レジリエンスとは?
レジリエンス(resilience)とは、「回復力」「復元力」「弾力」などを意味する言葉。物理学で主に「跳ね返す力」という意味で使われていたが、近年は様々な分野で使われている。なお、反対語はvulnerability(脆弱性)が使われることが一般的だ。
例えば、心理学では「精神的回復力」または耐える力を意味する「強靭性」、外的環境に対する「対応力」「適応力」といった意味で使われる。ストレス社会の中で、困難な状況や危機を乗り越えて回復する力、もしくは適応する力という意味合いだ。不確定要素の多い現代において必要な「強靭性」「回復力」「適応力」を表す言葉として用いられる。
様々な分野でのレジリエンス
レジリエンスは現代を生き抜く上で重要なキーワードとなっており、様々な分野で使われている。この項目では、以下の6つのレジリエンスについて解説する。
個人のレジリエンス
精神的または心理的はもちろん、肉体的にストレスを受けた際の耐久力や適応力、回復力などを指す。
組織のレジリエンス
企業や組織において、社会や市場環境の変化によってもたらされるリスクや困難を乗り越え、適応する能力を指す。
災害のレジリエンス
災害による被害や損害から復興・復活する力を指す。災害に耐えられるような強さや備えといった意味も含んでいる。
環境のレジリエンス
破壊された環境が復活する力を意味する。主に、気候変動による環境の変化からの復元力や適応能力を指す「気候変動レジリエンス」、失われた自然生態系が元に戻る復元力や適応能力を指す「生態学的レジリエンス」の2つがある。
サイバーレジリエンス
サイバー攻撃に対する耐久力や被害を最小限に収める能力、サイバー攻撃を受けた後の復元力・回復力などを指す。
デジタルレジリエンス
大規模システム障害などで起こるビジネスの混乱に適応する能力のこと。ビジネスの継続や早期復旧に必要な能力で、サイバーレジリエンスを含む場合もある。
レジリエンスが注目されるようになった背景

レジリエンスが注目されるようになった背景として、2013年のダボス会議と2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)について解説する。
ダボス会議
ダボス会議は、スイスのリゾート地・ダボスで毎年開催される「世界経済フォーラム(WEF)」の年次総会のことだ。毎回いくつかのテーマが設けられるが、2013年に開催されたダボス会議のメインテーマの一つが「レジリエンス」だった。
レジリエンスがメインテーマになった背景は、世界全体が想定外のリスクにさらされるようになったからだ。経済危機や大規模な自然災害、テロ、サイバー攻撃などが起きた場合、グローバル化した現代ではこれらの影響は1つの国にとどまらず、世界各国に連鎖するようになっている。
また2011年に、東日本大震災が発生したことも要因の一つになったと考えられる。当時、日本には立ち直る力が求められていたが、ダボス会議では日本の経済的競争力についてレジリエンスが著しく低いと評価された。
SDGs
SDGsは2030年までに世界で取り組むべき17の目標と、それを達成するための169のターゲットで構成されているが、以下のようにレジリエンスやレジリエントが繰り返し用いられた。

