コーダとは?聞こえない親を持つ子どもがもつ悩みや私たちにできることを解説

コーダ(CODA)とは

コーダ(CODA)とは、Chidren of Deaf Adlultの略語で、聞こえない親を1人以上もつ子どもを指す。1983年にアメリカで作られた言葉で、日本では1994年より使われるようになった。

日本のコーダに関する具体的な数は発表されていないものの、論文での調査によると、全国で2万2,000人程度のコーダがいると推定されている。(※1)

※1 中津真美, 廣田栄子. 聴覚障害の親をもつ健聴児(Children of Deaf Adults: CODA)の通訳役割の実態と関連する要因の検討

アカデミー賞で注目を集めたコーダが主人公の映画『Coda あいのうた』

アカデミー賞で注目を集めたコーダが主人公の映画『Coda あいのうた』
出典:GAGA

コーダの存在が世界に広まった大きなきっかけに、2021年にアメリカで公開され、第94回アカデミー賞で4冠に輝いた映画『Coda あいのうた』がある。

この映画は、聞こえない両親と兄をもつ主人公・ルビーを中心とした物語である。幼い頃から家族の通訳だったルビーは、学校の新学期で合唱部に入部し、その後歌の才能を顧問に見いだされ名門音楽大学の受験を勧められる。ルビーの才能が分からない両親は、家業の方が大切だと受験に反対してしまう。ところが、ある出来事をきっかけに考えが変化し、家族それぞれの夢に向かって進み始める。コーダとしての苦悩と家族愛が描かれていく作品だ。

作品では、実際に聞こえない俳優がルビーの家族を演じており、リアルな表現が話題となった。日本でもアカデミー賞の影響を受けて全国300の劇場で上映されるなど大きく注目された。

コーダが抱える悩み

コーダが抱える悩み

コーダは、コミュニケーション面など日常生活で様々な悩みを抱える。

コミュニケーションが難しい

まず、コミュニケーションが難しい点だ。コーダに関する調査をまとめた論文によると、親との会話が問題なく成立すると回答したコーダは、全体の約50%であり、親子でありながらも十分な意思疎通ができない実態が明らかとなった。

また、会話の成立がしにくい場合、コーダは親の話が理解できないことで親にうまく自身の気持ちを伝えられず、自分に十分な手話能力がないと責めてしまう。また、うまく伝えられないと、会話をすること自体あきらめてしまう場合もある。円滑なコミュニケーションを行うためには、親が音声言語の習得が難しいため、コーダが手話をマスターしなければならない状況にあるのだ。

親の通訳としての責任が重い

親と第三者との通訳としての役割が重い点も挙げられる。コーダは会話中に通訳するだけでなく、場の雰囲気を考えたり、親が話の内容をうまく理解できない場合には理解できるよう解説したりする役割も持っている。また、日本語の読み書きに支障があれば、親の書いた文章を添削したり代筆するケースもある。このように、コーダは単なる通訳ではなく、音声の伝達と関連する支援を総合的に行っている。

コーダは、自身が幼いころから通訳として期待されているが、幼少期のコーダが完全に手話をマスターするのは難しい。さらに、親が話す日本語の意味が理解できず、意味の分からないまま伝えるケースもあるため、通訳としての責任が負担となっている。

ろう・聴文化の違いに違和感を覚える

ろう文化と聴文化には違いがあるため、友人との会話などにおいて違和感を覚える子どもも多い。コーダは幼いころから聞こえない世界で生きてきたことから、成長するにあたって親の障害に葛藤したり、友達との違いにカルチャーショックを感じたりして悩む場合もある。

たとえば、ろうと聴文化には伝え方の違いがある。ろう文化では、言葉のニュアンスを伝えるために表情が重視されるため、会話では目をじっと見て話す。しかし、聴者からは睨んでいる・好意がある、と勘違いされてしまうのだ。また、ろう文化では思いをストレートに伝えるのを尊重しているが、あいまいな表現をする聴者文化には理解されず、トラブルに発展するケースもある。

このように、コーダにとって当然だと思っていたことが違いだと明らかになることで、理解されなかったり疎外感を感じてしまったりする。

悩みを打ち明けられる人がいない

コーダは、悩みを打ち明けられない場合もある。国内に2万2000人しかいないコーダは、周りに同じ境遇の人が少なく、悩みを自分だけで抱えてしまうケースも多い。打ち明ける機会があったとしても、その珍しさから理解されるまでに時間がかかってしまう場合も多く、打ち明けることを諦めてしまうこともある。

