ジェントリフィケーションとは?特徴やメリット、問題点を事例と合わせて解説

ジェントリフィケーションとは

ジェントリフィケーション(Gentrification)とは、都市開発の一種で「低所得者層が多く住む地域を再開発などで活性化し、中・高所者を流入させる人口移動現象」のことである。この言葉は、1964年にイギリスの社会学者であるルース・グラスにより生みだされた。当時、イギリスの労働者階級が住んでいたエリアに中流階級の人々が移り住んだことで、家賃が高騰し労働者階級が立ち退きを迫られた出来事が背景となっている 。Gentrificationの”Gentry”は「上流階級」を表し、「Gentri(上流階級)fication(〜化すること)」という意味で都市が富裕層が住む空間へ変化することを指すようになった 。

ジェントリフィケーションは田舎よりも人口が多い都市部で起こることが多い。その要因としては、地域での雇用の急増、交通渋滞の悪化、政府による再開発政策などといったものがあげられる。ただ、たとえば交通渋滞が悪化したからといって必ずジェントリフィケーションが起こるわけではなく、それぞれの地域でさまざまな要因が重なって徐々に動き始める。

ジェントリフィケーションの特徴

ジェントリフィケーションの特徴は立ち退きを含むこと

ジェントリフィケーションは単なる都市開発ではなく、都市開発に伴う人口移動現象である。その特徴として、長年その地域に住んでいた住民が家賃の上昇や強制退去などにより住めなくなり、郊外やほかの地域に移り住む「立ち退き」が含まれている。ジェントリフィケーションに伴う立ち退きには、主に3つの種類がある。

直接的な立ち退き

住宅費の上昇により、住民がそれまでの家に住み続けられなくなること。家賃の値上げ、契約更新の拒否、立ち退き要求、あるいは再開発を待つ投資家による意図的な住環境の悪化などが原因となる。新たな開発や高所得者層の流入と同時に起こると、ジェントリフィケーションによる立ち退きだと認識される。

間接的な立ち退き

低所得層の住民が出ていった後に低所得者を入居させないようにすること。ジェントリフィケーションが進む地域では、家賃や住宅の販売価格が上がるため、低所得層の新たな入居が難しい。住宅補助券利用者の入居禁止などの差別的な政策や、子どものいない世帯向けの住宅を減らすなど、直接拒否するわけではない間接的なルールにより低所得層を立ち退きさせる。

文化的立ち退き

これは住民の階層が変化することで新しい住民向けの店やサービスが増えることでもともと住んでいた住民が疎外感を感じること。物理的には同じ場所に住み続けていたとしても、よそ者になったような感覚になり地域を出て行ってしまう住民もいる。

ジェントリフィケーションの4つのステージ

ジェントリフィケーションは、ある日突然まちが一変するわけではなく、次の4つのステージで構成されている。

ステージ1:古い建物の修復
まずは古くなった住宅を改修し地域としての魅力を取り戻す。住宅だけでなく古い工場や倉庫がアートスタジオやカフェに転用されることもある。この段階で新たな店やサービスが増え文化的な変化も遂げる。

●ステージ2:土地や物件の価値上昇
住宅の復旧に伴って、不動産の価格が上昇する。改修された住宅や商業施設は高い価格で取引され、周辺地域全体の地価も上がる。

ステージ3:富裕層の移住
中流階級や富裕層がその地域に流入し地域の社会構造が変化する。新しいビジネスやサービスが地域経済を活性化させる一方で、元々住んでいた労働者階級(低所得者)との対立を生むこともある。

ステージ4:低所得者層の立ち退き
元々住んでいた労働者階級が家賃の上昇などにより経済的に追い詰められ、立ち退きを余儀なくされる。

このようにステージを一つひとつ踏みながらジェントリフィケーションは進められていく。

ジェントリフィケーションによる利点

ジェントリフィケーションがもたらすもの

ジェントリフィケーションでは古い建物の修復やインフラ整備などさまざまな開発を行うため、以下のような利点が生まれる。

経済成長 

一番のメリットは経済成長につながることだ。古くなった住宅や閉業してしまったサービスが再開発により活気を取り戻すことで、新しい雇用の機会が生まれる。雇用が生み出され消費者がお金を使うサイクルが繰り返されることで、経済成長につながるのだ。

また、地価が上昇し地方政府の税収が増加することで、市政に入ってきた収入をインフラの改善などに利用できるのだ。たとえば、道路、公共交通機関、上下水道などの基本的なインフラが改善されたり、公園や図書館などの公共施設の整備が進められたりする。すると、地域住民の生活の質を向上させられ、元からの住民に対してもメリットをもたらす可能性があるのだ。

