垂直農法とは?メリットや課題、企業の事例をご紹介

垂直農法とは?メリットや課題、企業の事例をご紹介

垂直農法とは

「垂直農法」は、都市化が進む現代社会で注目を集める新しい農業形態で、垂直農業やバーティカルファーミングとも呼ばれる。限られた空間を効率的に利用し、多層の栽培棚を用いて植物を育てる。

土地を水平に使い、作付面積を横へ広げてゆく従来の「水平農業」とは異なり、ビルの内部や屋上など、都市部の建物を有効活用することが垂直農法の特徴だ。都市住民に新鮮な野菜や果物を提供するだけでなく、輸送コストの削減や環境負荷の軽減にもつながる。

垂直農法は、照明・水やり・温度管理などを自動化し、最適な成長環境を整える技術を活用している。また、害虫や病気のリスクを低減できるため農薬の使用を最小限に抑えられ、安全で健康的な作物の生産が実現する。さらに、年間を通じて安定した生産が可能であり、気候変動や天候の影響を受けにくい。

垂直農法は未来の持続可能な農業の一つの解決策として期待されており、世界中で研究と実践が進められている。都市と農業を融合させることで、新たな食の供給システムを築くことができるのだ。

垂直農法の種類

垂直農法には、いくつかの種類がある。以下4つの方法が代表的だ。

  • 土耕栽培:従来の畑と同じく、土を使って植物を栽培する方法
  • 水耕栽培:土を使わず、水と液体肥料を用いて植物を栽培する方法
  • エアロポニック栽培:土を使わず、水と液体肥料を霧状にして植物の根に噴霧する方法
  • アクアポニック栽培:水産養殖と水耕栽培を組み合わせた方法で、水槽で魚を育てながら、その水を利用して植物を栽培する方法

葉物野菜やハーブなどが水耕栽培やエアロポニック栽培で主に育てられる一方、トマトやピーマンなどの実のなる野菜はアクアポニック栽培でも栽培されている。これらの中で、特に水耕栽培が最も普及している。やピーマンなどの実のなる野菜はアクアポニック栽培でも栽培されている。これらの中で、特に水耕栽培が最も普及している。

注目される背景

注目される背景

地球規模での人口増加により、食料の安定供給が求められている。2050年には世界の人口の約7割が都市部に移り住むとの推測もあり、食料の供給が追いつかない地域も出てくると考えられる。

そんな中、年間を通じて安定した収穫が可能な垂直農法は、食料不足のリスクを軽減する手段として注目されている。また、都市部でも作物を効率的に生産できる垂直農法は、限られた土地資源を有効に活用できるとして期待されている。

環境問題の深刻化も、垂直農法の注目を高める一因だ。従来の農業は大量の水や農薬を必要とし、環境への負荷が大きい。一方、垂直農法は水や栄養素の効率的な管理が可能で、環境への影響を最小限に抑える。また、農薬の使用を減らし、持続可能な農業を実現する手段として評価されている。

さらに、技術の進歩も垂直農法の普及を後押ししている。最新のテクノロジーを駆使した照明やセンサー、AIによる管理システムなどが、効率的な作物生産を可能にしている。これにより、都市部でも高品質な食材を供給できる点が注目されている。こうした背景が重なり、垂直農法は今後もますます関心を集めることが予想される。

主要国はアメリカ

垂直農法の主要国であるアメリカでは、高層ビルや輸送コンテナを利用した垂直農法の導入が盛んだ。特にニューヨークやシカゴなどの大都市では、ハウス内の環境を整える技術を駆使した大規模な垂直農場が数多く存在する。

また、アメリカ企業の多くは、垂直農法に必要な技術開発や資金投資に積極的だ。研究開発への継続的な投資が行われており、高効率かつ持続可能な農業技術の普及が進んでいる。消費者のオーガニック食品への関心の高まりも垂直農法の需要を後押ししている一因だろう。

垂直農法のメリット

垂直農法には、さまざまな利点がある。ここでは、代表的な4つのメリットを紹介する。

天候にも左右されず年間を通して生産できる

従来の農業は、季節や気候にどうしても依存してしまう。異常気象が収穫に与える影響も無視できない。

一方、垂直農法は室内で行われ、環境制御システムにより最適な成長条件が常に維持される。そのため、年間を通じて安定した生産が可能となり、食料供給の安定性が大幅に向上する。

