グローバルサウスとは?定義や問題点、インドやブラジルなど代表的な国の動き、日本の動向などを解説

グローバルサウスとは?

グローバルサウスとは、主に南半球にあるアジアやアフリカ、中南米などの発展途上国や新興国の総称のこと。国連に加盟する新興国グループ「G77」に属する国が多く含まれており、明確な定義はないが、「人口急増」や「旺盛な購買意欲」などによって今後国が大きく発展する可能性があるとされる。

これまで世界を分断してきた資本主義でも社会主義でもない、中立的な立場を取っているのも特徴。時には資本主義国側に、時には社会主義国側につくという柔軟な姿勢で、世界での存在感を強めている。

冷戦時代にも「第三世界」という総称が使われたが、グローバルサウスは現代の世界事情に即した「第三世界」あるいは「第三極」とも言われる。

グローバルサウスの代表的な国・地域

一般的にグローバルサウスに属しているとされる国や地域をエリア別に紹介する。

エリアグローバルサウスに属しているとされる国や地域
アジアインド、インドネシア、北朝鮮、マレーシア、モンゴル、パキスタン、フィリピン、タイ、など(※中国を含める場合と含めない場合がある)
太平洋フィジー、サモア、など
中東サウジアラビア、エジプト、イラン、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、など
アフリカ南アフリカ、エチオピア、ケニア、リビア、ナイジェリア、など
中南米ブラジル、アルゼンチン、チリ、キューバ、ペルー、ウルグアイ、など
ヨーロッパボスニア・ヘルツェゴビナ、など

どの国がグローバルサウスに属するかは明確には定義されていないが、2023年1月に開催された「グローバルサウスの声サミット」に参加した125カ国、新興国グループ「G77」の約130カ国、冷戦時代に「第三世界」と言われた国などが主に属している。

グローバルサウスが注目されている理由

グローバルサウスが注目されている理由

グローバルサウスが世界で注目されている理由について、代表的な3つを紹介する。

人口が増加傾向にある

少子高齢化社会が訪れている先進国に比べて、開発途上国や新興国は年少人口の割合が大きく、今後人口が爆発的に増加する可能性がある。2050年には、世界人口の3分の2をグローバルサウスが占めるという推計もある。

またグローバルサウスに属する国の多くは、生産年齢人口(15歳〜64歳)が従属人口(14歳以下と65歳以上の合計)の2倍以上となる人口ボーナス期を迎えているともされる。

そのため今後はさらに労働力が増加し、個人消費が活発になることで、市場が急激に拡大するといった潜在的な可能性を秘めている。

インフラの投資先となっている

開発途上国や新興国は経済発展が遅れており、インフラ整備が追いついていないケースが多い。そのため自国の発展が頭打ち状態の先進国において、資金援助や技術支援などの投資先になっている。

グローバルサウス各国に投資を行うことで自国の経済が活性化されるだけではなく、将来的な見返りも期待できる。また、グローバルサウス各国の経済が発展することで、自国にとって有益な取引につなげられるという思惑もあるとされる。

自国の利益を優先して立ち位置を決めている

グローバルサウス各国は資本主義国でも社会主義国でもなく、独自の立場を貫くことで優位な立ち位置を確保している。中立な立場をとることで対立や紛争に巻き込まれないだけではなく、どちらとも友好な関係を築くことで経済的な恩恵が受けられるという思惑があるからだ。

国連などの国際的な機関で投票が行われる際、賛成に回るのか、反対に回るのか、グローバルサウス各国の意向は無視できないほど大きな規模になっている。そのため、資本主義国側も社会主義国側も、グローバルサウスの動向に注目せざるを得なくなっている。

グローバルサウスが抱える問題

グローバルサウスは大きな可能性を秘めている反面、開発途上国・新興国という事情から、政情不安やインフラ整備不足、衛生問題といった課題を抱えている。そのため、貧困問題や環境問題、人権問題などが生まれやすいという背景もある。それぞれについて具体的に解説していく。