国内外のコーダの支援団体

日本や世界には、コーダを支援する団体がいくつか存在する。

J-CODA

J-CODAは、Japan Children of Deaf Adultsの略で、コーダが集まるコミュニティである。1996年に設立され、コーダ同士が交流を深めたり、経験や思いを打ち明けたりする場となっている。コーダ同士でしか分かり合えないことを話せる場所のため、参加者は「悩みを打ち明けられない」「聴文化との違和感を覚える」といった悩みを共有でき、他者とのつながりを感じられるようになっている。

また、J-CODAではイベントを実施したり手話を学ぶ機会を作ったりしており、家庭内外での会話の難しさや社会的な偏見に対処するためのサポートも行っている。

Coda International

CODA Internationalは、アメリカで1983年に設立されたコーダを支援するための非営利団体である。世界中のコーダコミュニティをつなげることを目指しており、さまざまな国や文化を持つ人々が参加している。

CODA Internationalは、世界を代表する団体として教育支援やアドボカシー活動、家族との関係を深める手助けなどを行い、コーダが直面する課題に対処している。また、年次会議や出版物の発行などを通してコーダの人生を豊かにするように努めている。

コーダに私たちができること

コーダに私たちができること

私たちがコーダに対して身近なところからできる行動がいくつかある。

大人同士で直接会話をする

まずは、通訳のコーダを通さずに大人同士で直接会話することだ。親の近くにコーダがいると、つい頼ってしまい子どもたちに負担がかかってしまう。また、子どもも親のためになろうと頑張って通訳をする場合も多い。そのため、大人が状況を汲み取って負担を減らすことが大切である。

特に、子どもには通じない難しい単語を用いる場合、子どもは混乱してしまいさらに負担をかけてしまう。まずは、コーダがいる場合であっても、大人同士でどのようにコミュニケーションをとっていくかを考えて実践してみることが大切だ。

ろう文化について学ぶ

ろう文化を学ぶのもコーダを支える一つの手になる。ろう文化では、基本的に手話を使って会話することは多くの人が知っているが、その会話の仕方については知らない人も多い。

たとえば、ろう文化と聴文化では、情報の伝え方とコミュニケーション方法に違いがある。ろう文化では、明確で誤解のない表現を心がけるため、直接的でわかりやすい伝え方をする。一方、聴文化では、あいまいさを含めた表現や遠回しな言い回しが使われることが多く、空気を読むことが求められる。

また、コミュニケーションについては、ろう文化では、手話や表情、視線など視覚的な要素が重視されるため、相手の顔や目を見て話すのが基本だ。一方、聴文化では、声や音を中心としているため、視線が必ずしも重要視されるわけではない。

このように、コミュニケーションにおいての違いを理解することでろう文化やコーダへの理解を深められる。

身近なところでのサポートや共感を表明する

コーダに対するサポートや共感といった心配りをすることも大事だ。特に青年期のコーダは、親の障がいに対する周囲の同情に対して、敏感に反応してしまうことがある。親の期待を背負い、いい子でいようとする子どもの場合、褒めることで疎ましく思ってしまうこともある。周囲の方々は、コーダ一人ひとりの気持ちに思いを巡らせ、声をかけることが大切だ。

また、専門的な用語を使う医療などの現場では、コーダの通訳には多大な負担がかかる。そのため、場合によっては専門の手話通訳者を手配し、コーダの負担を減らすことも求められる。

このように、それぞれのコーダの状況に応じて周りがサポートしたり共感したりするのが大切となる。

まとめ

コーダは、聞こえない親を1人以上持つ子どものことだ。映画『Coda あいのうた』でコーダの存在は世界的に広まったものの、当事者の実際の悩みを知る人は多くない。日本ではコーダがたった2万人しかいないため、まわりに悩みを相談できず一人で抱える子どももいるだろう。

コーダ自身は通訳者としての役割を自覚しているからこそ責任が重荷になる場合も多いため、周りの大人が気にかけて見てあげる必要がある。障がいをもつ当事者への配慮やサポートが実践される傍らで、コーダのように自身が障がいをもたない人へのサポートはまだまだ薄い。このような苦悩をもつ人が社会の中に存在することを知ることは、共生社会の推進に向けての小さな一歩となりそうだ。

参考文献
「コーダ」 (CODA) についてご存知ですか|東京人権啓発企業連絡会
家ノーマライゼーション 障害者の福祉|公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 
J-CODA
「コーダあいのうた」がこだわった障害者の描き方 監督が語るデフカルチャーを題材にした理由 | 東洋経済オンライン
松木洋人「コーダ、の世界一一手話の文化と声の文化」
CODA(コーダ)親が聴覚障害の子 社会全体で支えるには | NHK
聴覚障害の親をもつ健聴児(Children of Deaf Adults : CODA)の通訳役割の実態と関連する要因の検討|関西福祉科学大学リポジトリ

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