また、天候不順による作物の損失がないため、計画的な生産管理が可能であり、生産効率も高まる。特に都市部では、新鮮な食材を安定して供給できるため、食料自給率の向上にもつながる。持続可能な農業の一翼を担う垂直農法は、未来の食料供給システムとして重要な技術である。

フードマイレージを削減する

フードマイレージとは、食料が生産地から消費地まで輸送される距離を指し、環境負荷の指標として用いられる。長距離輸送によるCO2排出は環境に悪影響を及ぼすが、垂直農法は都市部での栽培を可能にするため、輸送距離が短縮される。

この結果、輸送に伴うエネルギー消費と温室効果ガスの排出が大幅に削減され、環境負荷が軽減される。また、地元で新鮮な食材を提供できるため、品質も向上する。

水や光、農薬の使用を最小限に抑えられる

作物を育てるのに不可欠な水や農薬の使用を最小限に抑えられる点も、垂直農法の大きなメリットだ。従来の農業は大量の水と農薬を必要とし、環境への負荷が大きい。

しかし、垂直農法では閉鎖的な栽培環境を利用し、効率的な水の循環システムを導入することで水資源の使用量を最大95%削減できる。農法や育てる作物によっては、土も不要だ。また、LED照明を使用することで、エネルギー消費を抑えながらも植物の成長に必要な光を十分に供給できる。

さらに、害虫や病気のリスクを低減する環境を維持するため、農薬の使用も最小限に抑えられる。これにより、安全で環境に優しい作物の生産が実現する。

農業作業者の負担を減らす

従来の農業では、害虫や野生動物による被害、そして大型農業機械の操作に伴う事故のリスクが常に付きまとっていた。しかし、垂直農法は屋内で行われ、栽培環境が厳密に管理されているため、これらのリスクが大幅に軽減される。害虫や野生動物の侵入を防ぐだけでなく、安全な環境で作業できるため、作業者の安全も確保されるのだ。

また、大型機械を必要としないため、肉体的な負担も軽減される。さらに、自動化技術の導入により作業の効率化が図られ、農業従事者の労働環境が大幅に改善される点も大きな利点である。ため、肉体的な負担も軽減される。さらに、自動化技術の導入により作業の効率化が図られ、農業従事者の労働環境が大幅に改善される点も大きな利点である。

垂直農法が抱える課題

垂直農法が抱える課題

さまざまなメリットがある垂直農法には、爆発的な普及に至らない理由がいくつかある。ここでは、垂直農法の課題として、以下の3点について深掘りする。

導入コストと維持費が高い

垂直農法が抱える課題の一つは、導入や維持に多額の費用がかかる点である。初期投資として建設費や設備導入の費用が大きく、これが普及のハードルとなっている。

運用に際しても、照明や環境制御システムの維持に多くの電力を必要とし、電力価格の変動にも弱い。特に、エネルギーコストが高騰すると運営費用が増加し、経済的な負担が大きくなる。

また、管理された環境条件下では自然受粉が妨げられるため、手作業による受粉が必要となるが、その人的コストも無視できない。これらの課題を克服するためには、コスト削減や効率的な運用方法の開発が求められるが、垂直農法への人気が高まっていく中で、運用コストが低下していくと予想される。

機械の故障や人的ミスのリスクがある

垂直農法は効率的で持続可能な農業技術である一方で、その運用において高度な管理と注意が求められる。例えば、高度に自動化されたシステムを多く使用するため、機械の故障が発生すると全体に大きな影響を及ぼす可能性が高い。

また、システムの複雑さから、操作ミスや設定ミスが収穫量や品質に直結するリスクがある。さらに、従来の農業に比べて専門知識と技術が必要とされるため、適切な技術者の確保が難しく、人材不足も問題となり得るだろう。

生産できる作物が限定的である

垂直農法は、特に葉物野菜やハーブなど、成長が早く小型の作物の栽培に適している。しかし、ジャガイモなどの根菜類やとうもろこしなどの栽培中に大きく成長する作物は、空間と資源の効率が悪いため、垂直農法には向いていない。成長すると2メートルを超える果樹も、成長スペースと支えが必要なため、垂直農法では難しい。

