ダークパターンとは?問題点や過去事例、ユーザーとしてできる対策を解説

ダークパターンとは

ダークパターンとは、ユーザーを意図的に誤解させたり、望まない行動を取らせるために設計された仕組みやデザインのことを指す。2010年にイギリスのデザイナーであるハリー・ブリグナルが提唱したことをきっかけに広まった用語である。彼は、ユーザーへのアプローチの中に、倫理的に問題のある手法が多く見られることに警鐘を鳴らしている。

例えば、購読の自動更新をキャンセルしにくくするデザインや、不要なオプションをデフォルトで選択させるチェックボックスなどがダークパターンの一例である。これらの手法は、企業が利益を最大化するためにユーザーの不注意や無知を利用するものだ。

ダークパターンの概念が生まれる以前からも、似たような問題は存在していた。例えば、広告業界では「ベイト・アンド・スイッチ」と呼ばれる手法があり、魅力的なオファーでユーザーを引き寄せ、実際には異なる商品やサービスを提供するというものである。また、契約書の細かい文字で重要な情報を隠す手法も、ダークパターンと同様にユーザーを欺くものである。

ダークパターンは、ユーザーの信頼を損なうだけでなく、長期的には企業の評判にも悪影響を及ぼす可能性があるため、倫理的なデザインを追求することは、ユーザーと企業の双方にとって長期的には合理的な選択といえる。

OECDが分類するダークパターンの7タイプ

OECD(経済協力開発機構)は2022年に刊行したレポートの中で、ユーザーを意図的に誤導するデザイン手法を7つのタイプに分類している。これらの手法は、ユーザーの意図しない行動を引き起こすために設計されている。

  • 行為の強制(Forced Action)
    ユーザーに特定の行動を強制する手法
    (例:サービスを利用するために不要なオプションに同意させる)
  • インターフェース干渉(Interface Interference)
    ユーザーの操作を妨げるデザイン
    (例:閉じるボタンを非常に小さくし、誤って広告をクリックさせる)
  • 執拗な繰り返し(Nagging)
    ユーザーに繰り返し同じ要求をする手法
    (例:ポップアップ広告が何度も表示される)
  • 妨害(Obstruction)
    ユーザーが望む行動を取りにくくする手法
    (例:アカウントの削除手続きを複雑にする)
  • こっそり(Sneaking)
    ユーザーに気づかれないように情報を取得する手法
    (例:チェックボックスをデフォルトでオンにしておく)
  • 社会的証明(Social Proof)
    他のユーザーの行動を示して、特定の行動を促す手法
    (例:「多くの人が購入しています」と表示する)
  • 緊急性(Urgency)時間制限を設けて、ユーザーに急いで行動させる手法
    (例:「残り時間わずか」と表示する)

これらの手法は、ユーザーの行動を操作し、企業の利益を最大化するために利用される。ユーザーは、これらのダークパターンに対して警戒し、慎重に行動することが重要だ。企業もまた、倫理的なデザインを心がけることが求められる。

ダークパターンのよくあるケース

引っかかりやすいダークパターンのよくあるケース

ダークパターンは、日常生活のさまざまな場面で見られる。特にネット通販やサブスクリプションサービスでは、消費者が知らないうちに不利な契約を結ばされることが多い。以下に、具体的なケースを紹介する。

ネット通販での定期購入トラブル

ネット通販での定期購入トラブルは、特に健康食品や化粧品で多発している。初回は安く設定されているが、実際には高額な定期購入契約が条件に含まれていることが多い。

例えば、お試しのつもりで「初回100円」の健康飲料を注文したところ、翌月に7000円の請求が来て初めて定期購入契約だったことに気づくケースがある。

国民生活センターによると、2023年には定期購入に関する相談件数が79,995件に達した。また、動画配信や音楽配信のサブスクリプションサービスでも同様のトラブルが報告されている。

意図せず個人情報が引き出される

無料サービスやアプリの利用時に、ユーザーが意図せず個人情報を提供してしまうケースも多い。例えば、無料のゲームアプリをダウンロードする際に、連絡先や位置情報へのアクセスを求められることがある。ユーザーの個人情報が無断で収集されるケースもあるため、注意が必要だ。

