コンポストとは?使用するメリットや使用上のトラブル、生ゴミが堆肥に変わる仕組みを解説

コンポストとは

コンポスト(Compost)とは、野菜や魚などの生ゴミ、枯れ葉などを土の中に埋め微生物の力で発酵・分解させてできる堆肥のこと。また、堆肥を作るための容器のことをコンポストということもある。

落葉や牛フン・鶏フン、泥などを使い、自然と微生物の力だけで作られる堆肥は豊富な栄養を蓄えているだけでなく、保水性や通気性にも優れていることから、農畜産業においてよい土壌を作るために必要不可欠な存在でもある。廃棄物を処理しながら資源を循環させることができるコンポストは、日本でも重要な知恵として古くから伝承されているものだが、近年では、食品ロスや環境問題への対策としても注目され、飲食店や家庭でも取り入れられている。

注目されている背景

コンポストそのものは、新しい考え方ではなく昔から日本でも行われていた。農作や稲作が盛んだった頃、「粗末にしない」という自然と共に生きる文化から、生ゴミや動物のフンを材料に堆肥を作り農作に利用して暮らしていたのである。ところが、時代が進むにつれて田畑が減り、建築物や人口が増えたことにより、コンポストをする機会は次第に減少していった。

しかし近年、食料の普及や飲食店の増加によって生ゴミの量が急増し、日本では家庭から排出されるゴミの約4割は生ゴミが占めている。生ゴミの焼却処理による温室効果ガス排出量の増加は地球温暖化など気候変動の原因となっているのと同時に、水分を多く含む生ゴミの焼却にはより多くのエネルギーが必要となるため、処理費用が自治体の財政を圧迫している。

そこで、地球温暖化対策や処理費用の負担を軽減する狙いから、多くの自治体で市民がコンポストを購入する際に助成金を出すなど、コンポストの利用を促すために対策を講じている。

このような行政の後押しもあり、家庭でもすぐにできるコンポストが再び注目を集めているのである。

コンポストを行うメリット

コンポスト_バケツ

コンポストは地球環境にも人の心身の健康にもメリットをもたらす。以下、コンポストのメリットを具体的に解説していく。

生ゴミの削減につながる

日本では、毎日1人あたりおよそ1kgのゴミを家庭から出しており、ゴミ処分にかかる税金は年間で1人14,000円を超えている。コンポストによって、家庭ゴミの約4割を占める生ゴミが堆肥に変わることで、家庭から出る廃棄物の総量を減らすことができる。これにより、環境負荷を軽減できるだけでなく、自治体でもゴミの焼却費用を抑えることができ、税金の有効活用にもつながる。

栄養豊富な堆肥をつくることができる

それぞれに高い栄養素が含まれている野菜や果物、魚の小骨などが凝縮された堆肥は、非常に栄養が豊富である。栄養バランスが整った堆肥・肥料を与えることで、農作物の質はよりよくなり、私たちもそれらの農作物から豊富な栄養を享受することができる。

二酸化炭素の排出量を削減できる

水分が多いほど焼却に使うエネルギーが増えるため、水分が90%を占める生ゴミの焼却に際しては、多くの二酸化炭素が排出される。生ゴミを削減することができれば、焼却するゴミの量や水分量が減り、処分時に排出される二酸化炭素を削減することが可能となる。

循環を感じることができる

自然の循環を体感できることもコンポストの魅力である。生ゴミが堆肥となり、その堆肥で育った食料を食べ、出された生ゴミがまた堆肥に変わる。この資源の循環を、土や堆肥に触れながら肌で感じ、「食」のありがたみを実感する機会となる。また、子どもたちと一緒に取り組むことで、「食べ物や植物はどうやって育っているのか」と食育や自然の力を学ぶきっかけにもなる。

使用上のトラブルと対処法

コンポストをする上では、環境にも人の健康にもメリットがある一方、使用の際にはトラブルも起こりうる。下記、発生しうるトラブルと原因、その対処法を解説する。

悪臭がする

生ゴミや虫、分解された土などの全体の水分量が多くなると、悪臭の原因となることがある。

悪臭を感じ始めたら、生ゴミの量を減らし、定期的にかき混ぜて酸素を取り込むことで水分を飛ばすとよい。また、小さく刻んだ生ゴミを1日300〜400gずつ投入することや、脱臭フィルターのあるコンポスターを選ぶことも悪臭対策として効果的だ。

虫が湧く

虫が湧く原因は、生ゴミや水分量が多いことや、蓋が開いているコンポスターにコバエなどが入り込み卵を産んでしまうことが考えられる。もし虫が発生した場合は、日差しが強いところで堆肥を干し、容器内の温度を40度以上まで上げることでコバエなどを退治することができる。また、しっかり蓋を閉め、ハエ取り捕獲器を近辺に置くことも有効だ。

カビが発生する

コンポスト内の水分量が多いとカビが発生する原因にもなる。万が一、青カビや黒カビなどを発見した場合は取り除き、それでも発生する場合は一から作り直す必要がある。
ただし、白カビは分解が成功している証拠なので処分せずに、適宜かき混ぜて水分を抜いていくのがよい。

【注意】処理できない食品もある

微生物による分解が難しい生ゴミなどは、コンポストで処理できないこともある。例えば、種やカボチャなどの皮、肉や魚の太い骨、卵の殻など、硬いものは適さない。他にも、玉ねぎの皮やすでに腐っている生ゴミ、堆肥の塩分濃度を高めてしまう塩分や脂が多いものも、コンポストには向いていない。

