AIカウンセリングが抱える危険性。人間同士の自己開示でしか得られない安らぎとは?

IT技術全盛期の現代。対話型AIは、人類の友といえる存在だ。しかしAIを本当の友人のように扱いすぎると、対話や寄り添いといった「本来人間でしかなし得ない営み」すらも、AIに一任してしまう状態になる。本記事では、AIカウンセリングが抱える不安要素を提示し、健全なAI利用に必要な「リアル体験の重要性」を掘り下げる。

AIカウンセリングの進化で難化する「リアルな他者への相談」

いまやAIは、私たちの生活に欠かせない。多くの利用用途のなかでも、私たちにとって身近なものが「身近な相談やカウンセリング」だ。

私たちの日常的な「少し話を聞いてもらいたい」「ちょっとした悩みへのアドバイスが欲しい」というニーズに、AIは丁寧に応えてくれる。昨今では対話型AIの傾聴モードも年々進化しており、内容によっては人間以上に有用なレスポンスを効率的に与えてくれるケースも多いものだ。

とくにAIネイティブであるZ世代やα世代にとって、AIへの相談(AIカウンセリング)は身近な営みだ。仕事や人間関係の小さな愚痴、夕飯のレシピ、就活のための自己分析、恋愛の悩み。AIはあらゆる領域をカバーし、ユーザーに対して肯定的な姿勢で傾聴・助言をしてくれる。

しかしAIカウンセリングが一般化されることで、リスクとして挙がる要素が「人間に相談することへのハードルの上昇」だ。

「否定されないか」「迷惑だと思われないか」「『その話、AIで良くない?』と思われないか」。

そんな不安を感じるなかで、“優しい”AIの力を借り続けると、リアルな人間との精神的な距離間がさらに開いてしまうだろう。


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AI傾倒が生む危険性。心のグラデーションは人間のもの

現実世界でも、悩みの種類によって相談すべき相手は異なるはずだ。一人ひとりが持つ属性によって「悩みに応じた適切な相談相手」は変わる。例として、独身のキャリア志向女性は育児の相談相手にはなりづらいが、女性特有のキャリアの悩みに関する相談であれば、魅力的な相手になるだろう。

AIと人間も同様である。相談相手としてのAIと人間には、それぞれに適した悩みが存在している。

しかし日常的にAIカウンセリングにばかり頼っていると、「AIで解決できない問題」「人間に相談したい問題」に直面した際に、「どう相談すればいいか分からない」「自分の心を開示するのが怖い」と新たな不安を抱えてしまう。

人間の心は多面的であり、矛盾を抱えている。人間ならではのグラデーションのキャッチアップに適した対象は、やはり人間である。

人間でなくては解決できない問題や寄り添えないテーマは多い。しかし相談相手の選択を間違えると、悩みは解決するどころかさらに難化し、苦しみを深めてしまう事態にもなり得る。


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AIカウンセリングによる悲劇から学ぶリスク

このリスクが顕在化した出来事として、2025年に発生した「ChatGPTの利用が自殺の原因になった事件」が挙げられる(*1)(*2)。

米報道によると、テキサス州に住む23歳の男性が、自殺前にChatGPTと最後の会話をしていたことから、遺族はOpenAI社を提訴した。ChatGPTは同年8月にも、16歳の男性に遺書の作成を提案しており、当該人物はその後に命を絶っている。

これらの事件の原因として考えられる要素が、AIの「共感を示すアルゴリズム」だ。AIの多くはユーザーの心理に寄り添うように開発されるため、利用者の精神的な依存を意図せずに深めてしまう可能性が露呈された。

AIに自殺を促す意図はない。しかし人間側の言葉の受け取り方次第で、危うい精神状態をAIが肯定・増幅させてしまうリスクがあることは否定できない。

上記の事件を受け、OpenAI社はAIの安全対策リスクを認めた。現在は各AI企業が、「子どもが自殺・自傷行為について会話した際の保護者への通知機能」や「危険なキーワードに対する危機介入(相談窓口の表示)」など、アルゴリズムの明確な変更を取り入れている。

しかし人間が感受性を備えた生き物である限り、その機能にも限界がある。「専門家に相談しましょう」というアドバイスに対し、「良い助言を貰えた」と考える人もいれば「AIにすらも突き放された」と感じる人もいるだろう。


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AIと人間による「傾聴スタイルの違い」

結局のところ、AIカウンセリングの有用性や危険性は、個人の受け取り方に任されてしまう。AIとともに健全に生きるためには、やはり「使う側のリテラシー」を高めることが最重要だ。両者の強みや弱点を把握できれば、シチュエーションに応じて正しく使い分けられる。

