アンコンシャス・バイアスとは?バイアスの種類や具体例、問題点などを解説

アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)とは

アンコンシャス・バイアスとは、日本語で「無意識の偏ったモノの見方」のことで、自分自身が気づいていない「ものの見方や捉え方の歪みや偏り」を指す。

人は誰しもが経験や環境、教育などによって形成された思考パターンを持っており、それらが無意識のうちに判断や行動に影響を与える。性別や年齢、外見に基づいたステレオタイプなどがこれに該当し、「細かい作業は女性が得意」「力仕事は男がするもの」などがその一例だ。

日常生活の中で、人々はこのバイアスに基づき速やかに情報を処理し、判断を下している場合が多い。その影響で、意識的な差別意図がなくとも、無意識のうちに特定のグループに対して不公平な扱いをしてしまうことがあるのだ。アンコンシャス・バイアスは職場や学校など、社会の各場面で影響を及ぼすため、自己反省や多様な視点を持つことでこれを認識し、対処することが重要である。

注目されている背景

アンコンシャス・バイアスが注目されている背景には、現代社会における多様性が関係している。最近では、さまざまなバックグラウンドをもつ人々が同じ職場で働くことも一般的だ。組織の多様化は新たな視点やアイデアをもたらす一方で、無意識のうちに他者を評価するアンコンシャス・バイアスの問題を浮き彫りにする。

特に企業では、人々が自分と異なる背景を持つ者に対して無意識のうちに抱く偏見が、差別やハラスメントの一因にもなり得る。性別や人種、年齢など、個々の特性に対する先入観が公平な評価を阻害し、職場環境の悪化を招くことになるのだ。

これらの問題は、企業の生産性や社員の満足度、企業イメージに直接影響を与える。そのため、アンコンシャス・バイアスへの対策は、組織の持続可能な成長と社会的責任を果たすためにも不可欠である。

アンコンシャス・バイアスの種類

アンコンシャス・バイアスの種類

アンコンシャス・バイアスを形成する思考パターンは、200種類を超えると言われている。ここでは、その主な種類を6つ紹介する。

ステレオタイプ

ステレオタイプとは、特定のグループに関する過度に単純化された考えや見解で、個人の多様性を無視し、そのグループ全員が同じ特性を持っていると誤って一般化すること。

例えば、「女性は男性よりも感情的だ」というステレオタイプは、女性のリーダーシップ能力を過小評価する可能性がある。性別だけでなく、人種や年齢など多くのカテゴリで形成され、偏見や差別の原因となることがある。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、事態が通常通りに進行するという前提に基づく思考の傾向である。リスクを過小評価し、予期しない結果に対して準備ができていない状況を生む可能性がある。

例えば、災害や緊急事態などが起こる可能性を過小評価し、適切な対策を怠ることが多い。正常性バイアスにより、予防できたであろう被害や損失が引き起こされることがある。

確証バイアス

確証バイアスは、自分の既存の信念や仮説を支持する情報に注目し、それに反する情報を無視する傾向である。このバイアスにより、重要な情報を見落としたり、誤った結論を導き出す可能性がある。

人は自身の信念を再評価することなく、一方的な視点を強化することがあり、誤った判断や非効率な意思決定につながることもある。

同調バイアス

同調バイアスは、周囲の意見や行動に合わせることで、自分の意見や行動を変化させる傾向である。グループの中での受け入れられやすさを求める心理から生じ、個々の創造性や独自の意見が抑圧される可能性がある。

特に意思決定の場面では、このバイアスにより最適な選択が見過ごされることがある。集団の意見が個々の意見を上書きし、多様性や創造性を損なう可能性があるのだ。

権威バイアス

権威バイアスは、権威ある人物や専門家の意見を、その正当性を疑うことなく受け入れる傾向である。このバイアスの影響で、権威のある人々の見解が正しいと盲目的に信じ、重要な問題について必要な批判的検討を怠ることが起こり得る。

ハロー効果

ハロー効果とは、個人の一部の良い特徴が全体の評価に影響を与える現象だ。例えば、外見が魅力的な人が他の能力や性格面でも優れていると誤って評価されることがある。これは、全体的な評価を歪め、個々の特性を公正に評価しづらくし、人事評価や学校の成績などさまざまな場面で影響を及ぼす。

