エネルギーミックスとは
エネルギーミックスとは、電気の安定供給などのために複数の電源を組み合わせること。発電方法には火力(石油・石炭・天然ガス)、原子力、水力、太陽光・風力・地熱といった再生可能エネルギーなどがあるが、これらを組み合わせて電源を構成することを意味している。「電源構成の最適化」や「ベストミックス」と言われることもある。
日本はエネルギー資源に乏しく、2022年度のエネルギー自給率は12.6%(*1)と、エネルギー資源の約9割を海外からの輸入に頼っていることがわかる。
一方で全国各地に送電線が張り巡らされており、日本のエネルギー消費量は2022年度で4032PJ(*2)と、世界でも有数の多さといわれる。つまり、日本は資源小国でありながら、エネルギー消費大国でもあるのだ。
そこで「発電時における安全性の確保」「電力の安定供給」「低コスト化による経済への好影響」「CO2排出量の抑制による環境への適合」などを目指して取り組んでいるのがエネルギーミックスである。
(*1)日本のエネルギー自給率は1割ってホント?|資源エネルギー庁
(*2)令和4年度エネルギー消費統計結果概要|資源エネルギー庁
エネルギーミックスが重要視される理由
エネルギーミックスが重要視される理由として、「電源構成のバランスの確保」と「発電方法の分散」の2つについて解説する。
電源構成のバランスの確保
エネルギーミックスが重要視される要因の1つは、それぞれの発電方法にメリットとデメリットが存在する点だ。複数の電源を組み合わせることで、欠点を補い合うことができる。
日本で行われている発電方法には、火力、原子力、水力、風力、太陽光、地熱などがある。以下の表は、それぞれについてメリットとデメリットをまとめたものだ。

例えば火力発電は、安定的な発電ができる一方、環境への負荷が大きい。そのため、太陽光発電など環境への負荷が小さい発電方法を組み合わせることが検討される。こうしたメリットとデメリットのバランスを整えて、電源を構成するのがエネルギーミックスの基本だ。
発電方法の分散
エネルギーミックスが重要視される2つ目の要因は、1つの発電方法に偏ってしまうと、何らかの事情で電気の供給不足に陥るリスクがある点だ。世界では中東情勢の悪化やロシアのウクライナ侵攻などでエネルギー事情が変化しており、資源の争奪戦も起こっている。
日本のような資源小国では1つの発電方法に依存すると、このような状況下で安定的な電力供給ができなくなるリスクが高まる。そのため、エネルギーミックスによって電源を分散することで、安定的な電気供給を目指している。
世界のエネルギーミックスの現状
エネルギーミックスはそれぞれの国のエネルギー事情によって異なる。様々なデータから世界のエネルギーミックスの現状について見ていきたい。
世界全体のエネルギーミックスの現状
下記のグラフは、一般社団法人日本原子力財団の資料から抜粋した世界各国の電源別発電電力量の構成比だ。

OECD加盟国(経済協力開発機構)では火力発電(石炭・石油・天然ガス)は51.6%で、それ以外の水力、太陽光・風力などとのバランスがある程度取れていることがわかる。それに対して、加盟国以外は火力発電が66.0%と約3分の2を占めている。
世界各国のエネルギーミックスの現状
前述したグラフでは、世界各国のエネルギーミックスの現状も読み取れる。特徴的な国の現状を以下にまとめた。
- 太陽光・風力の割合が最も大きいのは32.5%のドイツ
- 原子力の割合が最も大きいのは62.8%のフランス
- 石炭の割合が最も大きいのは72.0%のインド
- 天然ガスの割合が最も大きいのは50.1%のイタリア
- 中国は62.0%が石炭
- ブラジルとカナダは水力が60%以上
なお火力発電の割合が最も小さいのはブラジルで、石炭が2.1%、石油が1.5%、天然ガスが6.2%、2番目のフランスは石炭が1.3%、石油が1.4%、天然ガスが9.7%となっている。
日本のエネルギーミックスの現状
日本のエネルギーミックスを確認するために、電気事業連合会の「日本の電源別発受電電力量の推移」を抜粋した。

日本では1980年代から原子力発電の割合が増えたことで火力発電の割合が減少したが、東日本大震災後に原子力発電所が停止。2015年は原子力による発電は1%となり、以降は石炭と天然ガスによる発電の割合が大きくなっている。
また下記の表は、前述した一般社団法人日本原子力財団の「【1-1-13】主要国の電源別発電電力量の構成比」から日本の構成比を抜き出したものだ。
| 石炭 | 石油 | 天然ガス | 原子力 | 水力 | 太陽光・風力 | そのほか |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 30.9% | 4.0% | 34.0% | 5.6% | 7.6% | 11.7% | 6.2% |
火力発電全体が占める割合は68.9%で、特にエネルギー供給が比較的安定している石炭と天然ガスへの依存度が高いのが読み取れる。
日本政府におけるエネルギーミックスに関わる政策

