リファービッシュとは?サーキュラーエコノミーにおける役割や製品のメリット・デメリットなどを解説

リファービッシュとは

「リファービッシュ(Refurbish)」とは「整備する」や「修復する」といった意味を持つ単語である。中古品やジャンク品で返品されたものを修理・整備し、新品と同じように使える状態で再出荷された製品を「リファービッシュ品」と呼ぶ。リファービッシュ品は、専門の事業者が状態チェックやバッテリー確認を行い、品物に応じた修理と部品交換が行われる。そして修理後には安全性を確認し、正常に使えることを確認したうえで出荷される。

国内ではリファービッシュ品の認知度は低いものの、海外では環境配慮に対する取り組みを強化している欧米を中心に注目が集まっている。特にヨーロッパでは、スマートフォン市場の約3割がリファービッシュ品または中古品であるほどだ。ほかにもゲーム機や家電などさまざまなジャンルの製品が売られており、環境保全への意識の高さが伺える。日本でも徐々に普及しており、スマートフォンやパソコンを中心とした製品が販売されている。今後需要が高まるにつれて、取り扱うリファービッシュ品の多様化が期待される。

リファービッシュと類似する単語

ここでは、リファービッシュと似た言葉や製品との違いを紹介する。

リマニュファクチャリング

「リマニュファクチャリング」とは、使用済み製品や部品を回収し、分解・洗浄・再組立・検査を行い再び製品として販売する活動である。一方、リファービッシュは欠陥品や中古品を新品に近い状態で再出荷することを指すため、リマニュファクチャリングの方が部品のリユースや再組み立て、中古品の販売も含む広範な活動であるのが特徴である。

中古品

「中古品」とは、点検や修理をせずに現品のまま販売される製品であり、個人間取引のフリマアプリや販売サイトにてよく見られるのが特徴だ。また、保証制度がないため不具合や故障のリスクもある。一方、リファービッシュ品は修理・整備を経て新品とほぼ同じ機能をもつ商品であり、新品より安いが保証もつくことが多い。

リフレッシュ品

リフレッシュ品とは、携帯電話を販売する事業者が使用済みの携帯電話を回収し、修理・初期化したうえで新品と同じような状態で使用できるようにした製品である。リフレッシュ品は単体で販売されることはなく、通常は普段使っている携帯電話を破損・紛失した際の代替品として提供される。リファービッシュ品と同じように品質は保証されるものの、傷があったり付属品が欠けていたりする場合もある。

サーキュラーエコノミーにおけるリファービッシュの役割

サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、資源投入量と消費量を抑えて、既存の資源を有効活用しながら製品を生産し、循環させていく経済システムを指す。3R(リデュース、リユース、リサイクル)に似ているものの、サーキュラーエコノミーでは「資源を無駄にしないことを前提に製品を生み出す」ことを重視している。昨今では廃棄物増加や食品ロス問題などが深刻化しているため、世界的にサーキュラーエコノミーへの移行が目標とされている。

リファービッシュ品の活用は、既存の資源を活かしながら経済的価値を高めるサーキュラーエコノミーの形と合致している。ジャンク品や不良品をそのまま転用することでコストを抑えるのではなく、専門的な修理や整備を通して品質が保証されたリファービッシュ品を転用することで、資源を無駄にすることなく製品の価値を維持できる。このように、リファービッシュ品はサーキュラーエコノミーを実現する上で重要なポイントなのだ。

リファービッシュ品の種類

リファービッシュ品の種類

リファービッシュ品には大きく分けて「正規メーカー整備済品」と「サードパーティ整備済品」の2種類がある。

正規メーカー整備済品

正規メーカー整備済品とは、正規メーカーが製品を回収し、自社で修理・整備したものである。整備はメーカーが定めた基準で行われ、交換するパーツもメーカーの純正部品であるため、ほぼ新品同様といえる。例として、Appleの公式サイトで販売されている「認定整備済製品」は、正規メーカーの整備済品の代表例である。

サードパーティ整備済品

サードパーティ整備済品とは、サードパーティ(第三者機関)によって独自に整備された製品である。サードパーティの基準にて修理から点検まで行われ、正規メーカー整備済品に比べると、安く販売している場合が多い。また、サードパーティごとに異なる整備基準が設けられているため、購入前には確認が必要だ。

リファービッシュ品を選ぶメリット

リファービッシュ品を選ぶメリットとしては以下の3点が挙げられる。

安く購入できる

メリットの一つは、製品を安く購入できることだ。リファービッシュ品はほぼ新品同様の質であるにもかかわらず、中古品と同じくらいの価格で購入可能だ。そのため、より幅広い消費者が利用できるようになる。たとえば、リファービッシュ品販売サービスを展開する「バックマーケット」によると、iPhoneやiPadの型落ちモデルはリリース当時の価格よりも半額以下になるといわれている。また、現品がそのまま販売される中古品と比較すると、付属品も同封されているため、追加で何かを買い足す必要もないのだ。

品質テストをクリアしている

リファービッシュ品は、商品回収の原因となった不良をすみずみまで確認して修理・整備を行い、品質テストをクリアしたものである。そのため、保証制度がなく不良のリスクもある中古品とは違い、新品同様の状態で安心して使用できるのだ。