貧困問題

多くの開発途上国は失業率が高く所得水準が低い上、政情不安を抱えていることから社会保障制度も整っていないことが多い。そのため貧困状態にある国民が多い。実際、世界の貧困者はアフリカ大陸や南アジアに集中しているとされる。

貧困は経済格差だけではなく、教育格差を生み出し、さらに衛生問題や人権問題の根幹になっているケースも多い。

環境問題

開発途上国では工業化を進めるにあたって森林伐採などが行われ、自然環境を破壊するなどの環境問題を引き起こすことが一般的だ。経済発展を優先するため、環境政策が後回しになるからだ。

経済発展優先の政策は水質汚染や水資源の枯渇、大気汚染、生物多様性や生態系の損失などにもつながり、これらはグローバルサウス各国だけではなく、やがて先進国を含めた地球環境全体に悪影響を及ぼしていくと考えられる。

人権問題

開発途上国では人権意識が成熟しておらず、法整備も進んでいないケースが多い。そのため人権侵害にあたるような低所得による労働に加え、強制労働や児童労働が行われることもある。

また政情不安から、政治的な弾圧が人権侵害につながっているケースもある。伝統的または宗教的な思想によって女性が差別を受けたり、暴力を受けたり、望まない制度に虐げられることも報告されている。

グローバルサウスの代表的な国々の動き

グローバルサウスの代表的な国々の動き

グローバルサウスの代表的な3つの国の特徴と、具体的な動きについて紹介する。

インド

インドは、グローバルサウスにおいてリーダー的な存在にある。2023年には、20カ国・地域(G20)議長国として「グローバルサウスの声サミット」の開催を主導した。結果、120を超える開発途上国や新興国が参加することになった。

クアッド(日米豪印戦略対話)では、日本やアメリカ、オーストラリアとの関係を強化。その一方、ウクライナ侵攻時にはロシアとの関係を深め、原油を安価で輸入するなど自国に有利な条件を引き出すことに成功している。

ブラジル

南アメリカ大陸で最大の経済規模をもっているブラジル。2024年のG20議長国として発言力を強め、世界での存在感を高めている。

またインドと共に、中国、ロシア、南アフリカの新興5カ国で構成される新興経済圏・BRICS(ブリックス)の一員として知られる。BRICSは西側諸国の世界秩序に対抗するため拡大路線を進めており、2024年1月にはエジプト、イラン、エチオピア、アラブ首長国連邦、サウジアラビアが新たに加盟して10カ国に拡大。加盟に名乗りを挙げている国も多く、今後も拡大が続くと見られる。

南アフリカ

アフリカを代表する新興国と言われる南アフリカも、インドとブラジルと同様にBRICSの一員だ。アフリカ大陸で最も経済的に発展した国で、インフラ整備は先進国並みに進んでいる。2025年のG20では、議長国も担う予定である。

豊富な資源をもとに中国やアメリカ、ドイツ、日本などの先進国との間で貿易を行っているのも特徴。世界経済に大きな影響を及ぼすと考えられている。

ウクライナ侵攻では非同盟国の立場を貫いたが、国連総会決議では6件すべてを棄権。ロシアと中国の3カ国による合同軍事演習も行っており、親ロシア派と見られている。

グローバルサウスに対する日本の動向

世界各国でグローバルサウスに対する注目が高まる中、日本でもグローバルサウスとの関係強化に向けた動向が見られる。以下、具体的な動きを紹介する。

「連携強化推進会議」の開催

日本とグローバルサウス各国との連携を強化するために、日本政府は「グローバルサウス諸国との連携強化推進会議」を開催。関係省庁を交え、経済的・政治的な協力強化に向けた戦略を検討している。

