レイズトレードとは
レイズトレードとは、生産者と買い手が密接に関わり、生産地の持続可能な未来を作る新しい形の貿易である。後ほど説明するダイレクトトレードやフェアトレードをより発展させたスタイルである。
「レイズ(Raise)」は「育てる、高める」という意味で、レイズトレードの目的は、単なるモノの取引を超えて、関わる全ての人が共に成長することにある。
また、原材料を生産して買い手へ販売するのではなく、生産から加工まで商品化に至る過程全てを生産地にて行う。買い手が生産者の土地に住み込み、農業の指導や教育を通して生産者の技術向上をサポートすることで、自分たちで考えて行動できる生産者が育ち、高い品質を保った生産が続けられるようになるのだ。このように、買い手は市場価格よりも高い価格で買い取るだけでなく、より良い生産方法や品質向上にも一緒に取り組んでいくのがレイズトレードの特徴である。
レイズトレードは、取引に関わる全ての人に恩恵をもたらす仕組みとなっており、持続可能な社会を実現する新しい貿易の形として注目されている。
ダイレクトトレードやフェアトレードとの違い

ここでは、似た用語として扱われるダイレクトトレードやフェアトレードとの違いを述べていく。
ダイレクトトレード
ダイレクトトレードとは、生産者と買い手が中間業者を介さずに直接取引を行う貿易の方法である。
ダイレクトトレードでは、買い手が直接生産地へ足を運び、生産現場や働く人たちの生活環境を自分の目で確認する。そして、現地の状況を十分に理解した上で価格を決めていくのだ。お互いの顔を見て状況を理解することで、適切な価格での取引を実現している。
しかし、ダイレクトトレードでは、一度適切な価格での取引が成立すると満足してしまい、それ以上の高みを目指すことは難しいという課題がある。一方、レイズトレードは取引後も継続的に関係を深め、共に成長することを大切にしている。生産者と買い手が一緒となり、より良い品質や新しい可能性を追求していく点が大きな特徴である。
フェアトレード
フェアトレードは、発展途上国の生産者から適正価格で原材料を購入することで、生産者の生活向上と自立を支援する貿易の仕組みである。
しかし、フェアトレードチョコレートを例にとった場合、生産地からはカカオを輸出するのみであるため、生産者が受け取る利益は、最終的な商品価格のわずか5%程度にしかならないという課題もある。
一方、レイズトレードは、生産から加工まで全てを現地で行うため、より多くの利益を生産者に還元できるのだ。さらに、生産技術の向上や品質管理にも力を入れることで、事業としての将来の持続性もある。
レイズトレードが注目される背景

レイズトレードが注目される背景には、さまざまな課題の存在がある。
生産者が受け取る利益の少なさ
まず、フェアトレードやダイレクトトレードでは、生産者が受け取る利益が少なすぎることが挙げられる。
発展途上国と先進国の間では、発展途上国が原材料を供給し、先進国が加工を行うという「国際分業」の仕組みが長きにわたって存在している。
そのため、発展途上国の生産者が手にする利益は少なく、例えば、コーヒーは最終小売価格の1〜3%程度しか受け取れないといわれている。
そのため、レイズトレードにて生産者自身が少しでも加工技術を習得できるようになれば、収入もアップすると考えられたのだ。実際、ウガンダのコーヒー農家は、収穫した実から果肉を除去し乾燥させる工程を学んだことで、収入を2倍に増やすことに成功した。
最貧困層への支援が必要
また、レイズトレードは、最貧困層の生活や自立を支援する点でも注目されている。
フェアトレードでは、フェアトレード商品としての基準をクリアしていることを証明するための認証料を支払う必要がある。しかし、最貧困層の人々は認証料を払う余裕すらもないため、フェアトレードにも参加できないのだ。
また、買い手による生産物の品質向上が求められると、資金も技術も不足する最貧困層は要望に応えられず、買い手から排除されてしまうリスクもある。
レイズトレードでは、買い手が生産者と共に住み込み、技術指導や教育支援を行う。公的な資金援助などもあれば、最貧困層の生産者でも技術を身に付けることができ、困窮状態から脱却できる可能性があるのだ。
レイズトレードがもたらすもの
レイズトレードがもたらすものは大きく3つに分けられる。それぞれ説明していく。
- 認知度を上げる(Raise profile)
1つ目は、原産地の潜在能力を市場に広く認知させることだ。多くの場合、発展途上国の原材料が良い物であっても、先進国のブランド名の陰に隠れてしまう。しかし、原産地の価値が市場に伝わることで、取引の拡大や新たな投資につながる。 - 価値を上げる(Raise value)
2つ目は、商品の価値を高めることである。現地で加工や製造を行いブランドとして売り出せば、プレミアム商品としての価値をつけられる。これまでの先進国へ原材料を供給するだけだった状況よりも、大幅に利益を生み出せる。 - 富を上げる(Raise wealth)
3つ目は、地域全体の経済的な豊かさを向上させられることだ。現地の技術力を向上させ、付加価値をつくることで、より多くの利益を生み出せる。利益が増えると、地域の税収増加につながり、教育・医療・インフラ整備などに活用できるため、結果として地域全体の発展に貢献していくのだ。
レイズトレードの事例