環境に優しい

リファービッシュ品の大きなメリットとして、環境への配慮が挙げられる。リファービッシュされた製品は、壊れたデバイスや不良があり返品されたものの部品を利用するため、製造に必要な資源量が少なくなる。そのため、新品の製造と比較すると資源投入量やCO2排出量が削減され、環境負荷が低くなるのだ。

また、国際連合大学や国際固形廃棄物協会が共同で取り組んでいるグローバル E-Waste 統計パートナーシップによると、2019年には世界で5,360万トンの電子廃棄物が発生し、わずか17.4%しかリサイクルされていないという現状がある。リファービッシュにて製品自体の寿命を延ばすことで、新品の需要が減り、廃棄物問題にも貢献できる。

リファービッシュ品を選ぶデメリット

リファービッシュ品にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在する。主なデメリットとしては以下の2点が挙げられる。

保証期間が短く寿命は不明である

リファービッシュ品のデメリットの一つは、保証期間が短く、寿命が不確実なことだ。メーカーはリファービッシュ品を保証付きで販売しているものの、保証は90日から1年程度であるため、より長期の保証がつく新品と比較すると期間は短い。安全のためにはメーカーや認定されたサードパーティから購入するのがおすすめである。また、リファービッシュ品を売る際は寿命は提示されていないため、数か月以内に故障するものから3年以上使えるものまでさまざまである。

欲しい時にすぐ手に入らない可能性がある

リファービッシュ品は、タイミングによっては欲しい時にすぐ手に入らない可能性がある。リファービッシュ品は、随時製品を回収して修理を行い、点検をクリアしてから売られるので、在庫のラインナップは流動的である。そのため、人気のある製品はすぐに売り切れてしまうこともあるのだ。欲しい製品がある場合は、定期的にチェックする必要があるだろう。

リファービッシュ品のサービス事例

最後に、リファービッシュ品を販売するメーカーやサービスを3つ紹介する。

パナソニック

出典:パナソニック

国内最大級の総合電機メーカーであるパナソニックでは、「限りある資源を大切にしたい」との思いから、さまざまな理由で戻ってきた家電をもう一度使える状態に再生し、販売する活動に取り組んでいる。2023年12月には、リファービッシュされた洗濯乾燥機とテレビの販売を開始した。そして2024年4月には、パナソニックグループ製造事業部の監修のもと事業を拡充し「Panasonic Factory Refresh」と呼ばれる、リファービッシュ品の販売と定額利用サービスを開始した。公式ショッピングサイトにて10の商品カテゴリーで展開され、すべての製品に1年間の保証が付いている。

エプソン

出典:エプソン

情報関連機器メーカーのエプソンでは、資源の有効利用と廃棄物削減を目指し、2019年にリファービッシュ品の販売を開始し、プリンターやプロジェクター、パソコンなどを販売している。リファービッシュされたものは新品と比べると梱包や同梱品が異なるものの、同じメーカー保証が付き、新品と同等の品質となっている。また、パソコンのリファービッシュでは部品の再利用により、通常の製品と比較して28.5%のCO2排出量削減を実現した。エプソンは「環境ビジョン2050」を掲げ、2050年までに「CO2送料の減少」と「地下(天然ガスや石油など)消費ゼロ」を目指しており、リファービッシュのサービスを通じて持続可能な社会の実現に貢献している。

バックマーケット

バックマーケットは2014年にフランスで設立され、2024時点で日本を含む18カ国にサービスを展開する、リファービッシュ品専門のマーケットプレイス(売り手と買い手を結びつけるサービス)だ。製品はすべて修理・整備完了後に販売しており、iPhoneやiPad、MacBookなどのApple製品が中心である。また、1年間の動作保証が付いており、自然に故障した場合は修理や交換を受け付けている。製品は「A:新品同様」「B:経年劣化あり」「C:傷あり」の3つのグレードで分かれており、自分の好みに合わせて購入可能だ。

公式サイト:https://www.backmarket.co.jp/ja-jp

まとめ

リファービッシュとは、中古品や初期不良で返品されたものに対して修理や整備を行い、新品同様に使える状態で再出荷することである。既存の資源を活用する経済システムのサーキュラーエコノミーにおいても重要な役割を果たしおり、環境問題への意識が強い欧米を中心に注目されている。近頃は日本でも大手企業をはじめとして、リファービッシュを利用した取り組みが続々と行われている。

リファービッシュ品は環境に優しいだけでなく、安価で購入でき品質も高いことから、消費者にとっても利点が大きいため、今後需要が高まると期待される。この先の生活において電化製品を買う際は、リファービッシュ品の購入を検討してみてはどうだろうか。

【参考記事】
リファービッシュ(整備済中古品)とは|第三者保守サービス専用ポータル
Refurbished vs Brand New: The Environmental Impact of Your Tech Choices|Linkedin
リマニュファクチャリングとは?|産総研マガジン
グローバル E-Waste 統計パートナーシップ
商品のリファービッシュ・再整備で無駄のない資源の循環をつくる|EPSON

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