
GX(グリーントランスフォーメーション)とは
GXとは、グリーントランスフォーメーションの略であり、環境と調和した持続可能な社会(グリーン)への、変革(トランスフォーメーション)を目指すこと。つまり、地球温暖化対策や国際競争力強化の観点から、日本の社会全体を変革しようとするものだ。
2020年に当時の菅総理大臣は、所信表明演説において「成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力」する」と述べた。ここでのグリーン社会とは、脱炭素社会、気候変動適応社会、自然共生社会、循環型社会を広く包含する。
「積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる」ということも、この演説の中で言及されている。
つまり、地球温暖化対策を念頭に、クリーンエネルギー中心で環境に負荷の少ない経済・社会へと大転換し、経済成長の機会にしようとする政策がGXなのである。
なぜGXが求められるのか
GXが求められる背景として、差し迫った世界共通の課題である地球温暖化に対し、各国が早急かつ確実に取り組まなければならない状況があげられる。
昨今の異常気象や大規模な自然災害の頻発は、人間の活動に起因する温室効果ガスの増加と地球温暖化による気候変動が原因である。
地球温暖化の影響を最小限にするには、パリ協定で掲げられたように世界全体の平均気温の上昇を、工業化以前よりも1.5℃高い水準までのレベルに抑えなければならない。1.5℃目標を達成するためには、化石燃料を大量に消費し温室効果ガスを排出し続けてきた社会から脱却する必要がある。
地球温暖化への対策として、化石燃料に依存した社会から、CO2などの温室効果ガスを極力排出しない脱炭素社会へと根本から変革するために、GXが求められているのである。
GXとカーボンニュートラルとの関係性

前述の所信表明演説において、当時の菅総理大臣はグリーン社会の実現を目指し2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言した。地球の平均気温上昇を1.5℃に抑えるには、2050年までにCO2の排出を実質ゼロにし、カーボンニュートラルを実現することが必要とされているのだ。
カーボンニュートラルとは、CO2などの温室効果ガスの排出量から、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する。
目標年を定めてカーボンニュートラルの実現を表明している国は、2021年11月時点で154カ国・1地域にのぼる。また、欧米各国は脱炭素投資にむけて、新たな脱炭素市場やルールづくりを加速している状況である。そのような潮流のなか、地球温暖化をはじめとする環境問題への対策を足かせととらえているだけでは、グローバルな競争力を失いかねない。
GXは、2050年カーボンニュートラルの実現にむけ、経済と環境の好循環を成長戦略の柱として、産業の国際的な競争力を強化することも目指している。
日本政府の基本方針
2023年2月に閣議決定されたGX実現に向けた基本方針は、脱炭素、エネルギーの安定供給および経済成長を同時に実現することを目的とした、政府による計画である。この基本方針は今後10年を見据えたGX実現のためのロードマップであり、150兆円を超える官民投資を見込んでいる。
政策の柱となるのは次の2点だ。
- 省エネの推進とエネルギー自給率の向上につながる脱炭素エネルギーへの転換
- GXの実現に向けた先行投資支援などを含む成長志向型カーボンプライシング構想の実現・実行
これらを具体化するためにGX推進法とGX脱炭素電源法が成立し、GX実現にむけた基本方針と合わせてGX政策の土台となっている。
GXと日本のエネルギー政策
化石エネルギー中心の産業・社会構造から、持続可能な脱炭素エネルギー中心の世の中への転換を掲げるGXは、エネルギー安全保障の観点からも重要である。
エネルギーの安定供給は日常生活や企業活動の基盤として不可欠だが、日本はエネルギー自給率が低く、国際情勢の変化による負の影響を受けやすい状況だ。エネルギーの安定供給を確保するため、GX実現にむけた基本方針は次の4項目をあげている。
- 省エネの補助金創設、住宅の省エネ化などによる徹底した省エネの推進
- 2030年の再生エネルギー比率36~38%を目標とし、再生エネルギーを主力電源化
- 厳格な安全審査を大前提とした原子力の活用
- GXに向けた新たな技術革新のための研究開発・設備投資を推進
GXを進める政策は、省エネや脱炭素、技術革新によってエネルギー供給体制を強化し、社会経済の安定化と企業の競争力強化を実現しようとしている。
成長志向型カーボンプライシング構想とGX推進法
GX実現にむけた基本方針のもう一つの柱である「成長志向型カーボンプライシング構想」を具体化するための法律が、GX推進法である。
150兆円の官民GX投資を実現するには、国による長期的な投資促進策が必要であることから、GX推進法に基づきGX経済移行債が発行されることとなった。
GX推進法は、その他にも、化石燃料賦課金の導入やCO2排出量取引制度(ETS:Emissions Trading System) による負担金の徴収について定めている。これらは、CO2の排出に値付けをすることで、先行してGXに取り組む事業者にインセンティブを与えるものだ。
さらに、同法は民間企業のGX投資の支援や化石燃料賦課金などの徴収、排出量取引制度の運営を担うGX推進機構の設立についても規定している。GXの実現に向けて政策や制度が導入され、国の主導によるカーボンプライシング構想が実現しようとしているのである。
GXリーグとは

2022年に経済産業省によって設立されたGXリーグは、GXに積極的に取り組む企業が、自ら掲げた目標に向けて自主的な排出量取引を行う場だ。2024年現在、GXリーグへの参画企業は、日本のCO2排出量の5割以上を占める747社にのぼる。
GXリーグ参画企業は、自主的な排出量取引(GX-ETS)・市場創造のためのルール形成・ビジネス機会の創発・GXに関する情報交換などにリーダーシップを持って参加している。
さらに、サプライチェーン全体を対象としたCO2排出削減やグリーン製品の投入などについても積極的に提案していることから、中小企業も無関心ではいられないであろう。なお、GXリーグには、法人格を有していれば事業規模は問わず、中小企業も参画可能である。
GXリーグは、経済・環境・社会の好循環を実現するための議論やルール作りを実践し、日本のGXを牽引する枠組みとなっている。
まとめ
GXは、地球温暖化やエネルギー安全保障などの喫緊の課題を解決すると同時に、経済成長を目指す社会の大転換を促す概念だ。
GXにむけた基本方針と関連法に基づき、脱炭素社会の実現のための新たな政策が導入され、企業による実践も始まっている。カーボンプライシングの動きが軌道にのれば、GXの動きはますます加速し、社会への影響が増大していくと考えられる。
企業にとっても、コスト削減と経営の効率化、新たなビジネスチャンスの創出、中長期的な経営リスクの回避などが期待できることから、GXに取り組むメリットは大きい。
今後、GXを自分事としてとらえ可能な取り組みを検討・実践し、社会の動きを注視していくことが企業の競争力を維持・向上させるためのひとつのカギともなりうる。
参考資料
第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説
グリーン社会の実現に向けた 国土交通省の取組概要(P10)
IPCC 第6次評価報告書統合報告書 Summary for Policy Makers(政策決定者向け要約)解説資料(P7,8,15)
第1節 脱炭素を巡る世界の動向|資源エネルギー庁
GX 実現に向けた基本方針 ~今後 10 年を見据えたロードマップ~(P2)
GX実現に向けた基本方針の概要
GX実現に向けた基本方針 参考資料
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要
「GXリーグに2024年度から新たに179者が参画し、合計747者となります」|経済産業省
GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League
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