
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは
IPCCとは、気候変動への専門的な知識を世界中から集結させた政府間組織のこと。IPCCの正式名称は、Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)である。IPCCは、世界気象機関 (WMO) と国連環境計画 (UNEP) によって設立され、1988年に国連総会で承認された。いまでは、世界が一丸となって気候変動への対策を実施していくうえで、欠かせない政府間組織となっている。
IPCCの目的は、あらゆるレベルの政府に対し、気候変動に関する政策決定の根拠となる科学的情報を提供することである。その実現のため、次のことについて包括的な評価を実施し、定期的に調査報告書を作成している。
- 気候変動に関する現状の科学的知見
- 気候変動による社会的・経済的影響と将来リスク
- 気候変動に関する適応策・緩和策の選択肢
IPCC設立以来、その評価報告書は国連気候変動枠組条約、京都議定書、パリ協定など、国際的な気候政策の立案に直接反映されてきた。2007 年には、気候変動に関する知識の蓄積と普及、気候変動対策の基盤構築に向けた取り組みが評価され、当時の米国副大統領ゴア氏と共同でノーベル平和賞を受賞している。
IPCCの加盟国と組織
IPCC は、世界気象機関 (WMO) または国連環境計画 (UNEP) に加盟している政府で構成される組織である。2024年11月現在、IPCCの加盟国は195か国にのぼる。さらに、世界各国から専門家が集まり、IPCC の活動に貢献している。
IPCCには、総会・ビューロー(議長団)・執行委員会が置かれている。年1回以上開かれる総会には、加盟国およびオブザーバー組織の関連省庁・機関・専門家が出席し、ビューロー(議長団)と執行委員会の選出や評価報告書の承認および採択などを行う。

評価報告書に携わる専門家は加盟国によってリストアップされ、IPCCの執行委員会によって執筆者として選出され、評価報告書の作成にあたる。執筆者は3つの作業部会とタスクフォースに分かれ、それぞれの対象について検討する。
- 第Ⅰ作業部会
気候変動の自然科学的根拠を扱う - 第Ⅱ作業部会
気候変動の影響・適応・脆弱性について扱う - 第Ⅲ作業部会
気候変動の緩和について扱う - インベントリ・タスクフォース
国別温室効果ガス目録のための、排出量・吸収量に関する算定方法を開発する
IPCCは世界中の科学的情報を結集し、信頼性の高い評価報告書を公表するための組織を構築しており、日本も加盟国の一つとして役割を果たしている。
IPCC調査報告書の信頼性
IPCC調査報告書は、気候変動に関する科学的・技術的・社会経済的知見の現状を包括的にまとめ、国際的な交渉や各国の政策決定の場面で、信頼のおける科学的根拠を提供している。なお、IPCCが独自の研究を行うことはなく、特定の政策を提言することもない。
調査報告書の執筆者は、科学・技術・社会経済にわたる専門知識が反映されるよう、執行委員会によって選出される。その際、性別、地理的代表性、発展途上国・先進国・新興国などのバランスが配慮され、IPCCでの経験の無い専門家の起用も重視される。
執筆者は毎年発表される何千もの科学論文を評価し、気候変動の要因、その影響と将来のリスク、リスクを軽減できる適応と緩和の方法などについて草案をまとめる。この草案に対し、各国政府や専門家はコメントを提出し、複数回のやりとりを経て広く意見が反映されるプロセスとなっている。
このようなオープンで透明性の高い評価を通じて、現状で断定できる情報、不確実で意見が分かれる見解、さらなる研究が必要な部分などが示されている。
報告書の中では、「確信度」や 「可能性」の度合いについて、統一した尺度を用いることにより、知見の確からしさや確率を明示している。 1988 年の設立以来、IPCCは6つの評価報告書を公表しており、それらは国際的な気候政策の立案に直接反映されてきた。
- 第1次(1990年)
気候変動が地球規模の影響を及ぼし、国際協力を必要とする課題であることを強調気候変動枠組条約(1992年採択)の重要な根拠となった。 - 第2次(1995年)
京都議定書(1997年採択)の重要な根拠となった。 - 第3次(2001年)
気候変動の影響と適応の必要性に焦点を当てた。 - 第4次(2007年)
地球温暖化を産業革命前と比べて2°Cに抑えることの重要性を強調京都議定書以降の国際協力の基礎となった。 - 第5次(2013~14年)
