プラグマティズムとは?「理論」より「効果」を重視する哲学について知る

プラグマティズムとは?

プラグマティズム(pragmatism)とは、19世紀後半のアメリカで発祥した哲学的な思想のこと。創始者はアメリカで最も偉大とされる哲学者チャールズ・サンダース・パースだ。

プラグマティズムの語源は、ギリシア語で「行動」や「実践」といった意味を持つプラグマ(pragma)で、日本では「道具主義」「実用主義」「実際主義」「行為主義」「実践主義」などと言われる。

「物事の真理を理論や信念に求めるのではなく、導き出した結果によって判断する」のが基本的なスタンス。簡単に言うと「行動や行為などの結果によって真理や価値が決まる」という考え方だ。「正しいかどうか」よりも「役に立つかどうか」が重要という主張が根幹にある。

プラグマティズムは多様化し、教育思想や社会思想、政治思想、歴史哲学、宗教論、芸術論などの領域でも発展している。現代では、「間違いは修正すればいい」「前例にとらわれず、考え方をアップグレードさせていく」というオープンマインドに近い考え方としても用いられる。

プラグマティズムの基本的な考え方

科学が発達していない頃は、信仰や宗教的な考えなどから目に見えない絶対的な真理があった。それをもとに、正しいか間違っているか、善か悪かという判断をするのが常識となっていたのだ。

例えば、「宇宙の中心は地球」という天動説が紀元前のアリストテレスの時代から常識だった。16世紀にコペルニクスが唱えた地動説をガリレオ・ガリレイが実証した際も、「太陽が動いている」とする聖書に反すると異端扱いを受けた。

しかし、プラグマティズムはこのように絶対的な真理を置かないことを原則としている。良い結果につながればそれが真理、結果につながらない推論や仮定は無価値で無意味というスタンスが基本となる。

プラグマティズムが生まれた背景

プラグマティズムが生まれた背景

プラグマティズムが生まれた背景には、1859年にイギリスのチャールズ・ダーウィンが発表した『種の起源』による進化論と、奴隷制度を巡って対立していたアメリカにおける南北戦争がある。

進化論を巡っては、進化論を信じる人たちと、万物は神によって創造されたというキリスト教の教えを信じる人たちが対立していた。一方、南北戦争も奴隷制度に賛成する南部と、反対する北部の人たちがそれぞれの正義をかざして争いを繰り広げていた。

こうした中、チャールズ・サンダース・パースは「頭の中にある真理や理論、信念を対立させるだけでは争いをなくすことはできず、無意味である」と唱えた。そして、「行動や行為の結果に基づいて価値を判断するべき」と主張した。この主張が、プラグマティズムのはじまりとされる。

プラグマティズムの代表的な人物

プラグマティズムを語る上で外せない3人の人物について紹介する。この3名は初期のプラグマティズムを主導したことで古典的プラグマティストとされるが、現在のアメリカの哲学界にも大きな影響を与えている。

チャールズ・サンダース・パース

プラグマティズムの創始者。基本的なスタンスと言える「プラグマティズムの格率」を主張した。

「プラグマティズムの格率」とは、「何かが良い結果につながるのなら、それが真理であるか、それに価値がある」という考え方。「どれだけ理論に説得力があっても、結果が伴わなければ価値がない」という意味も含んでいる。

例えば、速く走るために次の2つの方法があるとする。

A:速く走るための理論に納得できるが、実際には速くならなかった
B:理論は不明瞭な部分もあるが、試したら実際に速く走れた

この場合、結果的に速く走れたのはBなので、「Bの方に価値がある」というのがプラグマティズム的な考え方となる。

ウィリアム・ジェームズ

パースの親友であり同僚で、プラグマティズムをより実用的に解釈した。その功績によって、プラグマティズムが全世界に広がったとされる。

具体的には、信仰心などの宗教的な要素が個人に与える影響について、「いかなる観念であっても、それが人生において実際に有用な効果をもたらすならば、それが真理である」と主張した。「思想や理念、哲学、信念などは自分にメリットがあれば、すべて価値がある」ということを意味している。

例えば、「祈る」という行為には医学的な効果はないが、家族が病気になった時に祈ったことによって自分や家族の不安が解消されたのであれば、それはメリットになる。その人にとって「祈りには価値がある」という考え方となる。

ジョン・デューイ

20世紀前半に活躍した哲学者であり教育思想家。教育学の分野でプラグマティズムを発展させた人物として知られる。代表的な思想は、現実的な問題を解決する際に知識を道具として扱う「道具主義」。自身のこともプラグマティストではなく、道具主義者とした。

教育界への影響も大きく、アクティブ・ラーニング、探究学習、問題解決学習、クリティカル・シンキング、ロジカル・シンキング、シティズンシップ教育などはデューイの思想に基づくとされる。

