社会的連帯経済とは?定義や注目される背景、メリットなどを解説

社会的連帯経済(SSE)とは

社会的連帯経済(Sosial and Solidarity Economy. 略称SSE)とは、資本主義とも共産主義とも異なる、オルタナティブな経済の概念だ。「より良い世界」の実現のために非資本主義を基本としており、現在の経済構造がもたらす社会的、環境的な危機を脱することを目的としている考え方である。

現代社会は資本主義経済で成り立っているが、利潤を過剰に追い求めた弊害が現れはじめているところだ。人間が豊かな生活を求めるのと比例して、地球の資源は急速に消費されつづけている。そうした行いは、気候変動をはじめとした環境破壊、格差の拡大や不景気などの社会問題に繋がっている。

この状況に対する概念として誕生したのが、社会的連帯経済(SSE)だ。「より良い世界」では、労働者と消費者、そして地域が連携した経済活動が不可欠であると考えられており、特に中南米やラテン系ヨーロッパ諸国で発展している。

なお社会的連帯経済は、「社会的経済」と「連帯経済」という2つの概念が融合したものである。

社会的連帯経済の歴史

先述のとおり、「社会的経済」と「連帯経済」の融合である社会的連帯経済。その成り立ちを理解するには、まずそれぞれが生まれた経緯について知る必要がある。

社会的経済は、株主の利益ではなく社会への貢献を第一の目標とする経済のあり方で、こうした組織は古くからフランス、イタリア、スペインなどで運営されてきた。日本でも農業協同組合、生活協同組合、信用金庫、NPO、相互会社、財団法人など様々な組織が存在している。

一方、連帯経済が生まれたのは1980年代と、比較的新しい時代の概念である。連帯経済は、新自由主義へのアンチテーゼという意味合いを持つ社会運動から生まれたものだ。適正な賃金の支払い、地域住民同士の関わり、環境保全などが軸となっており、フェアトレード地域通貨などがその例である。

このように、社会的経済と連帯経済の意味合いは異なるものの、根本には非資本主義を目指すものという共通点があり、親和性が高かったことから徐々に融合することとなった。

2013年には国連において「SSEに関する機関横断タスクフォース」(UNTFSSE)を設立。さらに2022年6月には、国際労働機関(ILO)の総会において社会的連帯経済に関する審議を行い、社会的連帯経済の定義づけや、世界規模での取り組みを進展させる方針を決定している。

社会的連帯経済が注目される背景

社会的連帯経済が注目される背景

社会的連帯経済は、SDGsとの関連性が高いことから、近年注目されるようになった。

2001年、SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)が採択され、2015年までに達成するべき目標や、1990年代から指摘されていた問題がまとめられた。このMDGsからSDGsへの移行の過程にあった2012年ごろから、国連持続可能な開発会議において「社会的連帯経済」という言葉で言及されたことをきっかけに、国連での社会的連帯経済の認知度を高める必要性が訴えられはじめた。こうした動向が、社会的連帯経済が注目される背景にある。

世界が持続可能な社会の実現に向けて舵を切るなか、社会的連帯経済の考え方は、従来の資本主義ベースの経済および社会構造に疑問を呈するきっかけとなったのだ。

特に近年は、東日本大震災をはじめとした巨大化する災害、新型コロナウイルス感染症の蔓延などによって現代社会の脆弱な部分が露呈しており、これまでの資本主義社会や、改めて「社会的な繋がりを持つ」ということについて見直そうとする動きも見られている。

社会的連帯経済がもたらすメリット

社会的連帯経済への転換は、何といっても持続可能な社会の実現に繋がることが大きなメリットだ。現在、本来はサステナブルへの変革を実現する手段であるSDGsが、目的そのものとしてすり替わっている傾向にある。

そうではなく、SDGsを達成させることによって得られる、その先の「持続可能な社会」に目を向けなくてはならないはずだ。社会的連帯経済は、この本来の目的を思い出させてくれる存在にもなるのである。

また、行き過ぎた競争社会や経済格差、外向型が求められる世間の風潮から離脱し、社会との繋がりを分断してしまった人への救いとなる可能性も秘めている。

一人ひとりが自律的な生活を送り、当事者意識を持ちながら積極的に政治に参加すること。地域の中で交流を図り、市民が主体となって街づくりを行うこと。競争ではなく協同すること。そして誰もがディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就けることは、社会的連帯経済という概念の基盤となってる目標だ。