また、アンケートや懸賞応募の際に詳細な個人情報を入力させ、その情報が第三者に提供されるケースも報告されている。消費者は、アプリやサービスの利用前に規約をよく確認し、必要以上の情報を提供しないよう注意しなければならない。

紛らわしい広告で誤タップを誘う

スマートフォンアプリやウェブサイトでは、ユーザーを誤タップさせるための紛らわしい広告が多く見られる。例えば、広告の閉じるボタンを非常に小さくし、ユーザーが誤って広告自体をタップしてしまうように設計されていることがある。また、広告がコンテンツと似たデザインで表示され、ユーザーが誤ってクリックするケースもある。ユーザーは意図しないページに誘導され、場合によっては不正なサイトにアクセスしてしまうリスクがある。

ユーザーは、広告のデザインや配置に注意を払い、同時に、企業もユーザーの体験を損なわないよう、誠実な広告表示を行うことが求められる。

過去に問題となったダークパターンの事例

過去に問題となったダークパターンの事例

日本経済新聞の調査によると、国内主要サイトの6割でダークパターンが確認されている。普段から利用するような大手のサービスや企業でも、過去に問題となった事例がある。

Facebook

2019年、Facebookが2段階認証用の電話番号をターゲット広告に利用していたとして、米連邦取引委員会(FTC)が申し立てを行った。2段階認証は、ログイン時にIDとパスワードに加え、電話番号やメールアドレスで本人確認を行うセキュリティ手法である。アカウントの乗っ取り防止のために登録した電話番号が他の目的に利用され、ユーザーの信頼を損ねた。

Facebookは2018年にも、ユーザーの同意なしに個人情報を収集していたことが問題となった。プライバシー設定が複雑で、情報の利用状況が把握しづらく、多くの個人情報が不適切に扱われたのだ。この手法はFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグにちなんで、「プライバシー・ザッカーリング」と名付けられている。

Amazon

Amazonプライムに加入している人の中には、解約しようとしても複雑な手続きに阻まれた経験がある人も多いのではないだろうか。ノルウェーの消費者保護機関が2021年に「Amazonはプライム会員の退会を不当に阻止している」との声明を発表し、これを受けてヨーロッパやアメリカの16の消費者団体が訴訟を起こした。

Amazonは「お急ぎ便」や「お届け日時指定便」を選択すると、自動的にプライム会員の無料体験に登録されるように設計されていた。また、解約手続きが非常に複雑で、多くのクリックやページ遷移が必要であったため、ユーザーが解約を諦めるケースも多かった。このような設計は、ユーザーの意図に反してサービスを継続させるためのダークパターンの典型例である。

NTTドコモ・KDDI

NTTドコモとKDDIは2021年、NTTドコモは解約手続きページに「検索避けタグ」を設定していたことが発覚し、総務省から指摘を受けた。検索避けタグを使用することで、ユーザーが解約手続きのページを検索エンジンで見つけにくくし、解約を困難にする。

この手法は、ユーザーの意図に反してサービスを継続させるためのダークパターンの一例であり、消費者の権利を侵害する行為として問題視された。なお、現在このタグは削除されている。

なぜタークパターンはなくならないのか

ダークパターンはユーザーを意図的に誤導し、多くの問題を引き起こしている。それにもかかわらず、これらの手法は依然として広く使われている。ここでは、ダークパターンがなくならない理由を4つの観点から深掘りする。

企業側に短期的なメリットがある

ダークパターンは、企業にとって短期的な経済メリットをもたらす。例えば、ユーザーが意図せずに有料サービスに登録されることで、企業は収益を増やせる。また、広告クリック数を増やすために誤タップを誘導するデザインも、広告収入を増加させる手段として利用される。

これらの手法は、短期的には企業の利益を最大化するが、長期的にはユーザーの信頼を損ねるリスクがある。

ユーザーが気付いていない

多くのユーザーは、ダークパターンに気付いていないか、気付いても無関心である。例えば、複雑なプライバシー設定や解約手続きに対して、ユーザーは面倒だと感じてそのままにしてしまうことが多い。

