アドボカシーとは・意味
アドボカシーとは、さまざまな理由によって本来持っている権利を行使できない人に代わって主張したり、支援する活動を指す。
世界には貧困や差別で苦しむ人がいるほか、高齢者や障害者、子どもなど声を上げにくい環境に置かれている人もいる。そのため、社会的な活動のほか、介護や看護などのさまざまな分野でアドボカシーは行われている。特に、SDGsや人権問題に対する意識の高まりによって、一般市民の間でもアドボカシーへの注目度が高まっている。
なお、アドボカシー(advocacy)とは「擁護」「支持」という意味で、支援したり、実践する援助者や協力者などはアドボケイトやアドボケーターと呼ばれている。
アドボカシーが求められている理由
貧困状態の人や差別を受けている人は、自分が不利益を受けていること自体を知らないケースがある。また、厳しい環境にいると分かっていても、逃げ出したり、反対の声を上げることができない人もいる。
一方、高齢者、障がい者、子どもといった社会的に立場が弱い人たちは、知識が不十分であったり、行動力がなかったり、それを伝える発言の機会がないことが多い。問題点を見つけて解決に向けて動くには、協力者がいないと困難な状況にあると言っていい。
声が上げられないのにはそうした事情がある上、当事者だけで意見をまとめると客観性が低くなるという懸念もある。そのため、意見を代弁したり、状況の改善に向けた活動を主導して政府や世界、世間に訴えるには、アドボカシーが適していると考えられている。
アドボカシーが注目されたきっかけ
日本においてアドボカシーが注目されるきっかけとなったのは、2005年に行われた「ほっとけない世界のまずしさ」というキャンペーン。2000年に行われた国連サミットで、貧困の撲滅や人権の尊重などについて議論されたことが発端となっている。
国連サミットの流れを受けて、「世界の貧困をなくす」ことを目的に各国でキャンペーンが行われたが、この活動の象徴となったのが手首に付けたホワイトバンド。日本で行われた「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンでは、タレントやアーティスト、スポーツ選手などがホワイトバンドを巻いて、貧困や飢餓などに苦しむ人に代わって政策の変更などを含め問題の解決を求めた。
このキャンペーンをきっかけに、日本でもアドボカシーが注目されるようになり、さまざまな活動で取り入れられるようになっている。
アドボカシーの代表的な活動

アドボカシーは主張ができない人たちに対して擁護や支援をすることだが、そのための方法がいくつかある。ここでは、代表的な4つを紹介する。
政策提言
政策提言は、アドボカシーの代表的な活動の一つ。人々が苦しむ課題を解決するには個人の力ではなく、法律の制定や改正が必要なことがある。そのための政策の立案や変更などを政府や行政に提案することを指す。
例えば日本ユニセフ協会では、2010年に「児童ポルノがない世界を目指して」国民運動を開始。官民が参加する「児童ポルノ排除対策推進協議会」などの活動を経て、2014年には「児童買春・児童ポルノ禁止法」が改正されている。
ロビイング(ロビー活動)
ロビイングとは、政府や国際機関などに対して行われる活動のこと。自分たちの主張を受け入れてもらうよう影響力がある人に働きかける活動で、アメリカの議員がロビー(控室)で意見を聞いていたことが由来だ。
日本ではあまり馴染みはないが、現場の声を届けるのに有効な手段の一つでもある。アドボカシーだけではなく、企業が自社の商品やサービスを有利に展開できるように行ったり、オリンピックの招致などでも行われている。
権利擁護
権利擁護とは、本来得られる権利が侵害されていながら、それを主張することが難しい人を守ることを指す。アドボカシーの本来の意味である「擁護」や「支持」を表す活動だ。
子どもや高齢者、障がい者だけではなく、病気療養中の患者、DVに遭っている人などもその対象になり得る。そのため看護師や介護士、教師、弁護士、ソーシャルワーカーなどが、アドボケイトやアドボケーターという役割を果たすことになる。
イベント・キャンペーン
市民への働きかけとして主に行われるのが広報活動やイベント、キャンペーンの開催だ。政府や行政を直接動かすのが政策提言やロビイングなどだが、イベントやキャンペーンを通して一般市民に訴えることで世論を形成していくことができる。政策提言やロビイングなどと並行して行われることもあるが、最終的には政府を動かすことにつながる。
このようなアドボカシーによって、社会的な課題が解決されたり、問題が好転している事例は多い。
アドボカシーが実践されている分野

さまざまな分野で行われているアドボカシーだが、以下の身近な5つの分野についてどのように行われているか紹介する。
福祉・介護
福祉や介護の現場では、自分の意思をうまく伝えることができない高齢者や障がい者、患者などが数多くいる。福祉や介護の現場におけるアドボカシーとは、そうした人たちに代わって援助者が意思や権利を伝えたり、要求を満たすことを指す。
また、それぞれの状況から問題点を見つけ出し、適切なサービスを見つけるなどで解決する仕組みを構築することも含まれる。そのためアドボカシーは、ソーシャルワーカーの社会福祉援助技術の一つとなっている。
看護