最後に、レイズトレードをより理解できるよう事例を2つ紹介する。
ノエルベルデ
ノエルベルデ(Noel Verde)は、エクアドルのカカオを活かしたチョコレートブランドである。レイズトレードの取り組みとして、上質なカカオ豆を通常よりも高い値段で購入するだけでなく、農家へ無償で栽培技術や発酵技術の指導を行っている。特に、エクアドルにしかないカカオ豆「アリバ種」の保護にも力を入れ、生産から加工、販売まで一貫して行っている。
コセーチャ・ドラーダというカカオ集荷場では、生産者への2年間の技術指導により、品質が大きく向上。2022年のサロン・デュ・ショコラでは、有名パティシエに起用されるまでになり、現地のカカオ農家の後継者確保にも貢献した。
ノエルベルデは「7方よし」の理念のもと、作り手・買い手・売り手・社会・自然・生物・未来が優しさでつながる事業を目指している。商品としては、産地別カカオの風味の違いを楽しめるチョコレートや、エクアドル産原料にこだわったホワイトチョコレートなど、全10種類を販売している。
ロベール社
ロベール社は、マダガスカルでカカオ豆の生産から商品化までを行うチョコレートメーカーである。カカオ豆を輸出するだけでなく、現地での製造技術の蓄積や品質・衛生管理の向上に取り組んでいる。そして、国内生産の完成品を輸出することで、原材料輸出よりも大きな利益をマダガスカルにもたらしている。
また、マダガスカルの貴重な生態系を維持するため、熱帯林での栽培方法を見直し、サステナブルなカカオ生産を実現している。
ロベール社の品質の高さは世界でも認められ、商品のうちの一つが世界最高峰のチョコレートの品評会「アカデミーオブチョコレート」にて、世界約900候補の中から金賞を受賞。また、最高峰の称号である「ゴールデンビーン」も獲得した。ロベール社のマダガスカル産チョコレートは、口どけの良さや果実のような風味が高く評価されている。
まとめ
レイズトレードは、生産者と買い手が深く関わることで、生産地の持続可能な未来を作る貿易のスタイルである。買い手が生産地に住み込み、生産者への技術支援や品質向上を行うことで、利益が増えて生産者の生活水準を向上させられるなどメリットがある。
生産者の生活を支援できる商品としてフェアトレードが浸透している一方で、レイズトレードの認知度はまだ低い。フェアトレードの認知が拡大していることで、先進国の消費者の間で、生産国の人々の生活にも関心が向けられるようになったことは大きな前進だが、最貧困層の人々はフェアトレードの恩恵を享受することができないなど、まだ課題もある。
レイズトレードは、生産国や生産者の生活の向上、社会の豊かさをより一層目指すうえで、今後より一層注目されていくことが予想される。
参考記事
Trade Solution – How? | RAISETRADE
Sustainability and Raise Trade |Alegio Chocolaté
レイズトレードとは?|ノエルベルデ
フェアトレードミニ講座|フェアトレードとは?|fairtrade japan
フェアトレードの課題|国民生活センター
Chocolat Madagascar|アフリカンスクエア
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