カーボンオフセットとは
カーボンオフセットとは、企業の経済活動などから排出されるCO2のうち、努力しても削減しきれない分を、他の吸収・削減活動に取り組んだり、CO2の削減活動への投資などで埋め合わせること。
具体的な取り組みとして、植林活動などによって森林を保護することでCO2の吸収を促進したり、国の認証制度であるJ-クレジットなどのシステムを通じてCO2を売買する方法などがある。これらの活動によって、地球全体の温室効果ガス排出量を総合的に減らし、地球温暖化を抑制することが目指される。
カーボンニュートラルとの違い
カーボンオフセットと類似する概念として、カーボンニュートラルという考え方がある。
カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること。つまり、事業者は排出したCO2を植林など自社内の活動によって埋め合わせることで、CO2の排出量を実質ゼロにすることを目指す。パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、2050年までにカーボンニュートラルを達成する必要があるとされている。
一方、カーボンオフセットは、自社内で削減しきれなかった分のCO2を、排出削減活動へ投資することで埋め合わせをするものである。どちらもCO2の排出を実質ゼロにすることを目指す概念であるが、取り組みの手法に相違がある。また、カーボンオフセットは世界規模で「カーボンニュートラルを目指す」ために、企業ができる取り組みの一つでもある。
カーボンオフセットの仕組み
カーボンオフセットは次の3ステップをふまえて取り組む。
Step1.排出量の把握
事業者は自らの排出活動を評価し、算定する範囲を定めたうえで、温室効果ガスの排出量を算出する。
直接的な排出(Scope1&2)だけでなく、間接的な排出(Scope3)も含め、事業全体およびサプライチェーンをを可能な限り網羅することが重要だ。
Step2.温室効果ガスの削減
カーボンオフセットを実施する前に、温室効果ガスの排出量を削減する努力を行う必要がある。これには、自社の削減活動の実施だけでなく、製品やサービスのエネルギー効率の向上の促進や、公共交通機関の利用の推奨などが含まれる。
Step3.カーボンオフセットの実施
削減努力にもかかわらず排出を完全に削減できない温室効果ガスに対し、国が認証したクレジットシステムを使用してオフセット(埋め合わせ)を行う。削減できなかったCO2排出量に応じて、クレジットを購入し、それらのクレジットを無効化して証明手続きを実施する。これらのプロセスは、自社で実施することもサービスプロバイダーに委託することも可能。
Jークレジットの活用方法
カーボンオフセットの具体的な方法として、J-クレジット制度の活用があげられる。
J-クレジット制度は、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が認証する仕組みであり、環境省、農林水産省、経済産業省が共同で運用している。この制度は、2008年に創設された「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を発展させ、2013年から開始された。J-クレジットは、製品やサービス、イベントと組み合わせて活用することができ、環境への貢献を目に見える形で示す手段として注目されている。

J-クレジットを発行するには、森林保護などの温室効果ガスの削減・吸収に関連する活動を行い、その成果が国の基準や要件を満たしていることを認証される必要がある。認証された活動に基づき、クレジットが発行される仕組みだ。発行されたクレジットは、企業や団体が購入することで排出削減・吸収活動を資金面で支援し、環境と経済の循環を促進できる。
ただし、認証や発行の手続きは煩雑で時間がかかることがあり、この点が利用を妨げる一因となっている。また、クレジットの発行が追いつかず、購入需要が増えすぎるリスクも懸念されている。時間がかかったりするなどの問題があり、発行が増えず購入ばかりが増えないかといった危惧も一部でされている。
カーボンオフセットのメリット
カーボンオフセットの取り組みにより温室効果ガスが削減され、地球環境保護への効果が期待される。現在、地球温暖化は進行しており、温暖化防止に向けたさまざまな対策が講じられているが、気温や海面水位の上昇は依然として続いている。
たとえパリ協定の目標である気温上昇を2℃以内に抑えることができたとしても、21世紀末には日本の気温が約1.4℃上昇し、日本沿岸の海面水位も約0.39メートル上昇すると予測されている。異常気象や生態系の変化など、地球温暖化が引き起こす多くの問題に対して、全世界が一丸となって抑制策を講じる必要があり、カーボンオフセットはその一つの有効な取り組みとなる。