アンコンシャス・バイアスの具体例

アンコンシャス・バイアスはさまざまな場面で影響を及ぼす可能性がある。以下は、その具体例の一部である。

  • 採用面接で、応募者の名前や出身地に基づいて無意識の評価をする。
  • プロジェクトリーダーが無意識に男性を重要な役割に選びがちである。
  • 教師が学生の成績を予測する際、性別や容姿による期待に影響される。
  • 店員が特定の人種や服装の客に対して警戒心を持つ。
  • 企業の昇進選考で、結婚や出産を経験した女性が不利になる。
  • クリエイティブな仕事において、若手よりも年配の人物の意見が過小評価されることがある。
  • 患者の治療方針を決定する際、医師が患者の社会的地位に影響される場合がある。
  • IT業界で、女性が技術的な能力を低く見積もられる。
  • ある地域出身の社員に対して、その地域のステレオタイプに基づいた評価がなされる。
  • メディアが特定の社会集団を定型的な役割で描く。

これらのバイアスは、個人や組織に深く根ざしていることが多く、意識的な努力によってのみ克服可能である。日常生活の中で自然と行われがちであるが、意識を向けて見直すことで、より公平な判断が可能になるだろう。

アンコンシャス・バイアスの原因

アンコンシャス・バイアスによって、無意識のうちに偏った判断を行う原因はさまざまだ。

まず、個人のエゴが挙げられる。自分の経験や価値観が正しいと過信することで、他者や異なる意見に対して無意識のうちに偏見を持つことがある。人間は自己を保護し、自己の価値観を維持するために、自らのエゴによって無意識のうちに他者を評価し、判断する傾向があるのだ。

次に、習慣や慣習も大きな要因である。私たちは、これまで育ってきた社会や文化の価値観や規範を無意識に受け入れ、それがバイアスとなる。

さらに、感情スイッチもバイアスの原因となる。感情は判断を曇らせ、公平な評価を阻害する。喜怒哀楽がスイッチとなり、バイアスが働くのだ。特定の刺激に対して感情が高ぶると、理性的で客観的な判断が難しくなることがある。

これらの要素が組み合わさって、アンコンシャス・バイアスの原因となる。そのため、自分の思考プロセスを理解し自覚することが、公平な意思決定を行う上で重要だ。

アンコンシャス・バイアスの問題点

アンコンシャス・バイアスは、人間関係などに多くの問題を引き起こし、その影響は職場において特に顕著に表れる。

例えば、能力や実績以上に性別や年齢、出身地などが評価の対象となり、公平な評価が阻害されることがある。これは、個々のキャリアのみならず、組織全体のパフォーマンスにも影響を及ぼす。

また、人間関係において、バイアスが原因で誤解や偏見が生じ、コミュニケーションが円滑に行われない場合がある。これは、チームの一体感を損ない、生産性を低下させてしまう。

このような問題から、アンコンシャス・バイアスの認識と対策が求められている。バイアスを意識し、それを克服することで、より公平で健全な社会を築くことが可能となるだろう。

アンコンシャス・バイアスに対処する方法

アンコンシャス・バイアスに対処するためには、まずその存在を知ることから始める必要がある。無意識のうちに働くため、その存在や作動の構造を理解することが第一歩となるのだ。また、自身の中にあるバイアスを自覚することも重要だ。自分自身の行動や判断がバイアスによって影響を受けている可能性に気づき、それを認めることが必要である。

具体的な対策として、Googleでは「Unconscious Bias @ Work」という研修を実施している。アンコンシャス・バイアスの存在を理解し、それがもたらす影響を学ぶプログラムだ。また、社員が共通の認識を確立し、共通の言語で議論を行うための土台を作る。

これらの取り組みを通じて、アンコンシャス・バイアスを理解し、それに対処することが可能となる。このように、誰しもがもつアンコンシャス・バイアスに気付くことで、より公平で公正な判断を醸成することができるだろう。

まとめ

アンコンシャス・バイアスは、人間が生き抜くための進化的なメカニズムの一部として形成されたと考えられている。私たちの先祖は、迅速に情報を処理し、生存に直結する決定を下す必要があった。その結果、人間の脳はパターンを認識して情報を一般化し、既知の情報に基づいて新しい情報を解釈する能力を発達させたのだ。

しかし、これらのバイアスが常に有用または適切であるわけではなく、時には偏見や不公平を生む可能性があることを理解することが必要だ。

アンコンシャス・バイアスは誰にでもあるもので、なくすことはできない。しかし、バイアスがあるということを理解し、日常生活の節々で意識するだけでも、種々の対応が変わってくるのではないだろうか。

参考記事
アンコンシャスバイアスとは?|一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所
気づこう、アンコンシャス・バイアス~真の多様性ある職場を~|日本労働組合総連合会
無意識の偏見に意識を向ける|Google re:Work

ダイバーシティに関する記事


新着記事