コミュニティデザインとは?注目される背景や事例などを紹介

コミュニティデザインとは

コミュニティデザインは、デザインの力でコミュニティに属する人々の課題解決力を高めようと支援すること。都市計画やまちづくりの分野で注目されている考え方で、施設や空間をデザインするだけではなく、ワークショップやイベントの開催で人々の交流を図るなど、コミュニティを形成する取り組みや仕組みそのものが、コミュニティデザインに含まれている。

コミュニティデザインの提唱者は、studio-L代表の山崎亮氏。公共デザインの事業を展開する同社は、手掛けるすべてのプロジェクトが住民参加型になるよう進めている。

コミュニティデザインの対象は、過疎化の進んだ山間部や地方都市の観光地から都市部の複合施設まで、多岐にわたる。しかし、どの領域でも共通するものは「人と人のつながりを作ること」であり、コミュニティの場をつくるソフト面と、建物や空間など物理的な場所をつくるハード面、両視点からのデザインが求められている。

昨今は人と人との繋がりが希薄になっており、「人と関わるのは面倒だ」と考え、コミュニティを避ける傾向にある人も少なくない。一人暮らしや核家族世帯も増加し、人間関係がどんどん分断されていく中で、地域やコミュニティの力を改めて見直そうとするのが、コミュニティデザインという考え方である。

コミュニティデザインが注目される背景

コミュニティデザインが注目される背景

コミュニティデザインという考え方のベースは、1960年代頃には生まれていたという。しかしこの頃の時代背景には急激な人口増加があり、多くの住宅が必要となったことで大規模な団地、新興住宅地の開発が行われていた。このことから、当時のコミュニティデザインは集団の居住空間という意味合いが強かったのである。

一方、現代での「コミュニティ」という概念は、既存の地域社会での繋がりや再生、学校や職場の仲間、自分の居場所など、周囲の環境や人間関係を示している。孤立化が引き起こす様々な心理的問題や社会問題が危惧されている中、昨今は改めてコミュニティを持つことの重要性が叫ばれている。

例えば、日ごろから近所にどんな人が住んでいるか把握していたり、関係性を築いていれば、災害時などに協力することができるだろう。

ただ、こういったコミュニティづくりの需要性は理解していながら、どのように取り組んでいいのか分からないという人も多いのが現状だ。素人だけで作りあげようとしても難しく、計画が頓挫してしまうことも考えられる。

そんなときに求められるのが、コミュニティデザインの力なのだ。

コミュニティデザインで重要なポイント

コミュニティデザインで最も大切なことは、デザインを整えたり、施設や空間をつくったりすることではない。また、コミュニティそのものをデザインするというものでもなく、重要なのは解決に至るまでの過程だ。

コミュニティデザインは、その集団が持つ底力を上げることでコミュニティが自立し、継続していくことを目指している。対象のコミュニティがどんなことに悩み、どうなったら嬉しいか、何度も対話を重ねることで明らかにし、すべての人が参加できるように進めていくことが非常に大切なのだ。

そのため、専門家が一方的に提案するのではなく、様々なアイデアを出し合えるような環境づくりも欠かせない。当然、個人同士の意見が対立することもあるが、一方が否定的であったり、どちらも聞く耳を持たないという状況を生まないための配慮も必要となる。

このように、当人たちの希望や意見をベースに、専門家が実現可能な方法でデザインしていくことが重要なポイントとなる。

コミュニティデザインがもたらす影響

コミュニティデザインがもたらす影響

活動を行っていく過程で、コミュニティの中に新しい人間関係を生み出すことも、コミュニティデザインがもたらす好影響であるといえる。これまで関わったことのない人と想いを語り合うことで、立場や性別、年齢を超えた交流が行われ、新たな価値観を生んだり、お互いへの信頼関係も築かれたりするだろう。

近年では「人それぞれ」という価値観から他人と議論を避ける傾向にあったり、反対に相手を一方的に言い負かす「論破」が目的となっている人も見られるが、コミュニティデザインを進める中で、意見の食い違いを乗り越える方法なども身につけることができる。

さらに、地域やコミュニティが抱える問題は一つではなく、複雑化していることが多い。コミュニティデザインによって課題解決力が鍛えられると、様々な問題に応用がきくようになり、自立したコミュニティを形成することが可能となる。

コミュニティデザインの事例

コミュニティデザインの取り組み内容は幅広く、領域も多岐にわたるが、中にはそれらを組み合わせて新しい分野のデザインも生まれている。ここでは、日本と海外で実践されるユニークな取り組み事例を見ていこう。