いま、経済成長のために犠牲となってきた人々の生活、心身の健康を取り戻すことを社会全体で目指す中で、社会的連帯経済の実践が大きな役割を果たすと期待されている。

社会的連帯経済を担う組織

社会的連帯経済を担う組織

実際に、どのような組織が社会的連帯経済を担っているのだろうか。様々な団体が当てはまるが、中でも「協同組合」の存在は大きい。協同組合とは、共通の目的を持った組合員たちが集まり、自ら出資して事業を立ち上げる組織である。組合員は事業の利用者でもありつつ運営にも携わり、利益を自分たちの収入にするという形だ。

数ある協同組合の中で、ここでは「労働者協同組合」と「消費者協同組合」について詳しく見ていこう。

労働者協同組合

厚生労働省によると、労働者協同組合とは「労働者協同組合とは、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)に基づいて設立された法人で、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織」と定義されている。ヨーロッパでは以前から組織されていたが、日本では令和4年10月1日に労働者協同組合法が施行された。

地域づくりにおける幅広い分野で、雇用側のニーズと労働者側のニーズの不一致が起こっており、働き方の多様化は喫緊の課題であった。こうした中、労働者協同組合は「多様な働き方」と「地域課題への取り組み」を両立させられる新しい組織として立ち上げられた。

出資額に関わらず、組合員は一人一票の議決権を所有しているという仕組みによって、組合員の民主的な参画が認められることになる。これが、株式会社と大きく異なる特徴だ。

消費生活協同組合

「生協」という略称でよく知られる消費生活協同組合。厚生労働省の定義では、「消費生活協同組合法(昭和23年法律第200号)に基づいて設立された法人で、同じ地域(都道府県内に限ります。)に住む方々、または同じ職場に勤務する方々が、生活の安定と生活文化の向上を図るため、相互の助け合いにより自発的に組織する非営利団体」とされている。

食品や日用品などの生活必需品を共同で購入したり、生活向上に関わる施設の運営を行うなど様々な事業があり、医療や福祉、共済に関わる商品を扱う組合も存在する。

人間関係が希薄化したことによる社会問題が多発する中、暮らす人それぞれが何らかの役割を持つことで生き甲斐を得て、いきいきとした生活を送ることができるような、地域共生社会づくりへの取り組みも行われている。

社会的連帯経済の問題点

社会的連帯経済の問題点

日本では社会的連帯経済の認知度は低く、活発な活動例もそれほど多くは見られていない。盛んな国々との言葉の壁によって情報が入りにくいという点に加え、関連機関のネットワーク不足、支援制度などがないことが普及しない理由と考えられる。そのような状況では、既存の資本主義以外の経済構造は想像しづらく、理解が進まないのも頷けるだろう。

そんな中でも昨今は地域での交流の重要性を説く人々が増え、実際に市民主体のまちづくりに取り組んでいる団体も存在する。そうした活動が外部にも広がっていくことで、社会的連帯経済へ繋がると考えられる。

ただし、経済構造を変革させるには人々を納得させられるだけのアイディア、そして膨大な労力と時間が必要であり、忍耐強く進めていくことが求められる。そのため取り組みが一時的なものとならないよう、継続できるかどうかが重要な鍵となる。

まとめ

オルタナティブな経済の形である社会的連帯経済は、これまでの資本主義社会に警鐘を鳴らす概念として注目されている。

戦後に経済成長を目指し、先人たちの血のにじむような努力によって日本が豊かになったことは間違いない。一方で、過剰な利益追求や競争社会は、私たちの暮らしや健康を脅かし、環境破壊や格差、コミュニティの希薄化を引き起こしたこともまた事実である。

経済の成長と、環境への配慮や人間らしい生活の両立は不可能なのか。私たちがこの社会に疑問を抱きつつも、今の構造から脱出できない理由は、代替できる新しい仕組みを見つけることができないでいるからだろう。

このような時代の転換期の中で、社会的連帯経済は現代社会の欠陥を補う存在となれるだろうか。私たち一人ひとりが社会に参画し、当事者として変革しようという意識を持つことで、その答えを出せるのかもしれない。

参考サイト
社会的連帯経済とは | 社会的連帯経済を推進する会
社会的連帯経済とはなにか ――協同組合運動の新理念|富沢賢治
「社会的連帯経済」への誘い1 未来を生きるための経済 | 連載コラム | 情報・知識&オピニオン imidas – イミダス
国際協同組合同盟(ICA)が社会的連帯経済(SSE)に関する ポジションペーパーを取りまとめました|日本協同組合連携機構(JCA)
協同組合とは|日本協同組合連携機構(JCA)

多様な働き方を実現し、 地域社会の課題に取り組む 労働者協同組合|厚生労働省
消費生活協同組合(生協) |厚生労働省

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