代替肉とは?注目される背景や国内外の動き、課題について解説

代替肉とは 

代替肉とは、おもに大豆を中心とした植物由来のたんぱく質を使った肉の代替になる食材である。大豆のほかにもエンドウマメ、ソラマメを使用した代替肉があるが、大豆がメインであることから「大豆ミート」と呼ばれることが多い。ほかにも、植物由来である代替肉の総称として「プラントベースミート」「オルタナティブミート」「フェイクミート」などと呼ばれる場合もある。

代替肉とともに新しい形の食肉としてあげられるものに「培養肉」がある。培養肉とは、ウシやトリなどの動物細胞を培養して作る食肉のことである。代替肉は植物性の原材料を使うことから、味や食感を肉に近づけてはいるものの、繊維質の食感が目立ち、豆の香りが残るといった植物性ならではの特徴がある。一方の培養肉は、肉の細胞から作られているため、栄養なども肉そのものと同様だ。代替肉はスーパーやレストランのメニューなどで取り入れられているものの、培養肉は研究途中の段階であり、今後の技術発展が期待される。

代替肉を生活に取り入れることには、いくつかのメリットがある。まず、植物性たんぱく質はカロリーや脂質が少ないことから、動脈硬化の抑制や肥満改善などが期待できる健康志向の食品であることだ。さらに、動物の生命を犠牲にせずに、環境にも配慮したサステナブル食材でもある。

代替肉が注目される背景

代替肉が注目される背景

代替肉が注目される背景にはいくつかの問題がある。ここでは、以下の3つの問題を取り上げ、代替肉が求められるわけを探っていく。

人口増加による食料不足 

1つ目は、人口増加に伴った世界的な食料不足が挙げられる。国連の統計によると、世界の人口は2000年から2020年の20年間で約15億人増加し、2050年には約97億人に達するとされている。急速に世界人口が増加しているが、食肉需要の増加率は人口の増加率のさらに上をいく。世界の食肉需要は、2000年〜2030 年の間に1.7倍となり、2050年には1.2倍と予想されているため、50年間で約2倍に拡大するとされているのだ。

また、現状のスタイルのまま農業や畜産業を進めれば、早ければ2025年〜2030年前後にタンパク質需要が供給量を超えてしまうとの予測もある。しかし、畜産に必要な穀物供給量が足りないことや、すでに耕作不適地を除く土地の 90%が農地として使用済みであることから、従来の畜産方法では、食肉の需要に追いつけないのだ。そのため、食肉需要への対応策として、代替肉が求められている。

畜産が引き起こす環境負荷 

2つ目は、食肉生産が生み出す環境負荷の問題である。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスは、実は畜産においても大量に排出されている。たとえば、豚肉1kgの供給に対し、餌の生産、飼育、食肉処理、流通などの過程で約11kg の二酸化炭素が排出される。1世帯あたり二酸化炭素排出量は、年間で約4kgであることを考えると、たった1kgの肉を食べるまでの工程で相当な二酸化炭素量を使っていることが分かる。

また、畜産は二酸化炭素だけでなく水も大量に使用している。牛肉1kgの生産にあたっては、餌の生産過程も含めて20.7t もの水が必要とされており、500mlのペットボトル40,000本にあたる。

代替肉を生産する米国のインポッシブルミート社によると、代替肉の「インポッシブル・ビーフ」は、従来の肉に比べて土地の使用量が96%、水が87%、温室効果ガス排出量が89%削減できるとしている。

動物福祉への取り組み  

3つ目は、近年対応が進むアニマルウェルフェアへの取り組みだ。従来の畜産では、食肉をなるべく安く販売するため、生産効率の最適化が求められていた。野生では食べない穀物や成長率の高い餌を与えたり、狭い檻やケージで飼育したりなど、動物が苦痛に感じる育て方を採用する畜産業者が大半だった。

しかし、近頃は「人が動物を利用するのは認めつつ、動物への苦痛は最小限にさせる」という動物福祉の考えが世界的に広まっており、畜産における生産効率の向上は、動物福祉に反すると批判されているのだ。現在、動物衛生の向上を目的とする「国際獣疫事務局(OIE)」を中心に、動物福祉規約の整備が行われている。そのため、従来の畜産方法を見直す動きが高まっているのだ。

