関係人口とは?人口減少に直面する日本の現状や関係人口創出の成功事例を紹介

関係人口とは?

関係人口とは、自分の居住地と特定の地域を行き来して、地域と多様な形で関わる人々のこと。住んでいないが、その地域と関係が強い、あるいは思い入れが強い人々を指している。例えば「その地域が好きで何度も行っている人」「その地域に何らかのルーツがある人」「過去に住んでいた・働いていた人」「その地域のまちづくりに参加したいと思っている人」などが関係人口にあたる。

なお、総務省では以下のように定義・図式化している。

出典:総務省「関係人口ポータルサイト

居住地における人間関係が希薄な都市生活者が増える中、ふるさと納税や移住の活性化、コロナ禍でのリモートワークの普及などの影響で地方に目を向ける人が増加した。興味を抱いた地域に旅行に行ったり、イベントや祭りに参加するといった動きが活発になっている。

一方、人口減少や高齢化対策としても注目されており、一部の地方自治体や団体などでは関係人口の増加に向けた取り組みを進めている。

関係人口の分類

関係人口の種類は、大きく「訪問系」と「非訪問系」の2つに分けられる。直接現地を訪れる「訪問系」は、さらに次の5つに分類される。

訪問系の分類内容
直接寄与型ボランティアに参加したり、まちおこしにつながるプロジェクトの企画・運営や協力する人など。訪問系の中で最も地域との結びつきが強い。
就労型(現地就労)副業として、あるいはサポートという形で現地で働く人。
就労型(テレワーク)テレワークなどで現地に貢献する形で働く人。
参加・交流型現地で開催されるイベントや体験プログラムなどに参加する人。
趣味・消費型現地のグルメや観光のほか、スポーツや美術鑑賞など現地でしかできない活動を楽しむ人。

一方「非訪問系」は、ふるさと納税やクラウドファンディング、お取り寄せでの地場産商品の購入といった形で地域との関わりをもつ人々を指す。

「移住人口」「交流人口」との違い

関係人口と似た言葉・概念に、「定住人口」と「交流人口」があるが、それぞれ以下のような人々を指す。

  • 定住人口
    その地域に住んでいる人々のことで、居住者や居住人口とも言われる。生まれた時からその地域に住んでいる人のほかに、移住してきた人も含む。
  • 交流人口
    観光など何らかの目的をもってその地域を訪れる人のこと。ショッピングやレジャーなどで訪れる人も含む。

これらに対して、関係人口は何らかの理由で複数回あるいは継続的に訪れている人々を指す。観光で一度訪れた人は交流人口だが、リピーターとして何度も訪れている人は関係人口に区分される。つまり、地域との関係性によって、交流人口と関係人口に分かれる。

関係人口が注目されている背景

関係人口が注目されている背景として、大都市圏への一極集中の是正と地域経済の活性化があげられる。関係人口を創出・拡大することは、移住の増加につながる可能性がある。

日本では三大都市圏を中心とした都市部と、農漁村を含む地方との間で所得格差が存在する。所得格差と人口移動には密接な関係があり、所得の高い地域に人口が流出するという傾向がある。加えて、所得格差が広がると、その国の経済成長が停滞するという研究もある。

移住に発展しない場合でも、人々の関心が地方に向くことで、地域との関係を強める人や企業が増加する。それに伴って、地方へ資金が流れ、地域経済が活性化されることになる。また、地域外に居住している人が地域に貢献するケースも考えられる。

このように関係人口が増加することは地域の活力を維持・発展させるために様々な作用をもつことから、注目度が高まっている。

関係人口の現状

国土交通省の「関係人口の実態把握」では、全国の18歳以上の居住者約10,615万人のうち、特定の地域を訪問している関係人口(訪問系)は1,827万人(17.2%)、非訪問系は約251万人(2.3%)と報告している。

関係人口(訪問系)のうち直接寄与型が約628万人(34.3%)と最も多く、次に多いのが趣味・消費型の約500万人(27.3%)となっている。

また以下の表では、関わり先の地域別で移住希望の有無を表している。

出典:国土交通省「関係人口の実態把握

移住を希望する割合は地域と直接関わる直接寄与型が最も高く、中でも「市街地部(住宅地)」「市街地部(市街地内農林地等)」「農山漁村部」と関わる関係人口の移住希望率が高い。その一方、「趣味・消費型」は移住希望が比較的低いことが見てとれる。