また、企業や団体がカーボンオフセットに取り組むことは、製品・サービスの差別化やイメージアップにもつながるだろう。
カーボンオフセットの問題点
カーボンオフセットにはデメリットや問題点も存在する。主に以下の2点から、「カーボンオフセットは意味がない」といった批判がある。
排出削減量や吸収量の算出方法が不透明である
排出削減量や吸収量の算出は非常に難しく、計算方法が不透明な部分があることは否めない。利用を検討する際には、以下のポイントを確認することが重要である。
- 第三者機関によって認証されているか
- 団体が透明性のある情報公開を行っているか
- 団体が実績のあるプロジェクトを実施しているか
透明性の高い信頼できる団体を選び、カーボンオフセットに取り組むことが求められる。
削減努力を怠り、資金で解決している
カーボンオフセットの仕組みは、温室効果ガスの削減努力を怠り資金力で解決するものだと批判されている面がある。
この批判を乗り越えるために、事業者はまずは温室効果ガスの削減にむけて最大限に努力を行い、どうしても削減が難しい部分だけにカーボンオフセットを適用するべきである。
カーボンオフセットの取り組み事例
企業の取り組み事例
企業が行うカーボンオフセットの事例を2つ紹介する。
1.住友林業

住友林業は、個別住宅の建築にともなうCO2排出量を、インドネシアの荒廃地に植林することでカーボンオフセットしている。建築した住宅の延床面積の2倍に相当する植林を行うことで、年間約6万トンのCO2がオフセットされる見込みであり、事業期間は14年にわたる。
この取り組みは、環境省から「第1回カーボン・オフセット大賞」奨励賞を受賞している。
2.キャノン
キャノンは、製品の原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で環境への影響を「見える化」するため、CFP(カーボンフットプリント)を導入している。これにより、温室効果ガスの排出量を商品やサービスにわかりやすく表示し、カーボンオフセット対象製品の認証も行っている。
カーボンオフセットに関するこの取り組みは、J-クレジット制度を通じて実施している。
個人ができる取り組み事例
個人がカーボンオフセットに取り組める身近な例を紹介する。
1.ローソン
ローソンでは、複数の方法で参加できる「CO2オフセット運動」を展開している。
- 会員ポイント(Pontaポイント)を使用してCO2をオフセットする
- 店頭のマルチメディア端末「Loppi」でCO2オフセットを行う
- ローソンと各メーカーが共同開発した排出権付き商品の購入
これらの運動を通じて、多くのお客様が参加している。これまで参加した顧客数は3,875万人、オフセットされたCO2の量は3万tを超える。(2023年2月現在)
2.JAL
JALでは、航空券を購入する際、自身のフライトによるCO2排出量と同量のCO2をオフセットする資金を追加で支払うことができる。公式サイトでフライト区間を入力すると、推定される排出量とそのオフセットに必要な金額が表示される。この資金は、JALが選定した信頼性の高いCO2削減・吸収プロジェクトに寄付される。
航空機による温室効果ガスの排出量は、全世界の排出量の約2%を占めており、無視できない規模である。航空業界では、省燃費機材の導入や代替燃料の開発などの対策が進められているが、旅客自身が参加できるカーボンオフセットの取り組みも同時に推進している。
まとめ
2015年のパリ協定以降、世界中で温暖化対策に関する取り組みが活発になっている。特に、2050年までに世界規模でカーボンニュートラルを達成することが必要となる中、達成のためのひとつの手法としてカーボンオフセットは活用され始めている。
本質的な問題解決につながらない、などの批判もある。だが、より多くの業種やセクターがカーボンニュートラルに向けて共に進むために、有効に活用することができる方法でもありそうだ。
【参考記事】
国土交通白書2021
J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて|環境省
カーボン・オフセット|農林水産省
カーボン・オフセットガイドラインVer.3.0|環境省
カーボンオフセット協会
クレジット活用事例一覧|環境省
住友林業における環境配慮への取組み|住友林業
キャノンのカーボンオフセットの取組み|キャノン
CO2オフセット運動|ローソン
カーボンオフセット|JAL
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