こども食堂とは?
「こども食堂」とは、地域の子どもたちに無料または低価格で食事を提供している場所または活動のこと。経済的な事情のある家庭や、共働きやひとり親家庭などで保護者と一緒に食事ができない子どもたちを中心に広く利用されている。
形態は運営者によってさまざまで、毎日食事の提供を行っているケースもあれば、週末だけといったこともある。また子どもだけではなく、対象を家族や地域住民に広げているケースもある。
こども食堂のはじまりは、東京都大田区にある八百屋だ。学校関係者から「夕食はバナナ一本で過ごしている子どもがいる」と聞いた店主が、地域の子どもたちに低価格での夕食の提供をはじめた。「こども食堂」という名称もここからスタートしており、店主の活動に共感した個人やNPO法人、任意団体などが増えたことで全国に拡大している。
食事の提供が代表的な活動だが、個食・孤食の解消や子どもたちの居場所の確保、食育の場としての活用など、社会的な事情を背景にこども食堂の役割は多様化している。
こども食堂の現状
認定NPO法人全国こども食堂支援センター「むすびえ」が実施している調査報告をもとに、こども食堂の現状について解説する。
下記のグラフは、2024年12月に公表されたこども食堂の数を示している。

全国のこども食堂の数は10,886箇所で、前年の調査時から1,734箇所増えている。注目したいのは公立中学校の数よりも多くなっていること。少子化の影響により学校の数が減少する中で、こども食堂の数は増えていることがわかる。この状況が続けば、今後小学校の数に迫る可能性もある。
一方、下記はこども食堂を利用する年間延べ人数(推計)だ。

2024年の年間延べ利用者数は1,885万人で、前年より約300万人の増加となった。このうち子どもの利用者は1,299万人で約200万人の増加となっており、こども食堂がなくてはならない存在となっていることもうかがえる。
なお、こども食堂の充足率の全国平均は34.66%で、都道府県別1位は62.40%の沖縄県となっている。このほか、鳥取県、東京都、徳島県、奈良県、兵庫県、香川県で充足率が50%を超えている。
こども食堂の役割

こども食堂が急速に数を増やしているのは、様々な役割があり、それが子どもを支えているからに他ならない。代表的な役割は以下の通りだ。
子どもへの食事の提供
子ども食堂が始まったきっかけでもある「経済的な事情などで食べることに困っている子どもに食事を提供すること」は、今でも子ども食堂での重要な役割となっている。日本では、18歳未満の子どものおよそ7人に1人が相対的貧困に陥っており、家庭で充分な食事や栄養を摂ることができない子どもも多く存在する。給食の提供がない夏休みの間は、お昼ご飯を食べることができない子がいるという実態も報告されている。子ども食堂では、そうのような子どもたちや家庭への食事のサポートという点で大きく貢献している。
また、食事の提供によって、格差や差別の解消、トラブルの回避、保護者への支援にもつながる。
子どもにとっての第3の居場所
現代社会は、家庭や社会の抱える問題が複雑・深刻化しており、地域のつながりも希薄だ。子どもが安心して過ごせる居場所は主に家庭と学校に限られる中、こども食堂は第3の居場所(サードプレイス)となっている。
こども食堂では、家庭や学校とは違う子ども同士のグループや、異年齢によるコミュニティが形成されていることがある。このような環境の中で他者とのコミュニケーション能力を磨きながら、安心感や帰属意識、社会性を身につけていくこともできる。
食育の場
こども食堂は、食育の場という役割もある。子どもたちに食文化や食事のマナーなどを伝えることで、生活能力を向上させることにもなる。また、調理の手伝いをするといった経験も、食への関心を高めたり、食材への理解を深める大切な機会となる。
農林水産省では、地域との連携によって情報発信・提供などを推進したり、表彰制度の活用によってこども食堂の運営を後押しする取り組みも行っている。
地域のコミュニケーションの場
共働き世帯あるいはひとり親世帯が増えている中で、個食・孤食をする子どもが珍しくなくなっている。個食・孤食の頻度が高いと、栄養バランスが偏ったり、社会性が欠落するといったマイナス面がある。しかし、こども食堂を活用することで共食の機会が得られ、孤食や個食の解消にもなる。
また、個食・孤食になりやすい一人暮らしの高齢者や障害者など多様な人を受け入れているこども食堂もあり、地域のコミュニケーションの場として機能しているケースもある。
一方、ボランティアをしたい人の受け入れ先という側面に加え、フードロスの解消につながることもあり、環境面においても社会的役割を担っているとも言える。
保護者が息抜きできる場
こども食堂は、保護者が息抜きできる場としても活用されている。「食事の用意ができない」といった事情だけではなく、「1回くらいサボりたい」などの理由で利用している保護者もいるからだ。子育て中の保護者の息抜きは必要不可欠とされるが、息抜きができる場所は限られており、その役割をこども食堂が果たすこともある。
また、こども食堂を利用する保護者同士のつながりができ、情報交換の場として機能しているケースもある。
学習支援の場
こども食堂では、宿題のサポートなどの学習支援が行われるケースもある。食前や食後の時間を学習時間に充て、年上の利用者やボランティアスタッフなどが勉強を見てあげるといった構図だ。
また一部のこども食堂では、学校と連携しているケースもある。学校内にこども食堂のポスターを掲示する一方、専門的な学習支援の提供なども行われている。
こども食堂を広めていくために
厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2022年)によると、日本の18歳未満の子どもの貧困率は11.5%(2021年)で、約8.7人に1人の子どもが貧困状態にあり、「栄養バランスのとれた食事は給食しかない」「社会的に孤立している」「将来への希望をなくしている」という子どもも少なくない。
こうした状況の中、こども食堂の役割が多様化し、地域での存在意義は大きくなっている。社会全体で、このような活動を支えていくことが重要だ。
こども食堂を広めていくためにできることは主に2つある。地域にこども食堂があればボランティアとして活動に参加することと、運営者に対して寄付を行うことだ。金銭的な寄付だけでなく、食材や調味料、調理器具などの物資で行うケースもある。
まとめ
一般的なこども食堂のイメージは「子どもに食事を提供している場所」だが、その役割は多様化している。子どもの安心できる居場所となっているほか、保護者同士を含む地域のコミュニケーションの場、さらには食育や学習支援が受けられる場として機能している事例もある。
このように地域の中でこども食堂の存在意義が大きくなっている背景には、意図しているか否かに関わらず、社会的あるいは経済的な事情によるライフスタイルの変化がある。
誰一人取り残すことのない社会の実現という観点から見ると、すべての子どもが豊かな時間を過ごすためにこども食堂は希望の一つとなっており、今後さらに重要な役割を担うことが期待されている。
参考記事
貧困対策だけではないこども食堂の役割。医師が考える食を通じた「健全な社会づくり」とは|日本財団ジャーナル
こども食堂と連携した地域における食育の推進|農林水産省
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