関係人口の創出・拡大によって期待できること

関係人口の創出・拡大によって期待できることとして、地域経済の活性化など主に3つあげられる。

地域経済が活性化される

関係人口を創出・拡大することで、地域への人の流入が生まれるため、経済の活性化につながる。

また、非訪問系の関係人口が増えることも地域活性化の要因となる。地場の特産品の売り上げが伸びたり、ふるさと納税やクラウドファンディングなどで資金が集まることで、地域内の活動がより活発になるのだ。

新しい知識やスキルによって地域課題が解決される

移住・定住しなくても、関係人口が地域のプロジェクトに関わることで、新しい知識や考え方が取り入れられることになる。新たな視点が入ることは、プロジェクトの活性化につながり、より魅力的な取り組みになることも期待できる。また、新しい技術やスキルが伝授されることで、地域課題が解決されるケースも考えられる。

自分らしいライフスタイルを発見できる

地域とのつながりを持つことで、自分らしいライフスタイルを発見できる可能性もある。リモートワークやワーケーション、二拠点生活などの広がりによって、仕事への取り組み方やワークライフバランスに変化が見られる人も多い。

このように都市圏と地域両方と関わりを持つことが自分らしさの発見につながり、人生に彩りを加える可能性もある。

関係人口創出・拡大に関する事業

関係人口創出・拡大に関する事業

総務省では、地域での関係人口を増やすために様々な支援活動を実施している。例えば、2018年度から3年間にわたり実施された「関係人口創出・拡大事業」では、地域外の人々が関係人口になるきっかけづくりに取り組む地方自治体への支援を行った。2018年度は30団体、2019年度は43団体、2020年度は25団体のモデル事業を採択している。

2020年度からは、受入れ側と都市生活者の双方のニーズを十分に把握しつつ、マッチングを行うことができる中間支援組織の存在が欠かせないとして「中間支援組織の提案型モデル事業」を開始した。

2020年に設立した関係人口創出・拡大官民連携全国協議会「かかわりラボ」には、全国の中間支援団体や民間事業者、地方公共団体などが参加。情報交換の場などとして活用されている。

関係人口創出・拡大に向けた取り組みの具体例

関係人口の創出に関する自治体または団体の取り組みについて、以下の3つを紹介する。

あすかオーナー制度(奈良県明日香村)

農作業が生み出す里山風景が魅力的な奈良県明日香村では、棚田や果樹などのオーナーになれる「あすかオーナー制度」を運用している。オーナーになると、田植えや稲刈り、収穫といった体験を通じて、地元農家をはじめとした地域住民と関わりを持つことができる。

オーナー制度によって農山村の魅力を発信するほか、耕作放棄地や遊休農地の増加を防ぐことにもつながっている。

心の伊達市民(北海道伊達市)

北海道伊達市では、伊達市以外の人であれば誰でも登録できる「心の伊達市民」を運営している。会員には「心の伊達市民」の住民票や名刺、情報誌「心の伊達市民だより」(年2回)を届けている。

会員の役割は、伊達市の宣伝やまちづくりのアドバイスなどで伊達市の応援をすること。「心の伊達市民」として全国で活動している人は、2024年4月1日時点で1,249人となっている。

宇部市関係人口創出事業(山口県宇部市)

地域活性化の原動力となる「ヨソモノ・ワカモノ」に来てもらうために、山口県宇部市ではプロジェクトを運用している。農業や田舎暮らしの体験、地元ならではのイベントの企画、ゲストハウス開設のサポートといった多彩な内容となっている。地域の人や先輩移住者との交流もあり、プロジェクト参加後も地域との関わりを継続的にもつことができる。

まとめ

人口減少や少子高齢化が進む中で、都市圏とその他の地域での格差が広がりつつある。地方では労働人口の減少などにつながり、地域の活力は低下の一途を辿ることになる。こうした状況を打破するために、関係人口を創出・拡大することが注目されており、地域の活性化につながることが期待されている。

特定の地域と関わりをもつ手段として、観光での訪問、ふるさと納税、特産品の購入、副業やボランティアに参加するなど、様々な方法が考えられる。また、移住・定住していなくても、関係人口として地域活性化の担い手になる方法も多数ある。

関係人口として地域と関わりをもつことは、地域だけでなく、個人にもメリットがある。これまで知らなかった地域に興味をもつことで、日常生活にはない新しい発見につながり、人生をより豊かにするきっかけにもなり得る。この機会に、居住地以外の地域にも目を向けてみてはいかがだろうか。

参考記事
関係人口|総務省
関係人口ポータルサイト|総務省
関係人口の創出・拡大|内閣府

関連記事

新着記事