カミングアウトとは?カミングアウトの難しさやリスク、アウティングとの違いを知る

カミングアウトとは

カミングアウトとは、LGBTQ+の当事者が、自身の性的指向や性自認について、周囲に明かすこと。逆に、LGBTQ+の当事者が、周囲に自分の性的指向や性自認について公表しないことをクローゼットという。

日本でLGBTQ+の当事者のうち、何%がカミングアウトをしているのか、という正確なデータは存在しない。しかし日本に住む人のうち、約3%〜約10%がLGBTQ+であるにも関わらず、「自分の周りにはLGBTQ+の人はいない」と認識している人の多さを鑑みると、まだまだカミングアウトのハードルが高いことが伺える。

カミングアウトは必要? 

カミングアウトをしたいかどうかは、その人の性格や環境、相手との関係によって変わってくるだろう。

例えば、年末年始に実家に帰るたびに「彼氏いないの?」「いつ結婚するの?」と親戚や親から聞かれるレズビアンの女性がいたとする。上記の質問をはぐらかすことに気疲れした彼女は、カミングアウトを決意する。このように、カミングアウトをしなければ自分を偽らざるを得ない状況に追いやられた際にカミングアウトを決意することは珍しくない。周囲の人に嘘をつかなければならない状況から脱して、気楽に生きるために、カミングアウトが必要だという人は少なくないのだ。

カミングアウトすることで生きやすくなる人はたくさんいる。自分の性的指向や性自認について迷いがあったり、家族に受け入れてもらえるか不安だったりする人の場合、カミングアウトをし、周囲の人に受け入れてもらったことで、安心感を得られるケースも多い。

普通に会話しているだけでもカミングアウトと言われるケースもある

また、カミングアウトするぞ、と意気込んで話したわけではない普通の会話が、周囲の人から「カミングアウトだ」とみなされるケースもある。

例えば、以下の会話がその一例だ。

女性「A君って彼女いるの?」
男性「いや、いないっすね。彼氏はいますけど」
女性「え、そうなんだ!?」

この男性は、ただ日常会話をしただけ、というつもりかも知れない。しかし、相手の女性は、「カミングアウトされてしまった」と感じる可能性がある。

LGBTQ+にヘイトを向ける人の中には、「LGBTQ+が存在するのはいいけど、いちいちカミングアウトをしないでほしい」という人がいる。しかし、それは不可能なことだ。なぜなら、それは、LGBTQ+の人たちに「普通の会話をするな」と言っているのと同じことなのだから。

カミングアウトの難しさとリスク

LGBTQ+の当事者にとってカミングアウトすることが、100%自身の生きやすさにつながるのであれば、全員がカミングアウトするはずだろう。しかし、現実はそうではない。多くのLGBTQ+当事者が、家族や恋人、会社の同僚、友人などにカミングアウトできず、クローゼットの状態にある。なぜか。リスクが存在するからだ。

1 家族との関係悪化

LGBTQ+に対する理解は年々進んできていると言っても、年配者の価値観がそう簡単に変わるわけではない。中には、LGBTQ+に対して否定的な考えを持つ人もいる。そういった家族がいる場合、カミングアウトは家族との関係悪化や断絶のリスクを伴うものになる。

2 学校や職場で差別される

学校や職場などで、カミングアウト後に嫌がらせやいじめを受けるケースもある。また、保守的な会社に勤めている場合、昇進が阻まれるなど、待遇面で不利益を被るケースもあるのだ。

3 プライバシー侵害

一人だけにカミングアウトしたつもりが、勝手に他の人にもバラされる、いわゆるアウティングの被害に遭う可能性もある。

4 不快、または無理解な言葉をかけられる

LGBTQ+であることをカミングアウトした後、不快な言葉をかけられるケースもある。

例えば、レズビアンの場合、「どうやってセックスするの?」など、異性愛者には決して簡単には聞かないような言葉が投げつけられることもある。ゲイの場合、「もったいない!女の子からモテそうなのに」といった言葉をかけられるのも「あるある」だ。「もったいない」と言った人には悪気はなく、むしろ「モテそう」と誉めているつもりなのだが、異性愛者に対して「同性が好きじゃないなんてもったいない」とは言わないだろう。つまり、上記の言葉は、異性愛者の方がいい、という価値観を当然だと考えているからこそ出てくる言葉だと言える。

LGBTQ+であることをカミングアウトした後に、こういった無理解な言葉をたくさんかけられ疲弊した結果「カミングアウトしない方が良かったかも」と後悔するケースもある。

カミングアウトされたら、どうしたらいい?

