完璧な文章なのに心が動かない?AI時代における自分らしい伝え方

ここ数年で、AIの文章生成能力は飛躍的な進化を遂げた。適切な日本語で紡がれる、正確かつ失礼のない文章。そこには正しさこそあれ、個人の感情や価値観は存在しない。本記事では、AIの文章生成における人間味の喪失を踏まえつつ、AI時代ならではの「文章の揺らぎの重要性」について掘り下げる。

丁寧なのに遠い。AIが生成する「完璧な正解」への違和感

私たちが日常的な文章を作成するにあたって、重視するべき要素は何だろうか?

適切な助詞や接続詞の使用、感情が伝わる言葉選び、専門用語やデータの精確な取り扱い。もちろんどれも大切な要素だ。しかしもっとも基本となるのは、やはり「正しく伝わりやすい文章構成」だろう。

当たり障りのないテキスト作成において、AIはまさに「理想的な文章をアウトプットするツール」だ。年々進化するAI技術のなかで、AIが生成する文章のレベルはどんどん向上している。

TPOに応じたニュアンス、わかりやすい起承転結、日本語として正しい言葉遣い。その文章生成能力は、一部のWebライターの仕事を現在進行形で奪い続けているほど高い。

AI生成文は、一見すると「誰が見ても問題ない文章」である。しかし同時にそれは、「誰が書いても同じ文章」ともいえる。

AI文章には、間違いや失礼を含む「揺らぎ」がない。その反面、文法的に正しく論理的な文章であるほど、送り手の顔が見えなくなる事態も懸念される。

文章は、心や思考を伝えるための重要なコミュニケーション手段である。文章作成作業の多くがAIに移行する昨今で、私たちは何か重要なものを失ってしまってはいないだろうか。


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自分らしさはどこに?文法的な正解と、心の距離の矛盾

AIは最短距離で「正解」を出す能力に優れており、文章生成も例外ではない。しかしAIによる文章生成が一般化するなかで、書き手の感情が投影された文章が減少傾向にあることも無視できない。

人間のコミュニケーションには、適切な言葉を探して迷ったり、言い淀んだりするプロセスが存在している。緊張のあまり言葉遣いや単語選びを間違えることも、ときには誠実さの証明になる。

たとえばプロポーズの言葉には、その人特有の個性や価値観が反映される。今回は実験として、ChatGPTに「プロポーズの言葉を3つ提案してください」と入力した。結果は以下の通りだ。

  • これから先のどんな未来も、あなたとなら乗り越えていけると本気で思っています。どうか、僕の人生のパートナーになってください。
  • うれしい日も、不安な日も、全部あなたと分け合っていきたい。これからの人生を、僕と一緒に歩んでください。
  • あなたと出会って、未来を考えるのがこんなに楽しみになりました。ずっと隣にいてほしい。結婚してください。

上記を見て、どんな印象を抱いただろうか。「シンプルでわかりやすい」という点においては、ChatGPTの提案以上のものはそう無いだろう。

しかし同時に「ありきたりで、平凡だ」と感じた人も多いのではないだろうか。まさにここに、AI文章生成のリスクが潜んでいる。

AIは、聞いたら何でも教えてくれる魔法のような存在ではない。膨大なデータベースのなかから、「関連性が高い情報をつぎはぎのように繋ぎあわせて提示するプログラム」が組まれたシステムだ。

AIはゼロイチの発想ができない。したがってAI生成文には個性は生まれず、創造性もない。いわゆる「~っぽい言葉」を生み出す分野においては圧倒的な性能を誇るが、人間ならではのリアリティのある「揺らぎ」は生み出せない。

つまり「不器用だからこそ相手の心を動かす言葉」は、人間ならではの生成物なのだ。文章作成という営みには、AIの完璧な長文やミスのない言葉選びだけでは、辿り着けない領域がある。


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完璧じゃなくても、大丈夫。「ま、いっか」が教えてくれる心の余白

AIは「壁打ち」、自分は「仕上げ」。効率と個性の新しい共存

それでは、感情を感じられないAI生成文は今すぐに淘汰されるべきなのか?決してそんなことはない。AIによる文章生成は、ビジネスやサービスの可能性と効率を飛躍的に向上させた。

大切なのは「状況に応じたAIの使い分け」である。たとえば情報をまとめたり要約させたりする際は、人間よりもAIのほうが遙かに高い成果を出せる。なぜならそれらの作業には、感情が入る余地も必要性もないからだ。

