シェアリングエコノミーとは
シェアリングエコノミーとは、インターネットを介して個人や企業が使っていないモノ・空間・スキルなどを取引するサービスのこと。従来のビジネスは、企業が個人にサービスを提供する B to Cサービスが主流であったが、シェアリングエコノミーは、主に個人間で取引する C to Cサービスの上に成り立つ。企業は、サービスを直接提供するのではなく、サービスが交換される場を提供するプラットフォーマーとしての役割を担う。
シェアリングエコノミーの広がりによって、遊休資産や不要物が有効活用されるため、廃棄物削減による環境負担の軽減だけでなく、経済の発展につながる可能性も秘めている。
シェアリングエコノミーが普及した背景
シェアリングエコノミーのはじまりは、2008年に米国シリコンバレーで誕生したAirbnbとされており、その後、急速に発展し世界中であらゆるサービスが生まれている。
シェアリングエコノミーがこれほどまでに普及したことは、インターネットの普及に加えて、消費者の消費行動の変化が影響している。Z世代やミレニアル世代などの若い世代を中心に、モノ消費からコト消費へと消費スタイルが変わってきており、「所有」よりも「共有」に価値を感じる消費者が増えているのである。
シェアリングエコノミーの市場規模
シェアリングエコノミーの市場規模は拡大を続けており、今後も継続的に拡大することが見込まれている。シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所の共同調査によると、日本国内におけるシェアリングエコノミーの市場規模は、2022年度は過去最大規模となる2兆6,158億円となり、2032年度には最大15兆1,165億円にまで拡大することが分かった。
今後も市場規模が大きく伸びていくことが予想され、日本の経済発展に貢献することが期待されている。
シェアリングエコノミーの5つの分類
![](https://mannen.jp/patchtheworld/wp-content/uploads/2024/02/image-4-1024x532.jpg)
シェアリングエコノミーは、主に以下の5つのカテゴリーに分類することができる。
1.空間
空間のシェアとは、所有する土地や空き部屋を旅行者などに貸し出すこと。普段利用していない空き家の活用などによって、地域課題の解決につなげることもできる。
(例)民泊、駐車場、貸会議室、コワーキングスペースなど
2.モノ
モノのシェアは、フリマアプリを通じた不用品の売り買いや衣類のサブスクサービスなどによって、あらゆるモノをシェアすること。これにより、過剰にモノを生産することを抑制できるため、環境負荷の軽減につながることが期待される。
(例)フリマアプリ、レンタルクローゼットなど
3.スキル
スキルのシェアは、空いた時間を利用して家事や育児、デザインやライティングなどの仕事をしたい人と、依頼したい人をインターネットを介してマッチングすること。働き手は、限られた時間を利用して稼ぐことができ、依頼人は、単発や不定期で発生する業務に対応できる。
(例)家事代行、クラウドソーシング、スキマバイトなど
4.移動
移動のシェアは、車の乗り合いサービスや個人所有の自動車や自転車を共有すること。サイクルシェアは、観光地をはじめとする多くの都市で導入が始まっており、今後もサービスの拡大が見込まれている。一方、ライドシェアは、日本においては法整備の壁があり、サービスが実施できていなのが現状だ。
(例)カーシェアリング、ライドシェアリング、サイクルシェアなど
5.お金
お金のシェアは、インターネットを介してお金の貸し手と借り手をマッチングすること。クラウドファンディングとして知られており、寄付型、購入型、貸付型(ソーシャルレンディング)、株式型の5つに分類できる。資金調達の手段が民主化し多様化することで、新しい事業やサービスに対しての資金面でのサポートがしやすい社会になってきている。
(例)購入型クラウドファンディング、ソーシャルレンディングなど
シェアリングサービスの事例
![](https://mannen.jp/patchtheworld/wp-content/uploads/2024/03/karsten-winegeart-nqC4EW-LS_U-unsplash-1024x684.jpg)
国内外でさまざまな関連サービスが普及しており、人々の生活の利便性を高めている。以下、シェアリングエコノミーに関するサービス事例を5つ紹介する。
空間のシェア|Airbnb(エアビーアンドビー)
Airbnbは、保有する住宅や空き部屋をウェブ上で貸し借りできるプラットフォームだ。貸し手は、遊休資産を活用することで、収益を得ることができ、旅行者は世界各地でユニークな宿泊体験ができる。2007年にサービスをリリースし、現在世界220ヶ国以上、約100,000都市で宿が提供され、これまで14億人以上のゲストが利用するなど、世界最大の民泊サービスとなっている。
モノのシェア|メルカリ
メルカリは、アプリ上でブランド品、子ども用品、家電、衣類などのあらゆる不用品の売り買いができる日本最大のフリマサービスだ。2013年にサービスを開始し、累計出品数は30億品を突破、2023年時点の月間利用者数は2,200万人以上で、市場規模は2兆円を超えるとされている。
スキルのシェア|CrowdWorks(クラウドワークス)