また、垂直農法で栽培される作物は、一般的に価格競争力のある市場において限定される。そのため、高価な設備投資に見合った収益を得るためには、高付加価値のある作物を選定する必要がある。これらの点から、垂直農法の普及には、栽培する作物の選定が重要であると言える。がある。これらの点から、垂直農法を成功させ、収益性を確保するには、栽培する作物の選定が重要であると言える。

垂直農法をリードする企業の事例

世界各国でさまざまな企業が垂直農法に取り組み、従来の農業システムを大きく変革しようとしている。ここでは、その代表として以下の3社の事例をご紹介する。

Infarm|ドイツ

Infarm(インファーム)は、ドイツ・ベルリン発のスタートアップで、都市部での農業の革新に貢献している。同社はスーパーマーケット内のような限られたスペースで野菜を栽培し、消費者に採れたてを直接提供する「スマート栽培ユニット」を構築している。言わば、お店の中に「小さな畑」を作り出すシステムだ。2021年には、アジア初展開として、日本にも導入された。

インファームの栽培ユニットは、わずかな面積で多くの野菜を生産でき、都市部でも新鮮な食材を提供できる点が特徴だ。環境条件を自動で調整し、安定した品質と収穫量を維持する。また、究極の地産地消を実現することで、輸送コストと環境負荷を大幅に削減している。

Intelligent Growth Solutions|スコットランド

Intelligent Growth Solutions(IGS)は、スコットランドに拠点を置くアグリテック企業で、高層での屋内栽培を可能にする設備を開発し、農家に販売している。LED照明や自動化システムを駆使し、効率的に作物を育てるための環境を提供する。特に、ロボティクスとオートメーション技術を組み合わせることで、人手による作業負担を軽減し、安定した生産を実現している。

IGSは、「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」でパビリオンを設置し、アメリカの農務長官Tom Vilsack氏や、米上院農業・栄養・林業委員会の委員長Debbie Stabenow氏も訪れた。また、社会科見学として学生たちも施設に招き、国連の目標や農業の問題点について学ぶ機会を提供するなど、市民活動団体との連携も積極的に行っている。

三井物産|日本

三井物産は、垂直農法を取り入れた植物工場事業をサウジアラビアで展開し、サステナブルな農業を推進している。

サウジアラビアは過酷な気候条件と高い食料輸入依存度を抱えるが、三井物産はイタリアのスタートアップZERO社と提携し、高効率な栽培システムを導入。LED照明や空中栽培方式を利用した設備は、従来の農法に比べて水や農薬の使用を大幅に削減する。さらに、AIやIoT技術を駆使して最適な生育条件を維持し、安定した収穫量を実現している。方式を利用した設備は、従来の農法に比べて水や農薬の使用を大幅に削減する。さらに、AIやIoT技術を駆使して最適な生育条件を維持し、安定した収穫量を実現している。

まとめ

垂直農法は、都市化と人口増加に対応するための革新的な農業手法として注目されている。そのメリットは、限られた空間での効率的な作物栽培や、環境負荷の低減にある。

しかし、導入コストや維持費の高さ、生産できる作物の制約などの課題も存在する。それでも技術の進展とともに、これらの課題は徐々に克服されつつあり、垂直農法は持続可能な食糧供給の一環として、都市部の食料自給率向上や環境保護につながる可能性を秘めている。

Edited by ERI
参考サイト

North America Vertical Farming Market – Industry Trends and Forecast to 2029|DATA BRIDGE
スーパーに突如現れた小さな「畑」 アジア初上陸のInfarmとは|マイナビ農業
垂直農法で世界の食料問題、気候変動に挑む スコットランド発アグリテックIntelligent Growth Solutions|TECHBLITZ
サウジアラビアの砂漠から、サステナブルな農業を。|三井物産株式会社

About the Writer
丸山瑞季

丸山 瑞季

大学で国際コミュニケーション学を専攻。卒業後はデジタルマーケティングに携わり、現在は難聴児の子育てに奮闘しながら、楽しく生きることをモットーに在宅で働く。関心のあるテーマは、マインドフルネス、ダイバーシティ、心理学。趣味は、食べること、歩くこと、本を読むこと。この人が書いた記事の一覧

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