国内外の市場の動き

代替肉市場

ここでは、代替肉の関連市場が成長しているアメリカと、日本の代替肉市場について掘り下げていく。

アメリカ 

アメリカでは、既に多くの企業で多様な商品が開発されており、代替肉市場が成長期にある。宗教や思想上の理由から肉を食べない人は、国内に約800万人存在すると言われており、多くのスーパーやレストランにてヴィーガンのメニューも多数展開されている。また、最近ではヴィーガンではないものの、食肉の摂取量を控える「フレキシタリアン」も注目されている。特に、環境負荷や動物福祉などの問題に向き合う若年層を中心に代替肉を食べる傾向がある。

代替肉の需要が増えていることから、大手食肉企業も代替肉市場へ足を踏み入れ始めている。2016年に大手食肉企業のタイソンフーズ社は、代替肉生産企業ビヨンド・ミート社に投資を行い、2019年にはタイソンフーズ社独自の植物由来商品ブランドを立ち上げた。大手ハンバーガーチェーンのバーガーキング社では、2019年に代替肉を使用したバーガーを試験販売したところ、予想以上の反響を呼び、レギュラーメニューとなった。このように、さまざまな企業や店で代替肉が扱われるようになり、アメリカでは身近な存在となりつつある。

日本  

欧米諸国の代替肉ブームを受け、日本でも代替肉の認知度は徐々に上がっている。ただ、スーパーやコンビニ、大手ハンバーガーチェーンなどで代替肉の販売が始まっているものの、欧米と比較すると商品数は少ない。欧米ではヴィーガン専門のレストランもよく目にするが、日本ではまだあまり知られていないのが現状だ。

日本で代替肉が普及しないおもな理由としては、日本人の食生活にある。「日本植物蛋白食品協会」によると、アメリカに比べると日本の肉消費量は約半分となっている。肉を過剰消費しているという考えを持ちにくいため、肉を控えて代替肉を選択しようと考える人が少ないのだ。また、日本は代替肉の主な材料である大豆の消費量が多い。豆腐や納豆などを食事に取り入れているため、あえて価格の高い代替肉を食べることで大豆を摂取する必要がないということもある。日本で代替肉をより普及させるためには、代替肉を選択することによる環境面や健康面でのメリットを消費者に伝えることで、代替肉を食べるための動機を生み出すとともに、消費者の日常に浸透しやすいような商品を作る必要があるだろう。

代替肉の課題 

代替肉は、人口増加や環境負荷などの社会問題を解決するためのカギとして考えられているが、いくつかの健康に対する課題が散見される。

まず、一般的に動物性食品は、たんぱく質を構成する必須アミノ酸がバランスよく含まれているが、植物性食品は必須アミノ酸の一部が不足している。植物性食品はビタミンB12やカルシウム、鉄などの体を丈夫にする栄養素が足りないため、ほかの食品で補う必要があるのだ。さらに、食感や風味などを本物の肉に近づけるため、多くの添加物が加えられており、健康志向とは相反する事実もある。

植物性の代替肉はカロリーや脂質が少なく、動脈硬化の抑制や肥満改善などが期待できるなどのメリットがある一方で、上記で述べたような課題があることも認識する必要がある。

まとめ 

代替肉は食料不足や環境負荷、動物福祉などの面から注目されており、今後さらにマーケットは拡大していくと予想される。欧米では代替肉が一般に普及しているものの、日本での認知は若い世代や一部の健康志向の人々に偏っている。

代替肉の摂取が健康に限らず、温室効果ガスの削減や水消費の抑制にも寄与するという環境面での利点にも着目することで、需要は高まっていくかもしれない。たとえば、完全なヴィーガンやベジタリアンではなくても週1回のみ代替肉に置き換えるなどのアクションを取ることで、誰もが簡単に気候変動対策に貢献することもできるのだ。

代替肉には栄養素不足や添加物過多などの健康に対する課題もあることから、食生活においては動物性食品とのバランスをとっていくことが必要という意見もあるが、個々人が無理のない範囲で生活に取り入れてみてはいかがだろうか。

【参考記事】

代替肉市場について| 財務省
代替肉の類型|農林水産省
代替肉と培養肉に関する調査研究|日経研月報
代替肉ってナンだ?|仁愛大学人間生活学部健康栄養学科 尼子 克己
米国における食肉代替食品市場の現状|独立行政法人 農畜産業振興機構
World Population Prospects 2022|United Nations
二酸化炭素●kg削減ってどれくらい??|みんな電力
IMPOSSIBLE FOODS ACCELERATES INTERNATIONAL EXPANSION WITH LAUNCHES IN AUSTRALIA AND NEW ZEALAND|Impossible

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