このように取り上げられたことで、レジリエンスが持続可能な社会を実現するために欠かせないキーワードとして広く認識された。
VUCAの時代にレジリエンスが求められる理由
様々な分野でレジリエンスがクローズアップされているのは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったVUCA(ブーカ)の時代では、生き抜くためにレジリエンスが必要だからだ。
例えば、会社や組織にレジリエンスが求められるのは、世界のどこかの国で経済危機が起きた場合、リーマンショックや新型コロナウイルス感染症拡大のように世界中に影響が及ぶことになる。
また環境レジリエンスが求められるのは、気候危機により世界各地で異常気象が起きているからに他ならない。熱波や干ばつ、長雨、ハリケーン、台風といった異常気象によって生態系が崩れ、ウイルスの蔓延や食糧危機が引き起こされているからだ。
このように自然災害や環境破壊、食料問題、エネルギー、テクノロジー、世界経済などにおける不安定要素が複雑に連動して大きなリスクとして存在しているのが現代だ。そのため、世界は先行きが見通せない予測不可能な時代になっている。
こうした時代に必要とされるのが、景気停滞や市場崩壊といった不測の事態にも速やかに適応し、復旧・復興に向けて動き出せるための備えや体制だ。そのため、個人として、会社として、地域として、社会として、国として、それぞれに必要なレジリエンスを高めていくことが求められているのだ。
日本政府におけるレジリエンスに関連する取り組み
日本では東日本大震災の教訓を生かすために、国土の強靱化(ナショナル・レジリエンス)に向けた取り組みを開始している。具体的なレジリエンスに関連する取り組みを紹介する。
国土強靭化の提唱
日本政府は、2013年版「防災白書」において国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)を目指すとした。地震大国と言われる日本において「大地震等の発生→甚大な被害→長期間にわたる復旧・復興」という繰り返しを避けることが大きな目的だ。
国土強靭化が目標としたのは、人命を守ることに加えて、いかなる事態が発生しても機能不全に陥らない経済社会システムの確保だ。それによって国際的な信頼を獲得し、競争力の向上にもつなげたいという狙いがある。
「国土強靭化基本法」の制定
この流れを受けて、2014年に「国土強靭化基本法」が成立している。国土強靱化には幅広い取り組みが必要だが、大災害が発生した際に目指すのは次の4つだ。
- 人命の保護
- 経済・社会の維持
- 財産及び公共施設の被害最小化
- 迅速な復旧復興
そのため、「家屋の耐震化・家具の固定」「インフラ整備の老朽化対策」「オフィス・工場の耐震化」などを具体的に進めている。
2020年 12 月には5か年加速化対策を策定し、国土強靱化に関する取り組みのさらなる加速化・深化を図るため、123 の対策について中長期の目標を定めている。
- 激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策(78対策)
- 交通ネットワーク・ライフラインを維持し、国民経済・生活を支えるための対策(28対策)
- 予防保全型インフレメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策(21対策)
- 国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進(24対策)
「レジリエンス社会」の実現
経済産業省では、経済産業政策の新基軸において取り組む政策の一つに、気象関連災害などに強い「レジリエンス社会」の実現を掲げている。ここで目指すのは、災害大国である日本で培われた製品やサービスが、世界の国々に対して手本として貢献することだ。
具体的には防災に対する企業の需要を創出しつつ、防災関連への参入を促進して市場を創造・拡大していく。それによって災害に強い産業構造の実現を果たすというものだ。
なお2023年4月11日に中間報告を行い、2027年度までを集中期間としてそれぞれの取り組みを具体化していくとしている。
私たちにできること

レジリエンスは、世界中で重要なキーワードとなっているが、一人ひとりが個人のレジリエンスを高めることも重要だ。個人のレジリエンスを高めることが、社会や地域、そして世界全体のレジリエンスを高めることにつながるからだ。
代表的な例としては、レジリエンスコンピテンシーを強化する方法がある。レジリエンスコンピテンシーとは、成果を生み出す優秀な人材に共通する行動特性のことだ。あらゆるシーンで成果を上げる人は、同じような思考・行動パターンを実行しているとされる。その重要な要素が以下の6つだ。
| レジリエンスコンピテンシーの要素 | 内容 |
|---|---|
| 自己認識 | 自分の思考・行動・感情を深く理解する能力 |
| セルフコントロール | 理想の結果を導き出すために自分の思考・行動・感情を変化させる能力 |
| 現実的楽観性 | ポジティブなことに気づき、自分をコントロールしながら目的達成へと導く能力 |
| 精神的柔軟性 | 状況を多角的に判断し、柔軟に対応する能力 |
| キャラクター・ストレングス | 自分の強みを理解し、その能力を最大限に発揮しながら人生を創出する能力 |
| 人間関係性 | 他者と強い信頼関係を築き、それを維持する能力のこと |
これらの能力を強化して個人のレジリエンスを高めることで、困難に強くしなやかに対峙できるようになっていく。
まとめ
世界は、複雑かつ想定していないリスクに直面する可能性が高まっている。そこで重要とされているのが「強靱性」「対応力」「適応能力」といった意味をもつレジリエンスだ。
社会全体や国全体、企業などでレジリエンスがますます必要となり、個人でもレジリエンスを高めることが求められている。あらゆるリスクを想定したうえでレジリエンスを高めることは、しなやかに強く生きていく術を身につけることだ。そして、それがウェルビーイングにもつながっていく。
参考資料
国土強靭化|内閣官房
「レジリエンス社会の実現」に向けた産業政策の方向性|経済産業省
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