三浦編集室(島根県大田市)

「三浦編集室」は、島根県大田市にある群言堂という会社の広報誌だ。

群言堂はアパレルや飲食店運営、古民家再生の事業を展開している企業で、わずか400人の小さな町に本社を構えている。かつて銀山で栄えたこの町も、今となっては過疎集落となってしまった状況の中で、2014年に地元のニュースを伝えるフリーペーパー「三浦編集長」を立ち上げた。5年間刊行を続けたのち、「三浦編集長」はリニューアルのため終了。

2019年からは「三浦編集室」と改め、それまで一人で行っていた制作を地域の仲間とともに行うこととなった。この編集を通して、地元の魅力や在り方と向き合い、どのように外部や後世に伝えていくか、地域ぐるみで考えるきっかけとなっている。

公式サイト:群言堂 三浦編集室 | 石見銀山 群言堂 公式サイト 

十日町市まちなかステージ(新潟県十日町市)

多くの地方都市において、郊外への大型商業施設の進出や地場産業の衰退など、市街地の都市機能の低下が危惧されている。そんな中、十日町市では中心部にあるビルを整備し、市民活動と交流を推進する拠点を立ち上げた。

こうした拠点は地元住民が利用するかどうかが重要であるため、設計から工事までの全段階で、活動団体や市民からの意見を積極的に取り入れている。ワークショップやイベントへの参加を通して実際に体験してみることで、自分たちが関与していることを意識し、市民が主体のまちづくりとなるような仕組みづくりを行っている。

ハイライン(アメリカ合衆国ニューヨーク市)

ニューヨークにあるハイラインは、高架跡を再生させた空中庭園である。ここは元々19世紀に建設された高架鉄道であったが、1980年代に廃線となったあと放置されていた場所だ。荒れ放題で、町の厄介者として扱われており、幾度となく取り壊しの話が持ち上がっていたところ、地元の住民の活動によって解体を免れたという。

今では、都会的でありながらエコロジーが融合するオアシスとして生まれ変わり、アメリカ中の自治体が、廃線の再利用としてハイラインをお手本にするほどだ。地域住民の地道な努力によって、活用されていないインフラを公共スペースに変えることを目指す。

コミュニティデザインの懸念点

コミュニティデザインを進めるにあたり、住民とデザイナーの間に信頼関係を構築することが大切だが、場合によっては上手くいかないパターンもある。おしなべて信頼関係の構築には時間がかかるものだが、コミュニティにおける外部者(デザイナー)の立ち位置をお互いにすり合わせたり、どちらかが支配的にならないよう留意しなければならない。

また、資金繰りも大きな問題として立ちはだかることがある。特に行政が関わる場合、予算は基本的に一年で立てられるため、継続的に活動を続けていくことが難しい可能性もある。

もちろん、コミュニティデザインに着手したあとで生まれる問題も多いが、このような事前に考えられる懸念点は、予め解決しておくことが肝要だろう。

まとめ

コミュニティに属する人々の課題解決力を支援するコミュニティデザイン。地域コミュニティがなくなり、人間関係も希薄になった現代社会において、新しい取り組みでありながら、その根本には昔ながらの「人との交流の大切さ」がある概念だ。

例えば「地域の課題解決」というと、まずは行政が主体となって取り組むものというイメージがあるが、コミュニティデザインではあくまでも市民が主役。問題の本質の発見から実現まで一貫して関わる中で、新たな雇用を創出したり人間関係を構築することがある。そうしてコミュニティを育てていく中で、それぞれにとっての幸せや喜びを見つけ出すことができるだろう。

自立した活動を継続させていくことでコミュニティが広がり、さらに地域の活性化にも繋がるという好循環を巻き起こす。コミュニティデザインは、それぞれの地域が持つ可能性を引き出してくれているのだ。

参考サイト
studio-Lについて|studio-L – スタジオエル
【コミュニティデザイナー 山崎亮さん】住民自らが参加するコミュニティデザインで、 豊かな人生とまちづくりを実現する | 時間〈とき〉ラボ
新たなコミュニティの創造を通じた 新しい内発的発展が支える地域づくりについて|国土交通省
外部者の役割をめぐる「コミュニティデザイン」と 「参加型開発」の比較研究|藤山一郎
十日町市まちなかステージづくり の取組みについて|国土交通省
History | The High Line

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