リスキリングとは?リカレント教育との違いや現代で求められる理由を解説

リスキリングとは?

リスキリングとは、既存のスキルセットを再教育し、新たな知識や能力を習得するプロセスを指す。具体的には、新しい技術の習得、転職におけるスキルアップ、キャリアチェンジに伴う学び直しといった例が挙げられる。

変化の激しい現代社会において、従来の職業や働き方が大きく変革する中、個人がキャリアを継続するために不可欠な取り組みといえる。

一方、企業にとっても、リスキリングは重要な取り組みである。企業は、従業員のスキルアップを支援することで、組織全体の生産性向上やイノベーション創出、ひいては競争力強化につながる。

リスキリングとリカレント教育の違いは?

リスキリングは、現在のキャリアを継続・発展させるための学び直しであるのに対し、リカレント教育は、キャリアの転換を目的とした学び直しだ。どちらも「学び直し」を意味するが、リスキリングは「働きながら学ぶ」点で大きな違いがある。現在の職業に留まりながら、必要なスキルをアップデートすることを目的とする。

一方、リカレント教育は「働く→学ぶ→働く」のサイクルを繰り返し、生涯にわたって学び続けることを指す。新しい知識やスキルを習得するために、一旦職を離れることが前提となる場合が多い。

リスキリングが求められる3つの理由

近年、リスキリングが求められるようになっている理由について解説する。

1. 技術革新の加速

近年、テクノロジーの進歩は目覚ましく、私たちの生活や働き方を劇的に変えている。新たな技術の導入は、企業の業務プロセスを効率化し、新たなビジネスモデルを生み出す一方で、従業員に求められるスキルセットにも変化をもたらす。たとえば、製造業においてはロボットの導入が進み、作業員のスキルが高度化している。

2. 社会構造の変化

グローバル化や少子高齢化といった社会構造は、急速に変化している。企業を取り巻く環境も大きく変革しており、求められる人材像も多様化している。グローバル化が進展する中で、多様な文化を持つ人々と円滑にコミュニケーションを取れる能力や異文化理解能力など、新たなスキルが求められている。

3. 個人のキャリア設計の変化

終身雇用制度が崩壊し、個人が主体的にキャリアを設計する時代となった。これにより、個人が自ら学び、成長していくことがますます重要になっている。また、ライフスタイルの変化や価値観の多様化に伴い、仕事に対する考え方や働き方も多様化している。個人が自身のキャリアを長く持続させるためには、時代の変化に合わせて常にスキルアップを図っていく必要がある。

リスキリングで得られるメリット

リスキリングで得られるメリット

本章では、個人と企業、それぞれにとってのリスキリングのメリットを解説する。

個人へのメリット

リスキリングは、個人にとって、新たなスキル習得によるキャリアアップの機会拡大といった大きなメリットをもたらす。たとえば、プログラミングスキルを身につけることで、より高収入な職種への転職が可能となる。さらに、新たな知識やスキルを活かすことで、仕事に対するやりがいが増し、将来に対する不安を解消できることも、大きなメリットの一つといえる。

企業へのメリット

リスキリングは、企業にとっても多くのメリットがある。従業員が自身の成長を実感でき、企業への帰属意識が高まることで、離職率の低減につながる。また、社内で人材を育成することで、外部から人材を募集するコストを削減でき、人材不足解消にも貢献する。さらに、新たなスキルを習得した従業員は、より複雑な業務をこなせるようになり、企業全体の生産性を向上させ、ひいては企業の競争力強化につながる。

リスキリング導入の5つのステップ

ここでは、実際にリスキリングを導入する際のステップを解説する。

1. リスキングの目標設定

リスキリング導入の第一歩は、明確な目標設定である。企業が目指す方向性や不足しているスキルを洗い出すことで、効果的なプログラムを設計できる。企業の現状と将来のビジョンを踏まえた、具体的な目標を設定する。

2. 教育プログラムの策定

目標設定に基づき、具体的な教育プログラムを策定する。まず、目標達成に必要なスキルを洗い出し、体系的なカリキュラムを組む。学習方法は、eラーニングや集合研修のほか、OJT(職場での実務を通して学ぶ方法)といった多様な手法を組み合わせよう。学習期間は、目標達成に必要な期間を設定し、受講者が無理なく学習できるよう計画する。

