態にまで影響を及ぼしている。また、それに伴って自国の政治に対して不信感を抱いたり、感染症の被害が拡大するなど、私たちの生活にも大きく関わる問題も多数存在している。また、ITをはじめとする技術も急速に進化しており、さまざまな物事が大きく変化している現状だ。
そんな社会において、VUCAへの対策を行うことがビジネスを成功させる要因であるとして注目されている。
VUCAが生まれた背景
先述のように、VUCAは元々軍事用語として使われていたものだ。長い間、国や地域同士の戦争や紛争は、各国の軍の参謀によって正確な情報収集が行われ、それをもとにした緻密な計画が立てられていた。現場の兵士たちは、その作戦をもとに動いていたのである。
しかし1990年代に入ると、敵は国ではなく、テロ組織などの指令系統が曖昧な組織へと変化する。これまで培った軍のノウハウや戦争における常識は通用しなくなったことで、軍事戦略が複雑になっていった。そして、この新たな時代の軍事戦略はVUCAと呼ばれるようになったのである。
VUCAがビジネスで注目される理由

複雑化した国同士の関係、温暖化をはじめとした地球環境問題、災害の巨大化や感染症の流行、働き方改革、性の多様化――政治や経済などの国の問題から、個人的なキャリアや価値観に至るまで、現代社会を構成する要素は、ここに挙げたもの以外にも多数存在する。
ビジネスシーンでは、昨日正解だったものが今日は不正解になることが往々にしてある。消費者のニーズをいち早くキャッチし、臨機応変に対応したり、自ら進んで改革を行うことが求められる。
ビジネスで成功するためには、これらの問題を本質的に理解し、未だ顕在化していない課題を解決するようなアプローチをしていかなければならない。それを見極めるために、VUCAの視点は大切になるのだ。
VUCAが意味するもの
では、VUCA意味するものとは、一体どんなものだろうか。ここでは、それぞれの要素について詳しくみていこう。
Volatility(変動性)
物事や価値観が大きく、かつ素早く変化することを「変動性」という。たとえば、近年世界を震撼させた新型コロナウイルスの流行は、働き方や私たちの生活など、従来の社会のシステムを大きく変化させた。また、その情報や政府の対策が日々流動していたことは、記憶に新しい。
このような変動性によって未来の見通しが分からなくなり、予測がつかない状況になっている。
Uncertainty(不確実性)
インターネットの発展に伴い、SNSが生活の中心になるほど発達したIT社会。その恩恵は多大なものであるが、一方で膨大な情報が溢れる変えることは、世の中の混乱の原因ともなっている。
特に感染症の拡大や災害時などの有事の際、SNSの手軽さや素早さが仇となり、真偽不明な情報、いわゆる「フェイクニュース」が次々と投稿されるようになった。これはまさに「不確実性」をあらわすものである。
Complexity(複雑性)
グローバル化が進んだことで国家間の交流が活発になり、人種、国籍、宗教観など、一つの国において社会を構成する要素は、急激に増加している。昨今ではそれに伴う多様性も叫ばれるようになり、かつてないほどに人々の価値観は細分化した。
そのため、ビジネスにおいても市場のニーズは複雑化しており、ある国や分野では成功したビジネスモデルが、違う国や分野で通用しないといった事例も発生している。
Ambiguity(曖昧性)
VUCAにおける「曖昧性」の意味は日本語とは異なり、「一つのものに対する解釈が複数あること」を意味している。つまり、これまでの要素のうち「変動性」「不確実性」「複雑性」が絡み合って起きる一つの物事に対し、その因果関係が曖昧であることを指している。
曖昧性によって「この成功にはどんな要因があったのか」「この失敗にはどんな原因があったのか」といったものを分析しづらい状況を生んでおり、これまでの常識や方法が通用しなくなっている。
VUCA時代に必要な力

このようなVUCA時代で生きていくためには、一体どんな力が必要なのだろうか。ここでは、主に4つの力について列挙する。
問いを立てる力
いまの時代には正解のない問題が多数存在しているため、現状をよく観察して問題点を見極め、膨大な情報から仮説を立て、都度状況と照らし合わせながら解決策を生み出す力は、VUCA時代を生き抜くための、最も重要なものだろう。これは、デザイン思考とも呼ばれ、ビジネスや社会の中で注目されている。