看護の現場でも、同様に患者の権利擁護や代弁という意味で用いられている。日本看護協会「看護師の倫理規定」(1988年)には「患者の権利擁護」に関して明記。看護倫理においてアドボカシーは欠かせないとされる。
具体的には、患者の安全や医療の質を維持するために、看護師は患者のアドボケーターであることが求められている。また患者の権利を擁護しつつ、人間としての尊厳やプライバシーを尊重することも必要とされる。
子ども
子どもは「子どもの権利条例」によって権利が保障されている一方、社会的弱者に含まれ、意見が言いにくい立場にある。そのため家庭や学校を含む社会そのものが、子どもの声を十分に吸い上げていないとされ、子どもを取り巻く環境にアドボカシーは欠かせない。
これまで児童労働や児童ポルノ、児童虐待など、子どもの人権を尊重するための活動にアドボカシーが活用された例は多い。
市民
アドボカシーは政治や経済、社会を変革する原動力となるだけではなく、市民社会を強化するために欠かせない活動とされる。一般市民の生活にもさまざまな課題があり、それによって苦しみを覚えている人がいるからだ。
例えば、行政サービスや医療・介護サービス、教育格差、性差別などによって、不満や不安、生きづらさを感じる例は少なくない。こうした中で、市民活動家やNPO法人などの団体、市民ネットワークなどが取り組んでいる活動は、市民社会アドボカシーとも言われる。
アドボカシーを行っている団体
日本を中心にアドボカシー活動を行っている以下の団体について、活動内容や特徴などについて紹介する。
日本ユニセフ協会
ユニセフ(UNICEF、国際児童基金)は、世界中のすべての子どもの命と権利を守るために活動する団体。日本ユニセフ協会は、ユニセフ本部との協力協定に基づいて広報活動やアドボカシー活動(主に政策提言)などに取り組んでいる。
「子どもの権利条約」の日本政府による批准をはじめ、子どもへの暴力撲滅キャンペーン、虐待死ゼロを目指す法改正の署名活動、人身売買や商業的性的搾取をなくすキャンペーンなど、子どもの権利を守るための活動を行っている。
ワールド・ビジョン・ジャパン
ワールド・ビジョンは、子どもの健やかな成長に寄与する活動を行う国際NGOだ。「開発援助」「緊急人道支援」「アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)」を活動の3本柱に置いている。
アドボカシー活動では、特にSDGsや子どもの権利、子どもに対する暴力、教育、栄養・保健、紛争・難民などの分野に力を注いでいる。5歳以下で亡くなる世界中の子どもを救う「Child Health Now!アクション!救えるはずの命のために」などのキャンペーンを実施し、成果に結びつけている。
グッドネーバーズ・ジャパン
グッドネーバーズ・ジャパンは、国際NGOであるグッドネーバーズ・インターナショナルの一員。世界が抱える課題に取り組むことで、子どもの環境改善を目指している。
教育の問題に取り組むNGOのネットワーク組織「教育協力NGOネットワーク」に加盟しており、連携しながら政策提言活動や広報活動などを行っている。また市民への説明責任を果たすため、活動報告会において現状を報告している。
SDGs市民社会ネットワーク
SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)は、SDGsに取り組む日本のCSO(市民社会組織)やNGO、NPOのネットワーク組織。「政策提言活動」「地域や他セクターとの連携の促進」「SDGsの普及啓発」などの活動をしている。
2016年の設立以来、政府との定期的な対話を実施。市民社会の声を反映し、主流化した形で進められるよう公式・非公式に政策的働きかけを行っている。
私たちがアドボカシーを行うには
アドボカシーとは、政策提言やロビイングなどの活動が知られているが、前述したように社会的弱者の権利を擁護したり、支援することも含まれる。支援を受けたくても受けられない人は案外身近にいることもあるので、近くにいる社会的弱者を支援することもアドボカシーの一つと言える。
ただし、社会全体を大きく動かすにはNPOや市民団体などの団体が行う政策提言やロビイングが必要になる。それぞれの団体が行っている活動に募金をする、署名活動に参加する、ボランティアとして参加するといったことでもアドボカシーを行うことができる。
まとめ
世界には、困っていながらも立場や状況などによって助けを求めることができない人がいる。アドボカシーは、そうした人たちの人権を尊重し、擁護したり、支援することを言う。
SDGsとの関わりも深く、社会的弱者を救うことで誰一人として取り残さない持続可能な社会の実現に近づくことができる。つまり、社会的弱者の人権を守り、支援することが世界の不平等をなくすことにつながっていくと考えられる。こうした意識のもと、自分ができるアドボカシーの範囲を広げていきたいものだ。
参考記事
日本ユニセフ協会の主な活動—啓発・アドボカシー活動|日本ユニセフ協会
「アドボカシー活動|ワールド・ビジョン・ジャパン」
国内での活動|グッドネーバーズ・ジャパン
SDGsをめぐる日本政府の政策と市民社会のアドボカシー|SDGs市民社会ネットワーク
子どもアドボカシーとは|子どもアドボカシー学会
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