会議は、2023年10月17日に第1回、2024年6月11日に第2回を開催。第2回では「グローバルサウス諸国との新たな連携強化に向けた方針」を発表した。「グローバルサウス諸国との連携を推進することが、我が国の国益増進につながる」「グローバルサウス諸国を未来の経済社会を共に創る『共創』のパートナーと考える」といった文言が盛り込まれた。

具体的には、7月の「太平洋・島サミット」、11 月の中南米における「G20及びAPEC首脳会議」、「中央アジア+日本」対話・首脳会合の開催、日印間の相互首脳往来、2025年8月の「TICAD(アフリカ開発会議)9」の開催などを機会に、各国との関係づくりを行っていくとしている。

インドとの連携強化

日本政府は、グローバルサウスのリーダー的存在であるインドとの関係強化に努めている。2014年にはインドとの関係を「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」に格上げ。その後も両国の首脳陣が相互訪問を繰り返している。

2023年には「自由で開かれたインド太平洋」の新プランを発表。G7広島サミットでは議長国である日本がインドのモディ首相を招待し、訪日した際は「日印首脳会談」や「日米豪印首脳会合」を実施している。

ASEANとの連携

日本政府は、加盟はしていないものの、東南アジア10か国からなるASEAN(東南アジア諸国連合)との関係強化も重視。2023年は、日本とASEANの関係成立から50周年の節目の年を迎えた。この間、ASEANは日本にとって東南アジア地域で最大の投資先である一方、ASEANにとっても日本は第4の貿易相手国となっている。

また経済による連携だけではなく、社会課題などを通じてより良い暮らしのためのパートナーという位置付けもしている。東南アジア諸国の成長は著しいものの、都市化や高齢化、エネルギー問題、防災、環境、医療・介護といった社会課題にも直面。これらの課題を克服しながら経済発展を遂げている経験をもとに、協力関係を強めていこうとしている。

日本企業の積極的進出

インフラ整備の進んでいないグローバルサウス各国に、日本企業が積極的に進出している。代表例は、日本の新幹線システムを採用したインド高速鉄道だ。この計画は、2026年に開業する予定で進んでいる。

これまで、日本はODA(政府開発援助)を主体としてインフラ輸出を行っていたが、貸付制度という仕組みが開発途上国や新興国のニーズには合わなくなり、民間資金の活用が主軸に変わりつつある。そのため2018年には「海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律(海外インフラ展開法)」を策定。官民連携による日本企業の海外進出を推進している。

投資商品の開発

新興国市場をターゲットにした投資商品も増えている。メリットはハイリターンが望めること。ただし値動きが荒く、流動性の低さも指摘されており、ハイリスクという特徴もある。

グローバルサウスの株式に関する金融商品には、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「SMT グローバルサウス株式インデックス・オープン」(2024年7月販売開始)、SBIアセットマネジメントの「EXE-i グローバルサウス株式ファンド」(2023年10月販売開始)などがある。

まとめ

ウクライナ危機においてグローバルサウス各国の動向が注目を集めたように、今後も国際秩序の観点から中立的な立場をとるグローバルサウスの存在感はますます大きくなることが想定される。

西側諸国からすると、グローバルサウスの支持が弱まると、経済だけではなく環境問題や人権問題などの国際秩序の維持が難しくなる。世界の分断はさらに強まり、目指している方向性が狂う可能性も出てくる。

日本政府には、資金力や技術力などを駆使し、グローバルサウス各国との連携をさらに強めていくことで、世界での存在感を高めていこうという思惑があると考えられる。このように世界の中で大きな影響力を持ちつつあるグローバルサウス各国と、日本を含む先進国はどのように連携していくのか注視していくことで、世界の勢力図も見えてきそうだ。

参考記事
最近のインド情勢と日インド関係|外務省
グローバルサウス諸国との連携強化推進会議|内閣官房
インフラシステム海外展開の推進
ウクライナ危機で存在感増す「グローバルサウス」①|三菱総合研究所

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