しかし「読む人の心に響く文章を作りたい」「書き手の個性や感性を取り入れた文章を作りたい」というケースでは、AIの生成能力に限界が生じる。

人の心を動かすのは、最終的には人間である。人間特有の揺らぎや思想を取り入れるためには、AIを最終的な文章生成役ではなく、プロセス上の壁打ち相手として利用する姿勢が必要だ。

例として、文章生成の際に以下のようなプロンプトを入力してみよう。

  • この文章の「弱い部分」を率直に指摘して。
  • 論理の飛躍や、抽象的すぎる表現を指摘して。
  • 読者に刺さらない部分を具体的に教えて。
  • このテーマについて、私とは逆の立場から反論を組み立てて。
  • この文章を、より感情に刺さる表現に改善する案を3つ教えて。
  • この文章での「削るべき部分」と「伸ばすべき部分」を分けて教えて。

上記の指示による提案をもとに練り直しつつ、人間自身の手で完成させた文章は「AIの分かりやすさ」と「人間の個性や感情」が両立された成果物になる。

とくに最後の仕上げの工程は重要だ。自分ならではの語彙や比喩を差し込めば、その瞬間に感じた生々しい感情や「書き手特有のアプローチ」が生まれ、文章に命が吹き込まれる。

AI時代において、効率性と唯一性を担保するためには、こういったAIとの協働のかたちが求められる。


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「届く言葉」の再定義。効率化の波の中で立ち止まる

スピードと効率が求められるビジネスの現場では、AI文章生成による即時性が大きく評価されている。

たとえば上記でも触れた情報収集やまとめ、リマインドや共有などの定例文。そういった「感情や想いを取り入れる必要性が低いシーン」であれば、AI文章生成は大活躍する。

そのうえで、大切な謝罪や感謝など、ここぞという時に「自分の言葉で時間をかけて書くプロセス」を尊重することで、文章が与える影響や可能性は無限大になる。

多くのコミュニケーションが、AIによって代用可能なこの時代。時間や労力などのコストをかけて生み出される文章は、言うなれば贅沢品だ。

だからこそ執筆や作成といった「一見無駄な行為」に価値が生まれ、意義が深まり、想いが込められる。人間が生み出す揺らぎや不確実性にこそ、心を動かすエネルギーが宿るのだ。

たとえデジタル上のメールやチャットであっても、非効率なプロセスによって生み出された「生(なま)の言葉」は、AIには無い「生(せい)の証」となる。

そのとき初めて、言葉は情報伝達ツールの領域を越え、相手の心に届くコミュニケーションツールとして機能するのだ。


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あなたの「ざらつき」が誰かの力になる

本記事では、人間特有の文章の定性性を「揺らぎ」と称した。揺らぎはコミュニケーションにおける不確定要素であり、ときにすれ違いや誤解を生む。

揺らぎとは、いわば対人関係におけるノイズと同義だ。あえてノイズの含まれる対話手段を選べば、言葉選びの失敗や先入観などが生じやすくなり、人間関係のトラブルに発展してしまうケースもあるだろう。

私たちはAIとは異なり、心も体も完璧にはなれない。正解だけを選ぶこともできない。しかし私たちは、決してAIには持ち得ない感性・感受性・価値観・思想を、一人ひとりが持っている。

これらがノイズを発生させる原因であれば、AIが完璧な成果物を生成できる現代において、ノイズは尊ぶべき希少価値といえる。

不正解を選びかねないリスクを踏まえ、自分の心のざらつきを、そのまま言葉に乗せて伝える。そんな「自分らしい伝え方――自分にしかできない伝え方」こそが、孤独を抱えやすい時代で真のつながりを生むための手段なのだ。ルビーイングを向上させるための選択なのだ。

Edited by s.akiyoshi

About the Writer
山口愛未_METLOZAPP

METLOZAPP

数多くのジャンルの経験を生かし、分野横断的な執筆を得意とするWebライター。ウェルビーイングやメンタルヘルス領域を中心に、生活に新たな気づきを与えるコンテンツを発信中。マイノリティな感性に悩む人や、孤独や寂しさを抱きながら暮らす人の心に、少しでも寄り添えるような記事執筆を目指して活動する。現在は、女性のキャリア形成や、人間と動物の関わり方などに興味を持ち学習中。
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