根底にあるのは、学びにおける体験や経験の大切さ。デューイが提唱した「Learning by doing(なすことによって学ぶ)」という概念は体験・経験の重要性を説いており、学校教育やビジネスなどさまざまなシーンで今なお活用されている。

世界におけるプラグマティズム

1870年代に誕生したプラグマティズムは隆盛を極め、1930年代まで広く受け入れられた。特に20世紀の最初の4分の1世紀はプラグマティズムの全盛期とされる。

その後も教育思想や社会思想、政治思想などのほか、記号学や現象学といった多領域に影響が及んでいる。現代哲学の発展に大きく貢献し、実存主義やマルクス主義、分析哲学などと並んで現代哲学における主流の一つとされる。

日本におけるプラグマティズム

プラグマティズムが初めて日本にやってきたのは1888年。日本初の心理学者である東京帝国大学の元良勇次郎教授が、デューイの心理学を紹介したことがはじまりだ。

1900年にはイェール大学心理学のG.H.ラッド教授が来日し、ジェームズの心理学を題材に講演した。その翌年には、ジェームズの書物『信ずる意志』の思想について、東京帝国大学の桑木厳翼教授が紹介した。

プラグマティズムが日本で隆盛を極めたのは大正デモクラシー期。その後、第2次世界大戦敗戦後にも再びプラグマティズムへの注目度が高まり、民主主義運動や教育改革に大きな影響を与えたと言われる。

プラグマティズムが現代において注目されている理由

プラグマティズムが現代において注目されている理由とは?

現代においてもプラグマティズムが注目されているのは、グローバル化や多様化が進んでいる中で現代にも通じる考え方とされているからだ。

グローバル化や多様化によって社会が著しく変化する中で、自分が信じる一つの考え方(信念や真理)に縛られてしまうと、変化に対応できなくなってしまう。

良い結果につながるのであれば、自分とは異なる考え方も取り込んでブラッシュアップしていくことがダイバーシティが進む時代には必要だ。こうした考え方は、プラグマティズムに影響を受けていると考えられる。

教育とプラグマティズム

小中高の総合学習として導入されている探究学習は、プラグマティズムに起因するとされる。書物に偏りがちな教育に対して、行動や経験による学びを求める学習だからだ。

また教員の一方的な講義ではなく、児童・生徒が主体的に問題発見・解決を目指すアクティブ・ラーニングという学習法も同じだ。教科書に書いていることがすべてではなく、実際に行動を起こして得られる知識や経験によって学んでいくというプラグマティズムの考えをもとにしている。

環境問題とプラグマティズム

地球環境問題の領域においても、「環境プラグマティズム」という言葉が使われるようになっている。環境問題に対して抽象的な議論を行ったり、理想を掲げるだけではなく、現実的な解決策を求めるべきという主張だ。これも「理論ではなく、結果で判断すべき」というプラグマティズムの考え方が元になっている。

現代にも活用できるプラグマティズムの思想

プラグマティズムの思想は現代でも注目されているが、個人として活用できる考え方について紹介する。

既存の仕組みや慣習にとらわれない

既存の仕組みや前例、慣習などにとらわれると新しい発見ができなくなる。もちろん慣習を踏襲することが悪いわけではない。良いものを取り入れて、今の時代に合うように自分なりにブラッシュアップしていくことが重要だ。

正しい理論も自分で確認する

どれだけ正しいと思われる理論でも、実際に役に立たなければ机上の空論となる。従来の理論や正論だけで決定することなく、自分の目で理論を確認し、自分なりの正解を持つことが重要だ。

行動することを躊躇しない

行動を起こすことで変化のきっかけがつかめたり、今までとは違う何かが見えることがある。理論に固執せずに、自分の目で新しい発見をするように心がけたい。

異なる意見の中にこそ進化のきっかけがある

異なる意見を全く受け入れないという姿勢では、新しいアイデアは生まれない。異なる意見であってもいったんは聞き入れ、参考にできるか確認することで、自分の中にはないヒントが見つかる場合もある。

「そのほか」を歓迎する

選択肢を限定すると、それ以外の意見を受け入れられなくなる。「そのほか」を歓迎するというような柔軟な姿勢でいることが重要だ。

まとめ

1870年代のアメリカで発祥した哲学的思想プラグマティズムは、わかりやすく言うと「理論や信念に固執しないで、結果を重視して物事を判断するべき」という考えだ。

このプラグマティズムの考え方は、現代にも大きな影響を与えている。身近なところでは、教育現場において取り入れられているアクティブ・ラーニングや探究学習にはプラグマティズム的な思想が導入されている。

「前例や慣習にとらわれない」「自分以外の知識や経験によって新しい発見が生まれる」という考え方は、自分をブラッシュアップするのにも役立つ。そんなプラグマティズム的な思考方法を、日常に取り入れてみてはどうだろうか。

参考記事
What is John Dewey’s Philosophy of Education?|John Dewey Theory & Impact

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