また、誤タップを誘導する広告に対しても、ユーザーは単なる操作ミスと捉えてしまう。このように、ユーザーの無関心や見過ごしが、ダークパターンの継続を助長している。

自覚がないまま行われている場合も多い

ダークパターンは、企業が自覚しないまま行っている場合も多い。マーケティングとして効果的とされる手法とダークパターンの線引きが難しいため、意図せずにユーザーを誤導するデザインが採用されることがあるのだ。

例えば、ユーザーの注意を引くためのポップアップ広告が、結果的にユーザーの操作を妨げるダークパターンとなることがある。このようなケースでは、企業側の意識改革が求められる。

法律での取り締まりに限界がある

ダークパターンを直接的に規制する法律が存在しないため、取り締まりには限界がある。多くの国では、消費者保護法や広告規制法が存在するが、ダークパターンのような微妙な手法を取り締まるにはまだまだ不十分だ。

そのため、企業は法の抜け穴を利用してダークパターンを継続することが可能となってしまっている。法律の整備とともに、企業の倫理的な行動が求められる。

ダークパターンを回避するために

ダークパターンを回避するために

ダークパターンを回避するためには、消費者自身の意識向上や社会的な取り組み、企業側の責任ある行動が求められる。以下に、具体的な対策を紹介する。

消費者ができること

消費者がダークパターンに欺かれないためには、まずその存在を知ることが重要だ。ダークパターンの手法や例を学び、怪しいデザインや操作に対して警戒心を持つことが第一歩となる。

また、利用規約やプライバシーポリシーをよく読み、必要以上の情報を提供しないようにすることも大切である。広告ブロッカーやプライバシー保護ツールを活用し、不要な広告や追跡を防ぐことも有効だ。消費者が賢く行動することで、ダークパターンの被害を減らすことにつながる。

日ごろから、WEBサイトや広告のデザインの裏にある企業側の意図を考える習慣をつけることで、ダークパターンやフィルターバブルの現象を冷静に俯瞰することができるだろう。

社会的な取り組み

ダークパターンを根絶するためには、法整備が必要であるが、現実には難しい面も多い。例えば、米国では2021年にカリフォルニア州の消費者プライバシー法(CCPA)が施行され、消費者のオプトアウト(会員からの脱退)を実質的に妨害するダークパターンを禁じる法案が導入された。しかし、こうした法整備は一部の地域に限られており、他の国や地域でも同様の対応が求められる。

また、消費者保護団体やNGOが積極的に活動し、企業の不正行為を監視することも重要である。社会全体での取り組みが、ダークパターンの抑制には不可欠だ。

企業側の取り組み

企業がダークパターンを回避するためには、サービスの設計担当者だけでなく、組織全体での対策が必要だ。ユーザーの信頼を失うことは、長期的なビジネスにとって大きな損失となる。企業は透明性のあるデザインを採用し、ユーザーに対して誠実な情報提供を行うべきである。

また、内部監査や第三者機関による評価を受けることで、ダークパターンの使用を防ぐ方法もある。倫理的なデザインを追求することで、ユーザーの信頼を得ることは企業にとってもメリットが大きい。

まとめ

ユーザーを意図的に誤導するデザイン手法であるダークパターンは、今後より一層問題視される可能性がある。ダークパターンの使用を減少させるためには、消費者のITリテラシー・情報リテラシーの向上や法整備の進展、企業の倫理的な行動が進むことが求められる。つまり、企業は短期的な利益にとらわれず、消費者と長期的な信頼構築を目指すことが重要とされるのだ。

ダークパターンの根絶には時間がかかるかもしれないが、持続可能なデジタル社会の実現に向けて取り組むべき問題でもある。

参考記事
ダークパターンとは|国民生活センター
「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?|独立行政法人国民生活センター
通信販売での定期購入(各種相談の件数や傾向)|独立行政法人国民生活センター
消費者操る「ダークパターン」 国内サイト6割該当|日本経済新聞
Facebookによる電話番号の取り扱い問題、FTCが申立書で主張か|CNET Japan
Amazonが12億円の罰金に!消費者を欺くダークパターンの事例|Dark Patterns
検索時の解約手続ページの非表示について|総務省

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