このような現状を受け、日本政府はエネルギー政策に関する中長期的な指針を「エネルギー基本計画」として策定している。これまでの流れとともに、2025年2月18日に策定した「第7次エネルギー基本計画」について解説する。
第5次エネルギー基本計画まで
日本のエネルギーミックスは、東日本大震災後に原子力発電所が停止したことで安全性がより重視されるようになった。そこで2014年4月11日に「第4次エネルギー基本計画」を策定し、原子力発電を増やすという方向性を見直した。
2018年7月3日には、パリ協定で定められた脱炭素化の目標などを盛り込んだ「第5次エネルギー基本計画」を策定。「S +3E」の原則のもとで2030年に向け、エネルギーミックスの確実な実現を目指すとした。S +3Eとは、「Safety:安全最優先」「Energy Security:資源自給率向上」「Environment:環境適合」「Economic Efficiency:国民負担抑制」のことだ。
また、2050年シナリオの設計としては「より高度なS +3E」を示した。S +3Eをより高めたもので、下記を表している。
- Safety:安全最優先+技術・ガバナンス改革による安全の革新
- Energy Security:資源自給率向上+技術自給率向上・多様化確保
- Environment:環境適合+脱炭素化への挑戦
- Economic Efficiency:国民負担抑制+産業競争力強化
第6次エネルギー基本計画
「第6次エネルギー基本計画」は、2021年10月22日に閣議決定された。目標としたのが2030年度のCO2排出量を2013年度比46%削減、さらに50%削減を目指すというものだった。
また2030年度のエネルギーミックスについて、以下のように見通しを立てた。
- 再生可能エネルギー:36~38%
(太陽光14~16%、風力5%、地熱1%、水力11%、バイオマス5%) - 水素・アンモニア:1%
- 原子力:20~22%
- 天然ガス:20%
- 石炭:19%
- 石油等:2%
- 総発電量:約9,340億kWh程度
実現に向けた対策として「地域脱炭素ロードマップ」が示されたほか、2050年までのカーボンニュートラルの実現を明記する「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」を2021年5月26日に成立させている。
研究・開発中だった「水素・アンモニア発電」について、エネルギーミックスの1%と数値目標が具体化されたことも話題を呼んだ。
第7次エネルギー基本計画
「第7次エネルギー基本計画」は、2025年2月18日に閣議決定された。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化、さらにはDXやGX(グリーントランスフォーメーション)の拡大に伴い電力需要の増加が見込まれることなどを背景に、エネルギー政策の方向性を示した。
ポイントは、2040年度に向けたGXに関する国家戦略「GX2040ビジョン」との一体的な遂行だ。さらにエネルギー需給構造の強靱化に向け、徹底した省エネルギー化、製造業の燃料転換などを進めるとした。
また、エネルギーの安定供給と脱炭素を両立するためには再生可能エネルギーを主力電源としつつ、これまでと同様に特定の電源に依存しないバランスの取れた電源構成を目指していくとしている。
なお、2023年度(速報値)の電源構成は、火力発電が68.6%、再生可能エネルギーが22.9%、原子力が8.5%で、エネルギー自給率は15.2%だったことを公表した。これを踏まえ、2040年度のエネルギー需給の見通しを以下のように示した。
- 再生可能エネルギー:4~5割程度
(太陽光23~29%、風力4~8%、水力8~10%、地熱1~2%、バイオマス5~6%) - 原子力:2割程度
- 火力:3〜4割程度
また、エネルギー自給率は3~4割程度、2013年度比のCO2排出量削減割合は73%とした。
まとめ
エネルギーミックスとは、電気を安定的に供給するために数種類の電源を組み合わせること。発電時の安全性の確保、低コスト化、環境への配慮などが実現されることを理想としている。
日本は資源小国でありながら、世界有数のエネルギー消費大国でもある。日々の生活も国内企業の生産活動も、安定して供給される電気によって成り立っている。つまり、私たちの日常のほとんどはエネルギーミックスに支えられていると言っても過言ではない。
刻一刻と変化する世界のエネルギー事情や日本が資源小国であることを踏まえ、今後もエネルギーを無駄に消費しない生活を送っていくことが望まれる。
参考記事
エネルギー基本計画について|経済産業省資源エネルギー庁
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