地産地消とは?メリットやデメリット、食や建築、エネルギーなど幅広い分野の取り組み事例を紹介

地産地消とは

地産地消は、地域でとれた生産物をその地域で消費することである。地域内の生産・消費を促すことで、生産者と消費者との結びつきの強化、地域の活性化を目指す。1980年代に、日本国内において食料自給率の低さが問題視されるようになったことで、この言葉が使われ始めた。2000年代に入ってからは食だけに限らず、地域内の資源を活用した加工品も地産地消の取り組みとして取り上げられるようになった。例えば古紙を再生利用したトイレットペーパー、木材の建築物への利用なども対象となる。

英語では「local food production and consumption」と表現し、海外にも同様の動きはある。代表的な例としてアメリカ・カリフォルニア州の「ファーマーズ・マーケット」では、州の法律で禁止されていた農家の直売が特別に認められ、生産者と消費者が直接結びつく機会が増加した。

第6次産業との関わり

地産地消と6次産業は相性がよく、地域経済の活性化などに対して相乗効果を発揮すると言われている。第6次産業とは、第1次産業(農林水産業)、第2次産業(加工業)、第3次産業(サービス業など)までを一貫して行うことで、豊かな資源の活用・新たな付加価値を創出する産業体制のことである。

地産地消においても、地域内で生産、加工、販売までを一括して行い、地域内で消費することを目標としている。これは第6次産業と共通する考え方で、生産効率や事業者の収益性の向上が見込まれる。

2010年には地域資源や特産品を活用して地域経済を活性化させ、新たな雇用機会の創出を促す「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化・地産地消法)も制定されるなど、6次産業化と地産地消の推進は両輪であると認識されてきている。

地産地消のメリット

地産地消のメリット

地産地消は、消費者と生産者双方にメリットをもたらす上に、エネルギー消費や食品ロスの削減など環境問題の対策にもなる。

地域経済の活性化を促す

生産者と消費者の距離が近くなることで、地域内の消費者の意見が生産者に届きやすくなり、生産者は消費者のニーズを反映した生産計画を立てやすくなる。また、流通にかかる経費も削減できることも、地域経済への還元の要因となる。さらに、6次産業を取り入れることで、農閑期や漁閑期は生産以外の加工や販売業務ができるなど、生産者の所得の向上にもつながる。

消費者の健康増進につながる

地域内で生産された食材を食べることは、消費者の健康にもポジティブな効果を発揮する。鮮度が高い食品は味が良く栄養価が高いものが多いのだ。「身土不二」という言葉に表されるように、私たち人間の体と私たちが暮らす土地は一体で、密接に関係している、という考え方がある。つまり、私たちが暮らす地域内で収穫される野菜などは、私たちと同じ気候の中で育ったものなので、その地の人々の健康にもよい影響を与えると言われている。

食品ロス削減につながる

生産者と消費者のつながりが密接になることで、規格外品や少量生産品の販売もできるようになるため、食品ロスの削減にも寄与する。野菜や果実のように新鮮な商品だけでなく、傷モノでもジュース・ジャムといった加工品にできれば、生産物を無駄なく活用できる。これは、地産地消によって生産者の顔が見えていることで実現できることでもある。

輸送にかかるエネルギー消費の削減

地産地消の推進は、輸送時に発生するCO2の削減にも貢献できる。食材が生産者から消費者の手元に渡るまでのサプライチェーン全体を通じて、膨大なエネルギーが発生する。具体的には梱包資材や輸送車の燃料、倉庫の空調管理設備など、あらゆるフェーズでCO2が発生している。

特に日本は、食料の量と輸送距離から算出されるフードマイレージが高い。2016年における日本の国民一人当たりのフードマイレージは約6,600t・kmで、イギリスの約2倍、フランスの約3倍、アメリカの約6倍と際立っている。つまり、多品目で輸入に頼る日本は輸送エネルギーを大量に消費しているのだ。地産地消を推進すれば、食料の輸送に伴うエネルギー消費を削減することができる。

地産地消のデメリット・課題

地域経済や環境、人々の健康に多くのメリットがある地産地消であるが、現行の流通制度を変えるには課題やデメリットもある。

安定生産に向けた課題がある

地域内で生産できる農産物には限りがあり、品目の充実度や安定した供給量の維持が課題となる。また、農林漁業者が加工まで行うには設備を整えるための初期費用がかかったり、委託するにしても発注ロット数が低い場合は割高で、コストパフォーマンスが悪くなる可能性が高い。そのため、安全・安心な生産物を適切な量で供給するための品質管理やマーケティング戦略を新たに計画する必要がある。

生産者の新たな負担が増加する

地域内で生産から流通までを完結させるためには、生産者は生産以外の知識や能力も求められる。例えば、商品のパッケージ化やSNS集客といった販売や宣伝を行う必要性があり、それに伴う人件費の増加も懸念される。この対策として現在、行政(第一セクター)と民間企業(第二セクター)の共同出資による事業組織体である第三セクターが増えている。道の駅の運営母体を第三セクターが担うなど、生産者をサポートする体制が徐々に進められている。