人間ならではのカウンセリング技術

  • 声色や表情などの微細な変化を察知する
  • 沈黙に隠された心の動きを読み取る
  • 場の雰囲気を整え、安心して話せる環境をつくる
  • 人生経験に基づいた実感のあるアドバイスをする
  • 時間をかけて少しずつ関係性を育む
  • 「物理的に近くにいる」ことによる安心感を生む

とくに「人生の伴走者」としてのカウンセリングは、モデル変更で履歴が消去されるプログラミングにはまねできない。また非言語的コミュニケーションも、現実に存在する人間ならではのスキルだ。

AIカウンセリングならではの魅力

  • 24時間365日いつでも相談できる
  • 感情や体調による揺らぎがない
  • 同じ内容でも辛抱強く聞いてもらえる
  • 幅広い知識を瞬時に提示できる
  • カウンセラーの能力差が無い
  • 匿名性が高く気軽に打ち明けられる

技術進化に応じて、人間によるカウンセリングや傾聴は一部奪われつつある。しかしカウンセリングのAI化は「課題解決の簡略化」につながっていることも事実だ。

AIが人間の味方であり続けるためには、人間が「AIと人間」両方を大事にする必要がある。AIリテラシーを高めるとともに「人間への自己開示の訓練」もおこなえば、TPOに応じたAI・人間の選択が可能になるだろう。


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デジタルを悪にしない。リアルを大切にするためのAI傾聴

自己開示をするための能力は、一般的なコミュニケーション能力と同様に、日々の訓練によって高められる。

たとえば「今日は少し疲れてるんだよね」「仕事でミスしちゃったんだよね」と、軽い感情や出来事から伝えることも、立派な自己開示のひとつだ。

安心できる少数の相手を見定め、週1程度から近況を共有する。相手の反応を「怖い」と感じたことも、そのまま言葉にしてみる(例:「こんなこと言って引かれないか不安なんだけれど……」)。

そういった「短くても本音を話す習慣」を人間相手に繰り返すことで、自己開示のハードルが少しずつ下がっていく。ひとつのコミュニティや人物に依存せず、「どの話をどの人に話すか選べる環境」を構築していくことも重要だ。

自己開示に慣れるほど、苦しいときに「詰み(=AIにしか話せない状況)」になる状況を回避できる。他者に自己開示をする方法やコツを、AIに聞いたって良い。大切なのは、あくまで「リアルを大切にするためのAIづかい」だ。


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「AIが助けてくれる範囲」の外でも、震えずに生きるために

便利なツールも、使い方を間違えれば凶器になる。それはAIだけではなく、古来から火や刃物、言葉でも同じことが起こっている。

AIとの健全な共存のためには、AIが人間を守ってくれる部分・守り切れない部分を見定め、「守ってもらえない領域は人間自身の力で対処するしかない」という意識が求められる。

そしてリアルなコミュニケーションの精度向上のために、AIカウンセリングの活用は有効だ。

  • 「自分が何を解決したいのか」を知り、AIへの質問への精度を上げる。
  • 「思考を言語化する訓練」をし、概念やイメージをプロンプトに落とし込む。
  • AIの回答を鵜呑みにせず「自分で考え、応用する習慣」を持つ。

そういった習慣の積み重ねは、私たちのさまざまな非認知能力の育成につながる。

人の心は、最終的には人にしか解決できない。「自分はどうしたいのか?」。AIとの質疑応答だけで終わらせない姿勢を持つことは、AI回答をエコーチェンバーとして錯覚しない自分を持つことと同義だ。

AIが助けてくれないシーンでも震えずに生きるために。小さな自己開示から、体温のあるコミュニケーションを始めてみよう。

Edited by s.akiyoshi

注解

(*1)「ChatGPTが自殺の原因に」 4人の遺族がオープンAIを提訴|朝日新聞
(*2)ChatGPT、120万人の利用者が自殺に言及 OpenAIは安全対策急ぐ|日本経済新聞

About the Writer
山口愛未_METLOZAPP

METLOZAPP

数多くのジャンルの経験を生かし、分野横断的な執筆を得意とするWebライター。ウェルビーイングやメンタルヘルス領域を中心に、生活に新たな気づきを与えるコンテンツを発信中。マイノリティな感性に悩む人や、孤独や寂しさを抱きながら暮らす人の心に、少しでも寄り添えるような記事執筆を目指して活動する。現在は、女性のキャリア形成や、人間と動物の関わり方などに興味を持ち学習中。
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