2027年横浜・国際園芸博は、私たちの暮らしをどう変える?

2027年、横浜で開催される国際園芸博は、花や緑を楽しむイベントにとどまらず、これからの暮らしや都市のあり方を問い直す場として注目されている。気候変動や生物多様性の喪失、分断が進む社会の中で、園芸博は私たちにどんな未来像を示そうとしているのか。本記事では、2027年園芸博を手がかりに、暮らしがどう変わりうるのかを考える。

そもそも「園芸博」とは何をする場なのか

2027年3月の開催に向けて準備が進む「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」。横浜市・旧上瀬谷通信施設の一部を会場とし、「幸せを創る明日の風景」をメインテーマに掲げる国際イベントだ。

昨年、盛況のうちに閉幕した大阪・関西万博の記憶はまだ新しいが、万博(国際博覧会)と園芸博は何が違うのだろうか。

BIE(国際博覧会事務局)の承認により開催される万博は、世界各国の文化や科学技術、産業の発展を軸に未来社会を提示する場だとされる。それは、地球規模の課題に向き合うために世界中の技術やアイデアが集まる「体験」の場であり、人類の進歩や展望を示すための“テクノロジーが描く未来のショーケース”だと言える。

一方の園芸博は、AIPH(国際園芸家協会)の承認を受けて開催されるものだ。別名「花博」とも呼ばれるが、その内容は単なる花の展示ではない。

「花と緑」をテーマに、世界各国の文化や技術、暮らしのあり方を紹介しながら、「都市と自然がどう共に生きられるか」を問い直す場であり、環境問題の解決、園芸文化の普及や都市の緑化を掲げながら、私たちの暮らしやまちづくりそのものを見つめ直そうとする試みでもある。

デジタルと自然が共存する社会のあり方や、緑を都市の装飾ではなく“インフラ”として位置づける発想、そして都市と農業・農村の距離を縮める取り組みなどの視点から、自然を切り口に、持続可能な社会のあり方を提案する場である。

1990年に日本で初めて開催された「国際花と緑の博覧会(大阪・花の万博)」は、アジア初の花博としても注目を集めた。

開催地となった大阪市・鶴見緑地では都市基盤や交通インフラの整備が進み、会場跡地の「花博記念公園鶴見緑地」は現在も市民の憩いの場となっている。また、園芸博の開催に伴い「園芸ブーム」が広がったことで、家庭でのガーデニングや地域コミュニティでの緑化活動が活発になった。

このような人々に新しい気づきを与えてきた国際園芸博は、時代の移り変わりとともに社会課題の解決や環境・都市の整備にも貢献してきたのだ。


ビオトープとは

横浜という都市で開かれる意味

開催地である横浜は、港町、郊外、住宅地が入り混じる多層的な都市だ。

東京に近い港湾・工業都市として発展してきた一方で、緑豊かな丘陵地には住宅が広がり、市民の暮らしのそばには、農地や里山をはじめとする多様な自然環境が今も息づいている。

1859年の開港以来、横浜は「園芸植物の玄関口」としての役割も果たしてきた。ユリやバラ、チューリップなど数多くの植物が国内外に輸出入され、日本の「花き貿易」の先駆けとして、園芸文化の発信拠点でもあった。

園芸博の会場となる旧上瀬谷通信施設は、横浜市の郊外部(旭区・瀬谷区)に位置し、2015年に米軍から返還された約242ヘクタールの広大な土地だ。そのうちの約100ヘクタールが、博覧会区域として利用されることになっている。

会場は、戦後およそ70年にわたり米軍施設として使用されてきたため、長年自由な土地利用が制限されていた。その結果、南北に流れる相沢川や和泉川の源流部、谷戸地形などの豊かな自然環境が現在も残されており、貴重な自然資源を活かした新たな活性化拠点としての役割が期待されている。

横浜で園芸博が開催されることには、「都市と自然の関係を問い直す場」としての説得力がある。同市は「グリーンシティ」という都市像を掲げ、環境負荷の低減と快適な暮らしの両立を目指している。また、都市機能と自然環境が調和し、海・山・河川・市街地・郊外部が入り混じるこのユニークな都市構造を通して、未来の暮らしを「風景」として描こうとしている。

港町として園芸の国際交流を担ってきた歴史と、郊外の自然が息づく都市構造。その両方を併せ持つ横浜で開催されること自体が、今回の園芸博のメッセージを象徴しているとも言える。


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私たちの暮らしはどう変わりうるか

この園芸博をきっかけに、私たちの暮らしはどのように変わっていくのだろうか。

国際園芸博覧会協会は、SDGsの達成にとどまらず、2050年のカーボンニュートラル実現や気候危機への対応など、「グリーン社会の実現」に貢献することを掲げている。さらに、2030年以降の社会を見据え、「Society5.0の展開」や「グリーンインフラの実装」などを方向性として打ち出している。

たとえば今回の園芸博では、一部の展示体験に“バイオフィリア”(人間が自然とつながりたいと望む本能的・遺伝的な欲求)の考え方が取り入れられる予定だ。古くからの農的な暮らしの中で育まれてきた“人間の本能”に目を向け、「自然とのつながり」を再発見する。そんな体験が、私たち一人ひとりの意識や行動を少しずつ変えていくきっかけとなるはずだ。

また、世界中から集まる食や住まい、公共空間などにおける多種多様なアイデアに触れることで、私たちの暮らしにおける“新しい当たり前”を目の当たりにできるだろう。会場では、企業や農家と連携し、「身近な食」を通して食料危機や農業の課題を考える体験型コンテンツも構想されている。さらに、自然の機能や仕組みを都市づくりに生かす「グリーンインフラ」の実装も視野に入れられている。

横浜園芸博は、単なる「花や緑を見るイベント」ではない。気候変動や食料問題、都市部への人口集中といった課題が山積する現代を生きる私たちに、体験を通して「選択を変えるきっかけ」を提供する貴重な機会なのだ。来場者一人ひとりがその場で見て、聞いて、体感する。一つひとつの体験が日常の小さな選択に影響を与え、やがて自然との共存を実現する新しい暮らしと未来都市のかたちへとつながっていくことを期待したい。

Edited by k.fukuda

参考サイト

公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会
国際園芸博覧会の概要|国土交通省
国として国際園芸博覧会を開催する意義|国土交通省
2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)|国土交通省
2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)|神奈川県ホームページ
横浜市の地域特性を踏まえた 現状と課題について|横浜市

About the Writer

ともちん

大学で英文学を学び、小売・教育・製造業界を経てフリーライターに。留学や欧州ひとり旅を通じて「丁寧な暮らし」と「日本文化の価値」に触れ、その魅力を再認識。旅や地方創生、芸術、ライフスタイル分野に興味あり。言葉を通して、自尊心と幸福感を育めるような社会の実現に貢献することを目指している。
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