ネットリテラシーとは?
ネットリテラシーとは「インターネットリテラシー」を略したもので、インターネットを適切かつ安全に利用するための知識と能力のこと。インターネットを「使いこなす能力」とも言われる。
SNSやインターネットショッピングの利用増加、行政サービスのオンライン化などで、インターネットを利用する機会が社会全体で日々増えている。それに伴い、関連トラブルも増えており、ネットリテラシーの重要性が高まっている。
SNSの普及などにより、多くの人が情報の受信者であり発信者でもあるため、ネットリテラシーは情報を発信する側と受け取り側に分けて考えることも必要だ。それぞれ、具体的には以下のことが重要とされる。
情報を受け取る際のネットリテラシー
インターネット上の情報は、誰が発信したのかわからないものも多い。そのため、情報の信頼性を意識することが重要だ。
悪意のある嘘やデマの情報だけではなく、思い込みや誤解がそのまま公開されていることもある。そのため情報を取捨選択して、自分にとって有用な情報を選ぶ能力を養うことが求められる。
情報を発信する際のネットリテラシー
一方、インターネットで情報を発信する際は、誰が見るかわからないということを意識することが求められる。人と面と向かって話をするときは、相手の表情が見えるため、言葉を選びながら話すことができる。しかしインターネット上では自分の本音が書ける分、ささいな投稿が誰かを傷つける可能性もある。
また、自分の個人情報はもちろん、他人の知られたくない情報を容易に公開できるのもインターネットのリスクの一つだ。一度インターネットに出た情報は、半永久的に残る可能性もあることから、不都合な情報が意図せず浮遊し続けることもあり、これはデジタルタトゥーとも呼ばれる。不特定多数の人の目に触れる可能性があることを念頭に置いたうえで、情報の発信には慎重さが求められる。
そもそも、リテラシーとは何か
そもそも「リテラシー(literacy)」の意味は、「読み書きの能力と知識」のこと。ただし、現在は「特定の分野に関する知識や能力、それを活用する力」というような意味として使われている。
ビジネスにおいては、社会人の基礎力というような意味合いで使われることも多い。学習して身につけていくもので、リテラシーが「ある/ない」「低い/高い」などと表される。能力を表す言葉としては「スキル(skill)」もあるが、スキルの場合は遂行する能力を指しておりニュアンスが若干異なる。
関連する言葉として、情報を取り扱う際に求められる「情報リテラシー」、IT技術に関する能力を意味する「ITリテラシー」、IT技術を活用する能力の「ICTリテラシー」、新しいテクノロジーに対する「デジタルリテラシー」などがある。
このほかにもさまざまな分野で使われており、「健康リテラシー」「金融(マネー)リテラシー」「メディアリテラシー」「キャリアリテラシー」といった言葉もある。
ネットリテラシーが求められる背景
ネットリテラシーが求められるようになったのには、インターネットの利用時間の増加に伴いトラブルが増えているなどさまざまな背景がある。代表的な4つの問題について解説する。
インターネットを利用する時間が増えている
総務省の「令和5年情報通信白書」によると、2022年における個人のインターネット利用率は84.9%にのぼり、約9割の人が利用していることになる。年代別では、13〜49歳は約98%とほぼ100%だ。

また、こども家庭庁の「令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」によると、青少年(10歳〜17歳)のインターネット利用時間は1日平均4時間57分で、前年度よりも約16分増加している。高校生では1日平均約6時間14分で、こちらは前年度より約29分増えている。
このように現代人の大半がインターネットを利用しており、さらに利用時間も増加傾向にある。インターネットに触れる時間が増えれば、利用の際のトラブルの可能性が高まるため、ネットリテラシーを向上させる必要性も高まると考えられる。
デジタルコミュニケーションの機会が増えている
総務省の「令和5年情報通信白書」によると、2022年時点で日本のソーシャルメディア利用者数は1億200万人となり、2021年の9,700万人から大きく伸びている。
SNSの利用が増えると、不特定多数の人と交流する機会が増える。その場合、ネットリテラシーが低いままではトラブルに巻き込まれるリスクが高まると考えられる。
インターネット上に情報があふれている
インターネットの普及により、世界各地の情報が見られるようになっている。便利になる一方で、デマや嘘の情報を含むフェイクニュースや信憑性の薄い情報も多く紛れ込んでいる。そのため、ネットリテラシーを高め、ひとりひとりが情報を選択する必要がある。
なお、総務省「令和3年度 国内外における偽情報に関する意識調査」では、「ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)」で偽情報を見かけた割合は日本では58.5%、世界全体では69.1%となっている。
インターネット上に個人情報が流れる危険がある
