生理の貧困とは
「生理の貧困」とは、経済的な理由などによって生理用品が購入できない、または、十分な量を使用できない状況を指す。
「生理の貧困」は、日本だけの問題ではない。サハラ以南のアフリカのいくつかの国では、生理に対して「汚れ」「生理中は他の人に会ってはならない」などの風習があり、生理用品が入手困難だったり、生理が原因で教育の機会を奪われたりすることがある。
日本の場合も、生理に対するスティグマは残っている。隠さなければならないもの、という認識も依然として強く、コンビニや薬局などで生理用品を購入した際は、パッケージが見えないように紙袋に入れることが慣わしとなっている。生理に対してオープンに語ることが「はしたない」「恥ずかしい」とされる文化が残っているため、生理用品が必要な場面でも「必要だ」と言うことができず、結果的に、生理用品にアクセスが難しくなってしまうケースもあるのだ。
つまり、「生理の貧困」とは、貧困が原因で生理用品を十分に購入することができないことだけを指すのではなく、生理に対する「汚れ」「恥ずかしい」という負のイメージゆえに、生理用品にアクセスすることが難しくなっている状況をも指す言葉だと言えるだろう。
生理の貧困が与える悪影響

生理の貧困がサハラ以南のアフリカで問題になっている一因は、女性が教育の機会を奪われる、という点が挙げられる。生理用品にアクセスできず、生理中は学校に行けない、となると1か月のうち1週間程度は学校に行けないことになる。そのことで学業に支障が出て、退学に追い込まれることも珍しくないのだ。
日本でも、同様に問題が発生している。生理用品を購入することができず、トイレットペーパーや布などで代用せざるを得なくなった場合、学業に集中することは難しい。また、不衛生であり、健康リスクにつながるケースもある。程度の差はあれども、「生理の貧困」が女性の教育や労働へのアクセスを阻害する要因になっている実態は、全世界共通だと言えるだろう。
また生理に対する正しい知識から阻害された結果、PMDD(月経前不快気分障害)やPMS(月経前症候群)、子宮筋腫等の病気に気が付けず、長期間放置してしまう恐れもある。
「生理の貧困」は、女性から教育機会を奪い、生涯賃金を低下させ、健康リスクを増大させる可能性があるため、社会問題だと言えるだろう。
生理の貧困が発生する理由
ところで、なぜ先進国と言われる日本で「生理の貧困」が発生してしまうのだろうか。
1 経済格差・男女の賃金格差
ここ数十年、日本の平均賃金は十分に上昇していないにもかかわらず、税金は増え、物価は上昇している。
とは言っても、平均世帯年収は500万円台、中央値は400万円台であるから、生理用品を買うことは難しくないように感じるかもしれない。しかし、一人親世帯に限って確認してみると父子家庭の平均年収は500万円程度である一方、母子家庭の平均年収は200万円台だ。また、実に二人に一人のシングルマザーは貧困ライン以下の収入しか得られてない。これは、男女の賃金格差が大きく、女性の貧困が解消されていないことを示す。
貧困家庭の場合、教育費や医療費を支払うのに精一杯で、生活必需品である生理用品までも十分に購入できないケースがあるのだ。
2 生理に対するスティグマ
日本では、生理用品といえば、ナプキンやタンポンが一般的で生理用ショーツや月経カップなどは、普及し始めたばかりだ。生理用ショーツや月経カップは、ナプキンやタンポンよりも高額だが、繰り返し使えるため、慣れればむしろ経済的になるケースも多い。
しかし、生理用ショーツや月経カップなどは、なかなか日本で普及しない。一因は、生理について大っぴらに話すべきではない、というスティグマだ。
試してよかった調理器具や、メイク道具などは、すぐに友達と共有することはできても、試してよかった生理用品は、友達に勧めるのは気が引けるという人もいるだろう。公の場所で生理の話をするのが難しいとか、生理痛で会社を休みたいけれど、生理の話を上司にしていいのか悩む人もいる。
日本を含む生理に対するスティグマが強い国では、生理に対して困難があったとしても、悩みを共有することはできない。また、新しく便利な商品が出てきても、普及しづらいという現状があるのだ。
3 国の取り組みの遅れ
「生理の貧困」は世界各国で社会問題になっており、生理用品の無料配布を行なっている政府も多数存在する。
例えばスコットランドでは、学校だけではなく、公共のジムなどの公共施設や市庁舎、薬局や診療所などで、無料で生理用品を受け取ることができる。それだけではなく、生理用品が必要な場合は、アプリを通じてデリバリーの依頼も可能だ。台湾は、すべての学校と大学に生理用品を無料で設置する取り組みを2023年から実施し始めた。フランスでは、ナプキンやタンポンを無料配布していたが、2024年からは月経カップも無料で配布を始めている。アメリカでは25の州で生理用品が無料で提供されている。
一方、日本は、民間企業や自治体レベルの取り組みにとどまっており、国レベルの対策は無きに等しく、「生理の貧困」は解消されたとはいえない状況だ。
生理の貧困をなくすための取り組み
日本は国レベルで生理用品の無料提供を行うなどの抜本的な対策は行なっていない。しかし、企業レベル、自治体レベルでは、さまざまな対策がとられている。
生理の貧困撲滅に貢献する民間団体「OiTrオイテル」

近年注目されている生理の貧困撲滅に貢献している民間企業といえば、OiTr(オイテル)だろう。OiTrでは、2022年時点で商業施設や学校など、全国170箇所以上の施設に無料でナプキンが受け取れるディスペンサーを設置している。このディスペンサーには広告がつけられており、アプリと連携して広告を見ることで、ナプキンが受け取れるという仕組みだ。
地方公共団体の取り組み
地方公共団体によっては、生理用品を無料で提供しているところも多い。しかし、厚生労働省が令和4年2月に実施した「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」の結果によると、生理用品の購入・入手に苦労したことがある人(244人)のうち約半数(49.6%)が居住地域で生理用品の無償提供が行われているかどうかが「分からない」と回答している。これにより、生理用品の提供の取組を認知している人の割合は低いことが明らかになった。
さらに、取組を認知しながらも利用したことがない人(129人)にその理由を尋ねたところ、 「申し出るのが恥ずかしかったから(8.5%)」、「人の目が気になるから(7.8%)」、「対面での受け取りが必要だったから(6.2%)」などの理由が挙げられた。やはり、生理に対するスティグマが強く、「受け取るのが恥ずかしい」という理由で「生理の貧困」に追いやられている人も少なくないことがわかった。
こうした実態を踏まえ、いくつかの地方公共団体では、広報誌を活用して生理用品提供の実態を広めたり、学校のトイレで気軽に受け取れるナプキンコーナーを設置したり、といったさまざまな取り組みを行なっている。
生理の貧困をなくす抜本的な取り組みとは?
「生理の貧困」問題を抜本的に解決するためには、生理用品の無料配布や補助制度の拡充が不可欠だ。現状、生理用品は税率が10%だが、税率を下げるだけでも助かる家庭は多いだろう。税制上の見直しを行う、学校のトイレに無料のナプキン設置を義務づけるなどの抜本的な解決が望まれる。
また、個人レベルでも「生理の貧困」を解消するためのアプローチはできるだろう。多くの人が、「生理用品が必要だと申し出るのが恥ずかしい」と考える現状を変える必要がある。「生理は言葉通りの生理現象であり恥ずかしいものではない」という意識を広めることで、生理用品が必要なときに、気軽に「必要だ」と言える世界を作ることができるだろう。
毎月、生理の時期に快適に過ごすことができれば、女性の人生の幸福度は飛躍的に高まるはずだ。
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