パリ協定に科学的知見を提供した。
これまでのIPCCの実績が、地球温暖化に対する国際協力の礎を築いてきたといっても過言ではない。
IPCC第6次調査報告書の概要
2024年時点での最新報告書は、2021〜23年に公表された第6次調査報告書であり、その内容は次のとおりである。
- 第1作業部会:自然科学的根拠
- 第2作業部会:影響・適応・脆弱性
- 第3作業部会:気候変動の緩和
- 統合報告書
- 1.5℃特別報告書
- 土地関係特別報告書
- 海洋・雪氷圏特別報告書
- 温室効果ガスインベントリに関する2019年方法論報告書
この中で特に、作業部会の報告内容について簡単に紹介する。
第Ⅰ作業部会【自然科学的根拠】
- 温室効果ガスの濃度の増加が、人間活動により引き起こされていることは疑う余地がない
- 世界平均気温は、少なくとも過去2千年のあいだ、経験したことのない速さで上昇している
- 大気・海洋・雪氷圏及び生物圏において、広範囲で急激な変化が生じている
- これから数十年の間に温室効果ガス排出が大幅に削減されない限り、今世紀中に世界平均気温が工業化前と比べて1.5℃及び2℃を超えて上昇する
第Ⅱ作業部会【影響・適応・脆弱性】
- 気候変動の悪影響はすでに広範囲に及んでおり、地球温暖化は、短期的に生態系及び人間に対して複数のリスクをもたらす
- 世界平均気温の上昇を工業化前と比べて1.5℃付近に抑えたとしても、損害をゼロにはできない
- 気候変動によるリスクを低減させる適応策の選択肢はあるが、限界がある
- 気候変動のリスクを乗り越えるためには、次の10年間における選択や行動が鍵となる
第Ⅲ作業部会【気候変動の緩和】
- 現在の国別削減目標では、工業化前と比べて世界平均気温の上昇を1.5℃どころか2.0℃に抑えることも難しい
- 脱炭素技術のコストは大幅に低減しつつあるなど、緩和策が世界的に進展を見せている
- 世界平均気温の上昇を1.5℃に抑えるには、遅くとも2025年までに世界のGHG排出量をピークアウトさせ、2030年までに4割程度の削減(2019年比)、2050年までにネットゼロにする必要がある
- 気候変動問題は持続不可能な生産・消費行動が引き起こしたものであり、供給側だけでなく需要側の取り組みや生活様式の変容にも大きな可能性がある
IPCCの科学的根拠に基づく報告内容には説得力があり、温室効果ガス削減のむけて社会全体が抜本的に、しかも早急に転換しなければならないことが伝わってくる。
IPCC第7次調査報告書にむけて

2024年11月現在、IPCCは第7次評価のサイクルに入っている。第59回総会(2023年11月)において議長団などが選出され、Jim Skea氏(英国)がIPCC議長に、日本からは榎剛史氏がインベントリータスクフォース(TFI)共同議長に就任している。
第60回全体会合(2024年1月)において、3つの作業部会で報告書を作成することに合意した。このほか、これまでの議論や合意に基づき、次の特別報告書を作成することが決まっている。
- 気候変動と都市に関する特別報告書
- 短寿命気候強制力因子(SLCF)インベントリに関する2027年IPCC方法論報告書
- 二酸化炭素除去(CDR)技術・炭素回収利用及び貯留(CCUS)に関する方法論報告
地球温暖化のリスクとそれに対する危機感がますます高まる中、世界が第7次評価報告書に注目している。
まとめ
地球温暖化は、工業化前と比べて1.5 ℃の上昇に危険なほど近づいている現状だ。このまま進めば、今世紀中に3℃の温暖化に達する可能性があり、深刻な影響と適応の限界が懸念されるとされている。
そのような中、IPCCは世界に信頼性の高い科学的知見を提供し、国連気候変動枠組条約COP29でも大きな存在感を示している。
今後もIPCCの発信する情報に注目し、個人レベルでも危機感を共有して、社会全体で気候変動に対峙していく必要があるだろう。
参考記事
IPCC
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 統合報告書の公表について | 報道発表資料 | 環境省
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第7次評価報告書(AR7)サイクル
気候変動 2021 – 自然科学的根拠
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