インターネットを使うリスクの一つに個人情報の漏えいがある。個人情報の漏えいは犯罪につながることも多く、自分の身を危険にさらすことになりうるが、簡単に不特定多数の人に自身の個人情報が知られてしまうリスクがあるのもインターネットの特性だ。
しかも一度インターネット上に投稿された情報は、何度も拡散されたり、スクリーンショットなどで保存されたりするため、基本的に完全削除はできないとされる。これはデジタルタトゥーとも言われる。また、デジタルフットプリントやデジタル足あと、デジタルシャドーなどと言われ、インターネット上ではその履歴が残ることもトラブルの要因になる。
なお、総務省「令和5年情報通信白書」では、「インターネット利用時に感じる不安」理由について「個人情報やインターネット利用履歴の漏えい」が90.1%の割合となっている。

ネット上で起きやすいトラブル

ネットリテラシーが低いと、トラブルに巻き込まれるリスクが高くなる。代表的な例として、次の7つについて解説する。
個人情報が漏えいする
さまざまなサービスや行政手続きがオンライン化され便利になる一方、個人情報の漏えいリスクが拡大している。例えば、インターネットショッピングを利用するには住所や氏名などの入力も必要で、商品を購入する際にクレジットカード情報を提供することも少なくない。
また1枚の写真を投稿したことで自宅や通っている学校、職場などが特定されることもある。こうした情報は拡散されると、デジタルタトゥーとして半永久的にインターネット上で誰でも見られるような状態になってしまう。つまり半永久的に、個人情報がさらされる危険があるということだ。
嘘やデマの情報に惑わされる
インターネット上にはさまざまな情報があふれているが、中には悪質な嘘やデマの情報も紛れている。世間を混乱させるために、意図的にフェイクニュースを流すこともインターネット上では可能だ。
このような嘘やデマの情報によって自分自身が惑わされるだけではなく、事実確認をせずにシェアしたために社会的な混乱に加担することもある。デマを拡散したことで被害が出た場合は、損害賠償の対象になったり、犯罪に問われる可能性もある。
SNSのトラブルに巻き込まれる
SNSでの炎上や意見の食い違いによる争いは日常茶飯事だ。いずれも、自身の思い込みや周囲への配慮に欠けた言葉から勃発することが多い。
相手の顔が見えないというSNSの特性上、実生活では穏便な性格である人でも、感情的になってしまったり、普段は些細なことを気にしないようなタイプの人がSNS上の言葉に嫌な思いをして深く落ち込んでしまったりするケースもある。
違法アプリを使用したり、危険なウイルスに感染する
アプリやソフトを使用することで、多彩なサービスを楽しめるのもインターネットの魅力だが、中には違法のものもある。例えば、音楽や漫画、映画などの著作権のあるコンテンツを取り扱うアプリだ。権利者から了承を得ずに配信している違法サイトを、利用者は違法であることを知らずに利用していることもある。
またインターネット上には、パスワードや個人情報を盗んだり、デバイスを強制初期化することによって利益を得るような危険なアプリも氾濫している。こうしたアプリの危険性を知らない場合、ダウンロードして損害を受けるリスクもある。
オンライン詐欺に遭う
オンライン詐欺とは、サイトの画面やメールを巧みに利用してお金を騙し取る行為のこと。インターネットの普及に伴って、被害に遭う人も拡大している。偽のエサで魚を釣るという意味で、フィッシング詐欺とも言われる。
ネットリテラシーが低いことで、このような詐欺の被害に遭いやすい。特に、オンライン詐欺の存在を知らない人や、情報を鵜呑みにしてしまいやすい人が引っ掛かりやすい傾向にある。
ネット依存症になる
ネット依存症とは、インターネットの世界に過剰にのめり込んでしまう状態のこと。ゲーム障害やスマホ依存症とも言われる。健康被害や学習能力・運動能力の低下なども引き起こす。また、犯罪への加担や金銭のトラブルなどに発展する例も見られる。
インターネットの利用に対して自分を律することができなくなってしまうこともネット依存症の原因の一つだ。定期的にデジタルデトックスをするなど、インターネットとの距離感を適切に保つことが必要だ。
オンラインハラスメントに遭う
オンラインハラスメントとは、オンラインでのやり取りの際に常識を逸脱した言動によって起きるハラスメントや嫌がらせのことで、リモート出勤や在宅勤務が増えた時期に注目された。SNSだけではなく、チャットやビデオ会議、メールなどでも行われることもある。
これを防ぐためには、インターネット上のマナーやモラルを正しくもつことが重要だ。
ネットリテラシーを高める必要性
ネットリテラシーが低いことでトラブルに遭うリスクが高まることを紹介したが、ネットリテラシーを高めるには次のような目的がある。
自分を守るため
インターネット上でのトラブルによって、以下のような被害にあうことが考えられる。
- 個人情報が流出する
- 詐欺に遭う
- 誹謗中傷を受ける
- SNS上の言葉でストレスを感じる、など
ネットリテラシーを高めることで、こうしたトラブルに遭いにくくなり、自分を守ることができる。
第三者を不快にさせないため