犯罪率の低下

人々や企業がコミュニティや公共の安全のためにより多くの投資をするなどして犯罪率が低下することがある。2017年に発表されたMITスローン経営大学院の発表によると、 1995年にマサチューセッツ州ケンブリッジのジェントリフィケーションにて、レントコントロールと呼ばれる借主の保護を目的として賃料上昇率に上限を設ける制度が廃止された後、犯罪が16%減少したデータがある。街自体が富裕層化したことで、治安が向上したのだ。

ただし、犯罪率の低下が必ず起こるわけではなく、場合によっては、犯罪が別の地域で増加する可能性があるともいわれている。

ジェントリフィケーションの問題点

ジェントリフィケーションは経済成長や犯罪率の低下につながる一方で、いくつかの問題点も挙げられる。

立ち退き

ジェントリフィケーションの特徴として立ち退きが含まれると述べたが、この立ち退きが一番の問題となっている。低所得者層の多い地域で新規店舗やサービス、ビルなどが増加すると、その分まちが活性化するため良い効果のように見える。

一方で、再開発の影響で家賃や食費などの生活費が急激に上がり、元々住んでいた住民や事業主が経済的に苦しくなり地域から追い出されてしまうのだ。立ち退きによりほかの地域に移住する人が多いものの、移住の選択肢がなくホームレスになってしまう場合もある。そのため、ジェントリフィケーションは中・高所得者を優遇しているともいわれている。

コミュニティの消滅

ジェントリフィケーションにより元々あったコミュニティが消滅してしまうリスクもある。元々住んでいた多くの住民がほかの地域に移動することで、元々地域に合った結束力やつながりが減ってしまうからだ。新しい住民は地域の歴史や文化に馴染みがないため、既存のコミュニティになかなか溶け込めない。すると活気あったコミュニティが薄れてしまうのだ。人々が集うサードプレイスが地域内から失われてしまうことで、コミュニティが脆くなってしまうリスクが高まる。

反対に元々住んでいた住民が馴染めないケースもある。ジェントリフィケーションではそれまで住人に親しまれてきた施設が、チェーン店や高級店に取って代わられ、地域独自の文化や特色が失われることがある。開発により新しい住民向けの街となってしまうため、元々あったコミュニティは存続しづらくなってしまう。

ジェントリフィケーションの事例|サンフランシスコ(アメリカ)

ジェントリフィケーションの事例:サンフランシスコ

ここでは事例として、2013年からの5年間、アメリカ国内でもっともジェントリフィケーションが進んだ都市といわれるサンフランシスコの事例を紹介する。アメリカでは湾岸の都市を中心にジェントリフィケーションが活発化しており、国勢調査をもとにしたレポートによると、2000年以降に行われたジェントリフィケーションは1990年代の2倍以上となっている。

カリフォルニア州に位置するサンフランシスコでは、急成長したIT業界の影響により1990年代後半から2000年代にかけて、ジェントリフィケーションが起きた。サンフランシスコ南部に位置するシリコンバレー(IT企業が集中する地域)からサンフランシスコ市内への移住者が増加し、カリフォルニア大学の研究センターによるレポートによると、2013〜2017年の5年間では高所得層の転入が低所得層の約7倍多かった。

開発による家賃の上昇についてまとめたカリフォルニア大学のレポートによると、2000年から15年間で15〜30%上昇した地域と30%以上増加した地域を合わせると8割を超えた。また、カリフォルニア州では「エリス法」と呼ばれる、家主が所有する物件を賃貸市場から排除し、住民を合法的に立ち退かせることを認める法律があり、これにより多くの低所得者が立ち退きを余儀なくされた。さらに、テナントが空いた場合には無制限の家賃の値上げが許可される「家賃条例」もあったため、低所得者が入居できる場所がどんどんなくなっていってしまったのだ。
このようにサンフランシスコではIT業界の発展による家賃の急上昇やエリス法に基づいた立ち退きにより短期間で大きな人口流動が起きた。

ジェントリフィケーションの問題と向き合うためには

ジェントリフィケーションは、開発によって住民の暮らしが便利で豊かなものになったり街自体の治安が向上するといった利点がある一方で、元々住んでいる住民が立ち退きを余儀なくされ、コミュニティが崩壊する点などが問題視されている。

経済の発展と公正のバランスを考慮するべきという意見もあり、家賃の上昇を抑制する政策や低所得者向けの住宅を増やすプログラムが導入されているケースもある。また、地元住民の意見を反映させながら開発を進める動きもある。

このようにジェントリフィケーションでは、開発によるネガティブな影響を最小限に抑え、発展と既存の店やコミュニティの維持を両立させることが重要視される。

まとめ

ジェントリフィケーションは経済成長につながる一方で、中・高所得者層と低所得者層の社会的な格差を広げる負の面もある。ただし、都市発展をしていくうえではジェントリフィケーションを避けては通れないだろう。進めていく際は、ジェントリフィケーションを問題として捉えるのではなくよりよい街をつくるための機会として捉え、開発と元々地域が持つ特色のバランスを考えていく必要があるだろう。

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