国際的な課題である、ゴーストフィッシング問題
ゴーストフィッシング(幽霊漁業)は、漁業者などの手から離れた漁具が海に流出して海洋生物を傷つけたり、捕獲し続けたりする現象だ。持ち主の管理下から離れ、海へ流出する漁具は「ゴーストギア」と呼ばれる。海洋ごみ全体の少なくとも10%は漁業由来であり、年間50万トン〜100万トンのゴーストギアが流出している、という報告もある。
ゴーストギアの発生原因には、天候や人為的ミスのほか、意図的な放棄・投機も含まれる。意図的な放棄・投機の背景には、漁具を保管・処分する場所の不足やIUU(違法・無報告・無規制)漁業などの問題があると言われている。

多くの漁具は分解されにくい丈夫な素材でできているため、数十年単位で海洋生物の命や居場所を奪い、生態系バランスを壊し続ける恐れがある。特に、漁網やカゴの形をした「仕掛け」などは、長期間ゴーストフィッシングを引き起こす漁具として危険視されてきた。さらに、ゴーストフィッシングは、漁獲量の一部減少を引き起こす懸念もあり、私たちの生活・経済とも無関係ではない。
また、国連が提唱するSDGsの目標14には、「海の豊かさを守ろう」も掲げられている。この目標に関連するテーマとして、ゴーストフィッシング対策の重要性が指摘されており、解決に向けて積極的に取り組む企業や団体も登場している。
ゴーストフィッシング対策に取り組む「Bureo」
ゴーストフィッシングが国際的に問題視される中、アメリカのBureo社では、この問題の解決に向けアップサイクル製品や新素材の開発などを積極的に行っている。
アメリカ・カリフォルニアに北米本社、チリ・タルカワノに南米本部を構えるBureoは、2013年にチリで最初の漁網収集プログラムを始動させ、リサイクル漁網で作られた世界初のスケートボードデッキ「ミノー」の生産を開始。現在に至るまで、ゴーストフィッシングの主な要因である「廃漁網(ゴーストネット)」をリサイクル素材「NetPlus(ネットプラス)」に転換させる事業を発展させてきた。

Bureoの革新的な海洋汚染対策は世界から注目を集め、3人でスタートした会社は従業員が75を超える規模にまで成長。世界の漁業コミュニティと協力しながら、リサイクル事業を通じて、有害なプラスチックごみの1つを海から排除する取組に貢献している。さらに、地元の非営利団体への資金提供などを通じて、漁業関係者に対して適切な漁具管理を促す活動も継続中だ。
Bureoの創業メンバーには、アメリカ・ケープコッド出身の起業家ベンと、ビジネスパートナーであるデビッド、ケビンの3人が名を連ねる。彼らは、アメリカ北東部の漁村で育ち、海を心から愛してきた。Bureoの事業には、人々に多くの恩恵をもたらしてきた海に対する深い敬意と、「海を守る」という強い使命感が反映されている。
同社の代表的な製品として、ゴーストネットから製造したリサイクル素材「NetPlus」がある。2014年以来、パタゴニアのベンチャービジネス基金である「Tin Shed Ventures®︎(前$20 Million & Change)」の支援を受け、NetPlusの開発に成功している。なお、「Tin Shed Ventures®︎」とは、ビジネスを通じて環境危機の解決策などに取り組むことを支援するために作られた投資基金のことだ。

Bureoは、世界の漁業コミュニティと協力関係を築き、漁網を収集している。収集された漁網はBureoの施設で分類・洗浄・裁断・梱包された後、リサイクルパートナーのもとでNetPlusペレットに生まれ変わる。

また、ペレットを加工して作られるNetPlusのリサイクルナイロン糸は、寒さや湿気に強い高性能生地に採用されるケースも多い。NetPlus素材は、既に25以上のブランドの製品ラインに使用されており、世界で普及が進んでいる。NetPlusが採用されているブランドと製品アイテムの一例は、以下の通りだ。
| ・finisterre(Nimbus ジャケット)・patagonia(Baggies™️ショーツ)・COSTA(サングラスフレーム)・YETI(帽子のつば)・futures.(サーフフィン)など |
漁網回収プロジェクトの拡大
2025年1月現在、Bureoの漁網回収プログラムは9か国(チリ、ペルー、パナマ、アルゼンチン、エクアドル、メキシコ、米国、セイシェル、日本)で実施されており、既に4,500トン以上の漁網がリサイクルのために回収されてきた。
日本では、同社の出資企業である豊田通商株式会社が、2023年7月にBureoと共同する形で廃漁網のリサイクル事業に参入。Bureoが実施する廃漁網回収のスキームを多くの国と地域に拡大させるための取組を開始した。日本国内においても、2023年7月より、千葉県外房エリアにて現地企業や漁業者と協働した廃漁網のテスト回収をスタートさせている。今後は、Bureoと協力して国内外に漁網回収拠点を増やす予定であり、プロジェクトの更なる拡大が期待される。

ゴーストフィッシングは、海洋環境や海の恩恵を受ける私たちにとって深刻な脅威であり、各地でゴーストギアの流出を防ぐ対策が求められている。しかし、漁網を始めとする漁具のリサイクルは、まだまだ進んでいないのが現状だ。Bureoのように、ゴーストフィッシング対策に積極的に取り組む企業やコミュニティを増やし、漁具の回収率・リサイクル率を改善していく必要がある。
また、NetPlusのような製品を「買う」という行動が企業の力となり、間接的に取組を後押しできる場合もある。私たち自身も、ゴーストフィッシング対策の重要性を把握した上で、解決につながる消費行動を選択する必要があるだろう。
参考記事
ゴーストギアの根絶に向けて|WWF
Breo|Bureo,INC.
異なる道:ブレオ共同創始者のベン・ネッパーズとチリ南部で暮らす|patagonia
漁網をリサイクルしたネットプラス|patagonia
海洋プラスチック汚染の主原因である廃漁網の繊維リサイクル事業へ参入|豊田通商株式会社
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