ネットリテラシーを高めることで、第三者を不快にしてしまうリスクも低減できる。インターネット上では、悪意のないひと言でも誰かを傷つけてしまうことがあるからだ。
ネットリテラシーを高めることで適切にインターネットを使い、その場に適切な言葉を使用できるようになり、誰かを不快にさせることを防ぐことにもつながる。
ネットリテラシーを高める具体的な方法

ネットリテラシーを高める方法はいくつかあるが、代表的な次の4つについて解説する。
「ネットリテラシーの基本」を守る
千葉県警察ではインターネット上の情報は正しいものばかりではないとし、トラブルに巻き込まれないための5つのポイントを「ネットリテラシーの基本」として紹介している。
- ネットは世界中の人が見ている
- ネットの情報を鵜呑みにしない
- 面と向かって言えないことはネットでも言わない
- ネットに一度出たものを全て回収することは不可能
- ネットでおこなったことは通信事業者に記録が残っている
インターネットを利用する際に、この5つのポイントに気をつけるだけでもトラブルに遭う可能性が低くなる。
トラブル事例を知る
インターネット上でのトラブルの傾向を知ることで、トラブルを回避しやすくなる。そのため、トラブル事例を知ることが重要だ。
例えば、総務省の「上手にネットと付き合おう!安心・安全なインターネット利用ガイド」には、「インターネットトラブル事例集2024年版」というページがある。このページでは「SNS」「出会い」「個人情報」「著作権」などのジャンルでさまざまなトラブルを紹介しているだけではなく、対処法なども紹介している。
トラブルへの対処法を理解することは、ネットリテラシーの向上に役立つ。
16のキーワードを知る
総務省の「ICT活用リテラシー向上プロジェクト」では、「ネットやSNSよりよくつかって未来をつくろう」というサイトを展開し、さまざまな情報を発信している。
この中でネットやSNSを安全に活用するために、以下の16のキーワードについて解説している。
| 1.ネット(=インターネット) | 2.SNS(エス・エヌ・エス) | 3.偽・誤情報 | 4.誹謗中傷・炎上 |
| 5.著作権侵害 | 6.肖像権侵害 | 7.フィルターバブル | 8.エコチェンバー |
| 9.アテンション・エコノミー | 10.デジタル足あと | 11.アルゴリズム | 12.認知バイアス |
| 13.オーバーシェアリング | 14.情報的健康 | 15.責任のリング | 16.デジタル・シティズンシップ |
例えば「情報的健康」では、食事と同じで情報もバランスよく摂取することで、情報偏食の状態にならないと紹介している。こうした知識を得ることで、ネットリテラシーは高まると考えられる。
インターネット利用のマイルールを作る
インターネットには膨大な情報があり、さまざまな情報を取得できる。また、年齢や地域が異なり、実生活では出会わないような人ともつながることができる。
しかし、そのような状態のインターネット上には、トラブルの種が無数に落ちていることも理解したい。そのため、まずは自分なりにインターネットを安全に楽しむためのルールを考えることが重要だ。
例えば、「SNSで知り合った人に会わない」「自分や家族の顔がわかる写真は投稿しない」「夜10時以降はインターネットを使わない」などが考えられる。それらを守りながらインターネットを利用することでトラブルを回避しやすい環境を整えることができる。
まとめ
小さな画面から世界中のさまざまな情報を得ることができるのは、インターネットの大きな魅力だ。その一方、嘘の情報が出回っていたり、インターネットを悪用する人たちがいることも知っておかなければいけない。自分自身がトラブルに巻き込まれるだけではなく、ときには無自覚のまま自分がトラブルの発信地となるリスクもある。
そうした性質を持つインターネットやSNSを安全に楽しむには、ネットリテラシーを高めるより他はない。そのためには、インターネットのことをよく知ること、自分なりのルールを作ることが重要だ。
これからの時代、デジタルネイティブ世代が社会に占める割合は日に日に大きくなる。自身だけでなく、子どもたちが安全にネットを利用し、インターネットの利点を最大限享受するためには、ネットの「正しい」使い方を社会全体で共有したいものだ。
参考記事
令和2年情報通信白書「第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済」|総務部
令和2年情報通信白書「第2部基本データと政策動向」|総務部
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1人1台端末時代に求められるメディア・リテラシー|中橋雄(日本大学教授)
青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標等に係る調査-ILAS(Internet Literacy Assessment indicator for Students)-|総務省
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