コンポストの使い方とメカニズム

コンポスト_容器

それでは、実際にコンポストの基本的な使い方と堆肥になるメカニズムを見ていこう。

Step 1 畑や庭など、土の上にコンポストを設置する
Step 2 生ゴミや落ち葉、雑草などを中に入れる
Step 3 土や、燻炭を入れて混ぜる
Step 4 発酵させ、定期的にかき混ぜる
Step 5 2~4を繰り返す
Step 6 1〜3ヶ月熟成させ、堆肥の完成

生ゴミが堆肥になるメカニズムは、生態系のしくみと同じ理屈だ。土には常に多くの微生物が存在しているため、そこに混ぜられた生ゴミを微生物たちが食べて分解することで、生ゴミは土に還り堆肥となる。微生物によって生ゴミは、最終的には水と二酸化炭素に分解されるというメカニズムだ。

コンポストの種類

コンポスト_堆肥に

コンポストは様々な種類があり、容器によって特徴や投入する材料の違いがある。そのため、いざコンポストを始めようと意気込んだ時に、どのタイプを使用すればいいか迷う方も多いはずだ。以下、それぞれの特徴を解説する。

設置型コンポスト

定番の形でもある設置型コンポストは、庭や畑などの土を掘り、その上にコンポストを置いて使用する。容器が大きいため堆肥を多く作ることが可能で、主に生ゴミや落ち葉、雑草、土を入れる。ある程度溜まったら、週に1回程度かき混ぜ、2〜3ヶ月熟成させると堆肥が完成する。

回転式コンポスト

回転式コンポストは、容器を回してかき混ぜるコンポストだ。
自分の手でかき混ぜる必要がない手軽さがポイントで、2、3日に1回容器を回転させれば、2ヶ月半〜6ヶ月ほどで熟成する。材料は設置型と同様に生ゴミや落ち葉などで、「ぼかし」という油かすや米かすに土やもみ殻を混ぜて発酵させた肥料を入れるタイプもある。

密閉型コンポスト

密閉型コンポストは、土は入れずに生ゴミとぼかしを入れて発酵させる。発酵させた生ゴミから出る発酵液がある程度溜まったら2週間ほどおき、その後畑やプランターで発酵液と土を混ぜて分解させる。
室内でコンポストができる反面、臭いがこもりやすくなるため、しっかりと密封して発酵液を毎日取り出すことがポイントだ。

段ボールコンポスト

段ボールコンポストは、ある程度の大きさと強度を確保し、段ボールの下にスノコを設置するなどして通気性を保ち、そこに、もみ殻、ぼかし、生ゴミなどを入れてよく混ぜ、3週間ほど熟成すれば堆肥が完成する。段ボールは2〜6週間ごとに交換することがおすすめだ。

バッグ型コンポスト

LFCコンポストが有名なバッグ型コンポストは、おしゃれで手軽なサイズ感であるため、初心者でもベランダなどで気軽に始めることができる。生ゴミの分解を速めたり臭いの発生を抑える独自の配合基材のセットや、水や虫が入らないようにジッパーがついているなど、誰でも簡単に使用できるようにさまざまな工夫が施されている。3〜4人家族の2ヶ月分ほどの生ゴミを入れることができ、熟成には2〜3週間程度かかる。

電動生ごみ処理機

電動生ごみ処理機は、温風により生ゴミを乾燥させるタイプや、原料を自動で混ぜるタイプがあり、室内で数時間ほどで生ゴミを処理し堆肥化できる。購入費用や電気代がかかってしまうことや、型によっては音が気になることがデメリットではあるが、多少費用がかかっても、手軽さを優先したい人には向いている。

ミミズコンポスト

ミミズコンポストは、ミミズのはたらきによって生ゴミを分解するタイプだ。生ゴミを食べたミミズのフンは植物にとって栄養価が高く、高品質な堆肥を作ることが可能である。また、容器の下に溜まる発酵液を薄めれば肥料としても利用できる。ただし、ミミズはネギ類や柑橘類、油分や塩分が濃い物を嫌うので注意が必要だ。

堆肥の使い道

コンポスト_野菜クズ2

完成した堆肥がたくさん余って使い道に悩む人もいるのではないだろうか。最後は、堆肥の使い道を紹介する。

家庭菜園

コンポストでできた堆肥は、家庭菜園で活用することができる。これにより、生ゴミの廃棄量が減らせるだけでなく、堆肥を購入する必要がなくなるため、経済的にも環境的にも利点をもたらす。
また、生ゴミや草からできた堆肥を使い野菜などを育てることで、自宅の中で小さな循環を生むことができる。

堆肥の回収拠点

自宅で堆肥を必要としない場合や、堆肥を作りすぎて余らせてしまった場合は、堆肥を回収してくれる自治体を活用する方法もある。
LFCコンポストを提供しているローカルフードサイクリング株式会社は、定期的に堆肥の回収や相談会、回収キャンペーンを行っている。近くに回収拠点がある場合は、そこへ堆肥を持ち込むこともよいだろう。

まとめ

本来なら捨てられてしまう生ゴミが堆肥として生まれ変わり、農作物や植物の栽培で活用されることは、生ゴミの廃棄量と二酸化炭素の排出量の削減へとつながることから、環境問題への対策として大きな注目を浴びている。
また、生ゴミで作られた堆肥は無農薬で栄養価が高く、質の良い食物を作ることができ、自然界の生態系や食への感謝の気持ちが芽生えるなど、人の心身の健康にもいい影響を与える。
バッグ型や段ボールの容器で手軽にコンポストを始めることができるので、わたしたちにできる小さな循環活動として、始めてみるのもいいのかもしれない。

参考記事】
コンポストとは|LFCコンポスト

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