この力を養うためには、日ごろから物事に対して「なぜ」「どのように」という意識を持つようにし、問いを立てる力を身につけていきたい。
情報リテラシー
リテラシーとは、ある分野に関する知識を応用する力のことを指す。つまり情報リテラシーとは、世の中にあふれる情報の中から、ソースの正しいものを選択する能力のことだ。
誰もが気軽に情報を発信できるようになったいま、適切な情報をきちんと見抜くこと、その情報をもとに正しく状況を判断し、最適解を見つけていく能力が重要視されている。そのためにも、様々な学問に触れるリベラルアーツの必要性も高まっていく。
自分で生きる力
これまでの常識やルールが通用しない状況では、上司や年長者が必ずしも正しい判断をできるとは限らない。会社自体も年功序列や終身雇用が当たり前ではなくなり、組織に属していれば安心できるという時代は終わったともいえる。
これからは相談する人や協力する人、仕事の仕方や範囲を自分で選択し、組織に属していても「ここで何ができるか」を自分で考え、周囲から求められるような人材になる必要がある。
行動力
情報を見抜き、仮説を立てたら、それを実行しなければならない。失敗を恐れたり、前例にないからといって行動を起こさなければ、仮説を実証することは不可能だ。
VUCA時代にあっては、まさに「やってみなければ分からない」といったところだろう。完璧になるまで待つのではなく、これまでにないアイデアを素早く試し、反省点を生かしながら改善していこうとする行動力が、VUCA時代には必要な能力なのである。
VUCA時代に対する国の動き
2019年3月、経済産業省が発表した「人材競争力強化のための9つの提言(案)〜日本企業の経営競争力強化に向けて〜」において、VUCA時代への変化対応とイノベーションの重要性について触れられている。
その中の「人材マネジメントに関する3大原則」の3つ目に、「経営トップが率先して、VUCA時代におけるミッション・ビジョンの実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること」と提言された。そのために、柔軟かつスピーディーなビジネスモデルを構築し、実践できるような体制づくりが求められるとしている。
具体的なアクションとして、雇用形態の多様化、スピーディーな事業展開の中である程度の失敗を許容することなどが挙げられている。
VUCA時代の課題
VUCA時代の最大の課題は、せっかく考えた事業戦略や成功モデルも、すぐに通用しなくなってしまうことだ。また、組織においては柔軟な考えを持って対応するために、より専門性の高い、様々なバックグラウンドを持つ人材を採用する必要がある。
さらに、求められるリーダー像も以前とは大きく異なっている。日本社会では、判断や意思決定に時間がかかる傾向があるが、これではVUCA時代についていくことはできない。迅速な判断を行うことができ、かつ強い責任感をもつリーダーが求められている。
しかし、これには従来の常識やルールが妨げになることから、既存の組織においてこの点はなかなか難しい問題でもある。
まとめ
元々は軍事用語として使われていたVUCA。それは新しい時代の始まりとともに、前時代的な戦略が通用しなくなったことから生まれた戦略だ。
現代における社会の構造の複雑化は、戦場だけではなく、ビジネスシーンにおいても大きな問題として私たちの前に立ちはだかっている。
およそ30年前からIT技術は信じられないほど進化し、かつての人類が思い描けなかったような社会が誕生した。その結果、私たち現代人は、これまでの常識やルールが通用しない場面に何度も遭遇することとなってしまった。
VUCAについて考えること、そして対策を行うことは、現代社会を生き抜くために重要なスキルだ。特にビジネスに関わる人は、多様性を容認し、時代を先読みした迅速な判断能力が重要となるだろう。
【参考サイト】
What is VUCA (Volatility, Uncertainty, Complexity and Ambiguity)? | Definition from TechTarget
What Does VUCA Really Mean?|Forbes
What Is VUCA?|Coursera
人材競争力強化のための9つの提言(案)|経済産業省
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