商品の価格が高くなる

輸送によるコストは削減するものの、大量生産の輸入品に価格競争で負けてしまう可能性がある。環境や健康に良いと言っても、消費者はどうしても価格が安い商品に手を伸ばしてしまう傾向がある。地産地消を促進するための行政の補助金の充実に加えて、事業者は特別な付加価値を伝えるための努力、消費者の意識の変容など、各方面での変革が必要となるだろう。

地産地消の取り組み事例

岡山県真庭市の事例
岡山県真庭市の地元食材を用いた給食 出典:JA晴れの国岡山

地産地消の具体的な取り組みとして、食材、木材、電力など多岐にわたる事例を紹介する。

地元の食材を使った学校給食(岡山県真庭市)

岡山県真庭市では、市内の小中学校で学校給食を全て真庭市産の食材で提供する「真庭食材の日」が実施された。各校で独自のメニューを考案し、地元産の食材の味覚を知ることで、郷土愛を育むことを目指している。学校給食法に、地域の生産品を積極的に給食に利用するよう記載があるように、子どもたちは地域の食文化や食に関する産業、地域の環境との関係を学ぶことが推奨されている。地産地消の推進は、このような食育の一環としても重要な役割を担うことが期待される。

地域の食材を生かしたお弁当(宮城県)

宮城県のよっちゃん農場では、無農薬で育てたお米、野菜、とうがらしといった農産品の加工を軸に、地元企業と協力して多角的に農業経営を行っている。とうがらし調味料の「よっちゃんなんばん」の製造・販売や、地元の食品企業と連携して地域の食材を活用した「農家のぬくもり弁当」を販売。これらの商品は、道の駅や直売所、併設のレストランで提供している。

アプリで地産地消を後押し(東京都東村山市)

東京都東村山市では、地産地消支援サービス「ロカスタ」を導入している。ロカスタは、地産地消商品の情報を登録者に発信するアプリで、直売所や飲食店において無料で登録できる。具体的には、農産物直売所や東村山産の農産物を使用した飲食店等の場所が地図上でわかったり、マルシェや農業体験などのイベント情報が届くなどの機能がある。地産地消を実践したい消費者のサポートになるのと同時に、生産者や販売店は地域内に広く情報を届けることができるなど、双方にメリットをもたらす。

地元の木材を使用した建築物(香川県小豆島)

香川県・小豆島でオリーブを栽培し、化粧品や健康食品の開発・販売をする小豆島ヘルシーランド株式会社は、2023年に「千年オリーブテラスfor your wellness」をオープンした。建物には小豆島産の木材・石材を使用し、施主自ら建築資材を調達。木材加工では現地のビニールハウスを利用し乾燥を行うなど、地産地消にこだわった建築を実現させた。

豊富な水資源を利用した電力発電(岐阜県郡上市)

岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)では水力発電が4機稼働中で、電力自給率は約230%に及ぶ。小さな手作り水車から始まり、大学との共同研究でらせん水車と上掛け水車を作り、規模を拡大していった。2013年に自治会長が発起人会を作り、石徹白の住民で組合を設立。県や市の補助金に加えて、集落ほぼ全戸が出資することによって、2016年に「石徹白番場清流発電所」を稼働させた。人口250人ほどの村であるが村全体で協力したことで、地域内の豊富な水資源を活用し、住民の生活に還元することに成功した。

まとめ

加工技術や輸送技術が発達し、私たちはどこにいても好きな商品を選べる便利な時代になった。しかし便利ではある一方、誰がどんな場所で作ったのか、手元に渡ってくるまでにどんな経路を渡ったのかを知るのは困難である。

地産地消の推進は、生産者と消費者が直接コミュニケーションを取れる環境を作りやすくなる。もちろん地域経済の活性化や輸送にかかる温室効果ガスの削減なども、地産地消を推し進める重要な動機であり、大きなメリットでもある。だが、自らの体を成す食材を、どこで、どのような人が作ったのか、そしてどのようなルートを辿ってきたのか、また商品に対して払ったお金がどのように循環しているのか、このように個人の生活と食や地域とのつながりを実感できることが、地産地消に取り組む最大のメリットであるような気がしている。

【参考記事】
地産地消の推進について|農林水産省
アメリカのファーマーズ・マーケットと地産地消|九州大学大学院
「フード・マイレージ」について 「フード・マイレージ」について|農林水産省
地産地消支援サービス「ロカスタ」|ロカポ
ウェルネスガーデン「千年オリーブテラスfor your wellness」のストーリー|PR TIMES
きっかけは水力発電。岐阜の小さな集落・石徹白が自治の精神を取り戻すまで|MEGURIWA

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