LGBTQ+のいずれかであることをカミングアウトされた際、「どのように対応すれば相手を傷つけないだろうか」と悩む人は多いだろう。

LGBTQ+に対して学びを深め、偏見や誤解に基づいた言動をしないように心がけることが重要だ。しかし、それ以前に、ひとつだけ絶対にしてはいけないことがある。それは、アウティングだ。

アウティングとは、本人の同意なく、他人がその人の性的指向や性自認を暴露する行為のことだ。2015年に起こった一橋大学アウティング事件をきっかけにアウティングという言葉を知った、という人も少なくないだろう。

一橋大学アウティング事件とは?

一橋大学アウティング事件とは、2015年に一橋大学に在籍していた男子大学生のAさんが、友人男性Bさんに恋愛感情を抱いていることをカミングアウトし、Bさんが他の学生たちにAさんがゲイであることをアウティングしたことに端を発する事件だ。Bさんは友人10人のいるLINEグループにAさんがゲイであることを書き込んだ。結果、Aさんは自分の性的指向が公にされたことにショックを受け、一橋大学のキャンパス内の建物から飛び降り自殺を行い、亡くなったのだ。

Aさんの残した遺書に、BさんのアウティングがAさんを追い詰めたことが綴られていたため、この事件をきっかけにアウティングの問題が公に議論されるようになった。

一橋大学アウティング事件の判決。アウティングの違法性に言及

Aさんの遺族は大学およびBさんに対し訴訟を起こした。2020年、東京高裁は請求は棄却したものの「アウティングは人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害する許されない行為」と認定した。この判決は、アウティングの違法性に言及した初めての判決となった。

現在、アウティングは侮辱行為でありSOJIハラスメント(性的指向や性自認に関するハラスメント)であるとして、パワハラ防止法などに基づき、違法とされる可能性がある行為だと認められている。

カミングアウトをサポートするためにできること

カミングアウトをサポートするためにできること

現代はLGBTQ+に対する差別や偏見があるため、カミングアウトにはリスクが伴う。それゆえ、カミングアウトを強制することはすべきではない。しかし、カミングアウトしたいと思っている人たちが、カミングアウトしやすい雰囲気を作ることは必要だろう。

1 アライだと示す

LGBTQ+の当事者ではないけれど、LGBTQ+をサポートする意思のある人のことをアライという。例えば、レインボープライドに参加したり、LGBTQ+に対するヘイト発言をしている人を注意したりするなど、行動でアライであることを示していけば、「この人にならカミングアウトしてもいいかも」と安心感を持ってもらうことができるだろう。

2 国や企業で支援する

現在、さまざまな企業ではLGBTQ+の従業員を歓迎する動きを取り入れている。例えば、同性同士のカップルに結婚祝い金出す企業もある。LGBTQ+フレンドリーな企業であることを公にしておけば、会社内でのカミングアウトのハードルも下がるだろう。

また、国ができることも多い。2023年6月、「LGBT理解増進法」が施行された。しかし、この法律はさまざまな点で十分ではないと批判されている。第一に、当初盛り込まれる予定だった、差別禁止が明記されていない。第二に、当事者が差別された際などの罰則が明記されていない。そもそも差別を禁止するための法律だったはずが、これでは何の意味もない、と言う人もいる。こういった現状では、当事者が安心してカミングアウトできる空気の醸成には程遠いと言えるだろう。

差別をなくし、カミングアウトしやすい社会を作るためには、LGBTQ+に対する差別禁止を明言した法律が不可欠だ。

さいごに

カミングアウトは、多くのLGBTQ+当事者にとって自己受容の一歩になり得る。しかし現状、日本ではカミングアウトは必ずしも容易ではなく、時には大きなリスクを伴う。

誰もが安心して暮らせる社会の実現のためには、個人、企業、国がそれぞれのレベルでLGBTQ+に対する差別や偏見をなくす方法を考える必要があるだろう。

参考記事
Tokyo Rainbow Pride
暴露が「いかに相手の居場所を奪うか」 一橋大院生の転落死から8年、全国に広がるアウティング禁止条例|東京新聞

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