クラウドワークスは、データ入力、デザイン業務、HP制作などのスキルを持つワーカーと働き手を求めている企業などをマッチングするクラウドソーシングプラットフォームである。時間や場所に縛られない働き方を提供することで、フリーランスや専業主婦などの在宅ワークや副業をサポートするインフラのような存在となっている。登録者数は累計600万人を突破し、クライアント企業数は累計95万社を超えた。
移動のシェア|Uber(ウーバー)
Uberは、スマートフォンやGPSなどのICTを利用し、移動したい人とドライバーをマッチングする配車サービスだ。ユーザーの安全を確保するため、ドライバーは登録の際に審査を受け、利用者は運転者の顔写真や氏名などを確認することができる。また、相互評価システムやGPSによる追跡管理によって安全対策を徹底することで、ライドシェアサービスの普及に努めている。現在では、世界70ヶ国以上でサービスが展開され、月間のユーザー数は9,300万人を超えている。
お金のシェア|CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
CAMPFIREは、新たな商品やサービス、事業などに関する個別のプロジェクトに対して、広く一般から資金を募るための購入型クラウドファンディングプラットフォームである。支援者はプロジェクトに対して資金を提供し、支援者はそのリターンとしてモノやサービスを得るという仕組みだ。これまでに、飲食店の開業や書籍の出版、舞台、スポーツ、美容、音楽など幅広いジャンルに関する86,000件以上のプロジェクトが掲載され、支援数は累計940万件、支援資金総額は830億円に達している。
シェアリングエコノミーのメリットと課題
![](https://mannen.jp/patchtheworld/wp-content/uploads/2024/03/pony-1BH4_lb2-M8-unsplash-1024x683.jpg)
シェアリングエコノミーの活用は、提供者と利用者の双方にメリットをもたらすため、世界中で関連サービスが拡大しているが、利用の際には注意すべき点もある。
メリット
遊休資産を有効活用することで収益源となる
普段使っていないスペースやモノを資産として活用することで、新たな収入源のひとつになる。また、既に持っているものを利用するため、初期費用をかけずに小さくビジネスを始めることができる。
所有せずに比較的安価に利用できる
モノを所有せずに必要な時だけ利用することができる。サービスは個人の間で行われることが多く、値段設定も比較的リーズナブルなものが多い。
モノの生産を抑え環境負荷を軽減する
すでにあるモノを活用することで、新たなモノの生産を抑制できるため、製造にかかる環境負荷を軽減することができる。
新しい需要に応えることで経済が発展する
個人がもつモノやスキルなどの資産の活用は、新たな需要の発掘につながる可能性もあるため、経済発展にも寄与すると考えられている。
このように、シェアリングエコノミーの普及は、サービスの提供者と利用者、また地球環境や社会にとっても多くの利点をもたらす。
課題
トラブルの際の責任の所在が曖昧
シェアリングエコノミーの最大の課題は、安全性や補償に関する点である。個人間での取り引きであるため信頼性の担保が難しく、万が一トラブルが発生した場合に、補償の適応範囲が不明確なことも多い。
サービスの提供者であるプラットフォーマー側で、安全性を確保するための対策を強化していくことに加えて、ユーザーも利用前に相手の情報や評価などを確認することが大切だ。また、消費者庁が発行している「シェアリングエコノミー活用ハンドブック」に目を通すことも有効である。
法整備が追いついていない
シェアリングエコノミーに関連するサービスが次々に誕生する一方、新しいビジネスモデルであるシェアリングエコノミーに関しての法整備が追い付いていないのが現状だ。例えば、日本では「自家用自動車有償貸渡事業」という制度によって自家用車を有償で貸すことができないため、Uberのようなシェアライドサービスの普及を阻んでいる。こういった状況に対して、一般社団法人シェアリングエコノミー協会では、「住宅宿泊事業法の見直しに向けた提言」を発表するなどシェアリングエコノミーに関する法整備に向けて活動している。
シェアリングエコノミーが社会により浸透するためには、安全性の確保や法整備によって利用者とサービス提供者の双方が安心してサービスを使えるように環境を整えていく必要がありそうだ。
今後の展望
新たな市場であるシェアリングエコノミーは、企業だけでなく、政府や自治体も熱い視線を注いでいる。市民への認知も拡大しており、PwC Japanグループが全国の一般消費者を対象に実施した「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査」によると、シェアリングエコノミーサービスの認知度は約5割で、サービスを実際に利用したことがある人の割合は20%を超えた。
シェアリングエコノミーが更に拡大し社会に定着するためには、安全性の確保や補償の明確化、法整備に加えて、消費者への認知拡大やより多くの企業が副業を許可することなども必要となるだろう。
【参考記事】
シェアリングエコノミー利用ガイドブック|消費者庁
シェアリングエコノミー活用ハンドブック|一般社団法人シェアリングエコノミー協会
シェアリングエコノミー市場調査2022年版|一般社団法人シェアリングエコノミー協会
関連記事
新着記事