3. 実施と評価

プログラムが策定できたら、実際にプログラムを実施しよう。受講者の理解度や満足度を測るために、定期的にアンケートや小テストを実施する。また、目標達成度を定量的に評価するために、KPI(Key Performance Indicator:ビジネスにおいて目標達成に向けたプロセスを評価するための指標)を設定し、定期的に計測しよう。評価結果に基づき、プログラムを改善し、必要な場合は受講者へのサポートを行う。

4. 実務への活用と定着

プログラムを実施したら、受講者が学んだ知識やスキルを実務に活かせるよう、OJTやプロジェクトへの参画を促進する。さらに、キャリアパスを設計し、リスキリングを通じて身に着けたスキルを活かせるキャリアパスを提示することで、モチベーションを維持し、定着を促す。

5. 制度の継続的な見直しと改善

リスキリングは、社会の変化や企業の状況に合わせて、継続的に見直し、改善していく必要がある。定期的に、目標達成状況を評価したり、従業員の意見を聞いたりしながら、プログラム内容を改善していくことで、より効果を高められる。

リスキリングをサポートする制度と補助金

政府や地方自治体は、リスキリングを支援するさまざまな制度や補助金を用意している。これらを活用することで、経済的な負担を軽減できる。

国の支援制度事例

雇用保険の一般教育訓練支援制度

雇用保険加入者が、一定の要件を満たす場合に、教育訓練費の一部が支給される。プログラミングスクールや資格取得講座などが対象だ。

人材開発支援助成金

企業が従業員のスキルアップのための教育訓練を実施した場合、費用の一部が支給される。新技術導入に伴う研修などが対象となる。

地方自治体の支援制度事例

地方自治体では、地域産業の活性化や住民のスキルアップを目的とした、さまざまなリスキリング支援制度が展開されている。

DXリスキリング助成金|東京都

東京都が実施しているDXリスキリング助成金は、企業や個人がDXに必要なスキルを習得するための費用を補助する制度だ。AIやIoTなど、最新のデジタル技術に関する教育プログラムの受講費用の一部が補助対象となる。東京都内の企業や個人は、より手軽にDXに必要なスキルを習得し、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出につなげられる。

地域産業リスキリング実践支援事業費補助金|愛媛県

地域産業の活性化を目的として、企業が従業員のDXに関する専門知識やスキルを習得するための研修費用の一部を補助する事業を実施している。この補助金を利用することで、企業はDX化を推進し、業務の効率化、生産性の向上、さらには新規事業の創出を実現することができる。

リスキリングの事例

リスキリングは、世界的に広がる取り組みであり、日本企業でも積極的に導入されている。以下に、代表的な事例を紹介する。

AT&T

AT&Tは、デジタル変革に伴い、「ワークフォース2020」というリスキリングのプログラムを実施した。オンライン学習の提供やスキルに報いる報酬体系づくりを通じて、従業員のスキルアップを図り、社内技術職の80%以上が社内異動によって充足された。

マイクロソフト

マイクロソフトは、社内のみならず、社外にもリスキリングを提供した。傘下のLinkedIn、GitHubとともに、コロナにともなう失業者2,500万人に対し、無償でリスキリング講座を提供し、失業者の再就職を支援した。

日立製作所

日立製作所は、IoTやAIといった技術を活用した社会インフラの構築を目指し、従業員のリスキリングを積極的に推進している。IoTプラットフォーム開発やAI活用など、新たな事業領域への展開に伴い、従業員に関連スキルを習得させる教育プログラムを実施している。また、社内ベンチャー制度を導入し、従業員が新たなアイデアを事業化できる環境も整備している。

まとめ

リスキリングは、技術革新が加速し、社会構造が大きく変化する現代において、個人が新たなスキルを習得し、キャリアを転換するための有効な手段である。また、企業にとっては、従業員のスキルアップにより、生産性向上や競争力強化に直結する重要な取り組みだといえる。リスキリングによって、個人の成長と社会の発展に大きく貢献できる。

参考記事
リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省
リスキリングで、人を中心に据えた変革を | 世界経済フォーラム
令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少|総務省
キャリア形成科目「技術者のキャリア」リレー講座 井村亮氏『世界最小の無線認識IC”ミューチップ”事業化への挑戦』|立命館大学

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