次の旅からできる。サステナブルツーリズムのコツ5選

サステナブルツーリズム」という言葉を聞いたことがあるだろうか。旅先の自然や文化、経済を守りながら「未来にわたって観光を楽しめるようにしよう」という考え方だ。難しく感じるかもしれないが、実は普段の旅行に少しの工夫を加えるだけで誰でも実践できる。次の旅から実践できる、簡単で効果的な5つのコツを紹介しよう。

次の旅からできる、サステナブルツーリズムのコツ5選

世界中で多くの人が旅を楽しむようになった一方で、観光客の殺到による自然破壊や、ゴミ問題、騒音といった「オーバーツーリズム(観光公害)」が課題となっている。かつては富裕層の楽しみだった旅行が、誰もが気軽に楽しめる「マスツーリズム(大衆観光)」へと広がった結果、環境負荷が急速に高まったのだ。

これに対し、国連世界観光機関(UNWTO)は、訪問客・産業・環境、そして受け入れ地域のニーズをすべて満たしつつ、現在と未来の影響を十分に考慮した観光を提唱している。サステナブルツーリズムはSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」や目標12「つくる責任 つかう責任」にも深く関わっており、今や世界の観光政策のスタンダードとなっている。

ここではサステナブルツーリズムを実践するために、私たちができるアクションを見ていこう。


熊本県「千年の草原」

①環境負荷の少ない交通手段を選ぶ

シドニー大学の研究によれば、世界のCO₂排出量のうち観光部門が占める割合は約8%(*1)とされており、その多くが移動によるものだ。特に飛行機は移動距離あたりの排出量が多い。

目的地によっては、鉄道やバス、あるいはフェリーなどを積極的に活用してみよう。例えば、ヨーロッパで「最も環境に優しい首都」と呼ばれるスロベニアのリュブリャナでは、天然ガスで走る市バスや電気鉄道が導入されている。また、ドイツのバイエルン州にあるベルヒスガーデン国立公園では、自動車を使わない観光プロジェクトが推進され、電動遊覧船や自転車用トレイルが整備されている。

車窓から流れる景色を眺めたり、駅弁を味わったりする時間は、公共交通機関ならではの贅沢だ。目的地に早く着くことだけを目的とせず、移動時間を「旅の一部」と捉え直すと、楽しみも広がる。

②地元に根付いた宿を選ぶ

宿泊先を選ぶ際は、その宿がどれだけ地域社会と経済的につながっているかに注目してみよう。大手ホテルチェーンも便利だが、地元資本の宿や地域の伝統的な建物を再生した宿を選ぶことで、地域経済の直接的な支えになる。宿泊代金が外部に流出せず、その土地の雇用やインフラ維持に還元される「経済の循環」が生まれる。

例えば、長野県の「カミツレの里 八寿恵荘」は、ヨーロッパの厳しい基準を満たした日本初のBIO HOTELだ(*2)。提供される食事のほとんどが地元産や自社農園のオーガニック食材であり、建物には地元の無垢材が使われている。

宿の公式サイトで「地産地消の取り組み」や「エネルギー効率の良い設計」がされているかを確認するだけでも、サステナブルな宿選びとして十分な行動だ。宿泊がその土地の美しい景観や伝統を次世代につなぐ「投資」になると考えれば、宿選びの視点も変わるかもしれない。

③ローカルなお店で買い物をする

観光による利益をその地域で循環させるためには、個人経営の飲食店や市場、地元の工房を意識的に利用したい。どこにでもあるチェーン店ではなく、その土地独自の素材を使い、職人が伝統を守っている店を選ぶことで、地域の文化継承を間接的に応援することになる。

例えば、群馬県桐生市では「ファッションタウン構想」という町おこしを行っている。1300年の歴史を持つ織物文化に触れられるコスプレイベントは、若者や外国人からも人気だ。

地域で、地元の工芸品を適正な価格で購入したり、郷土料理を味わったりすることは、地域住民の誇り(シビックプライド)を育むことにもつながる。地域の素材にこだわった食事を楽しみ、生産者の顔が見える特産品を手に取ることで、ガイドブックをなぞるだけの旅では得られない満足感や感動を味わえるだろう。


FT桐生

④旅先でのルールを事前に把握する

訪れる場所が自然保護区域であれば立ち入り禁止エリアを、文化的な遺産であれば撮影や服装のマナーを事前に調べておくことも大切だ。例えば、クロアチアのドブロブニクでは、「旧市街を水着で歩かない」「文化財の周りで飲食をしない」といったルールを設け、歴史ある街を守っている。

マナーを守ることは、地域住民の快適な暮らしを守ることでもある。観光客の振る舞いによって住民がストレスを感じてしまえば、その観光地は持続不可能になるかもしれない。「訪問者」としての敬意を持ち、現地の文化や暮らしのルールを尊重することで、住む人も訪れる人も居心地の良い環境が保たれる。

⑤使い捨ての持ち物を減らす

旅先で出るペットボトルや割り箸、アメニティのプラスチックゴミは想像以上に多い。しかし、マイボトルやエコバッグ、自分専用の歯ブラシを持参するだけで、旅先での廃棄物は大幅に減らせる。

宿泊施設側でも、ニュージーランド発の固形シャンプー「エティーク」のように、プラスチック容器を必要としないサステナブルな製品を取り入れる動きが広がっている。利用者である私たちも、そうした取り組みを支持し、身近な持ち物から変えていくことを意識したい。

何も、最初から「完璧にゼロにする」と意気込む必要はない。「今回はマイボトルだけ持っていこう」といった、自分にできるひとつから始めるだけで十分だ。

旅にサステナブルなひと工夫を

サステナブルツーリズムは、特別な誰かが行う難しい活動ではない。環境への負荷を少し減らし、地域の文化を尊重し、地元の経済に貢献する。そんな「旅先への思いやり」の積み重ねが、美しい旅先の未来を守ることにつながる。

次の旅行では、交通手段や宿の選び方を少し変えてみたり、お土産を地元の工房で選んだりしてみてはどうだろうか。ほんのひと工夫で、あなたの旅はもっと豊かで、世界に優しいものになるはずだ。

Edited by k.fukuda

注解・参考サイト

注解
*1 Global tourism carbon footprint quantified in world first|The University of Sydney
*2 有機栽培カモミール畑が広がる日本初ビオホテルの 「オーガニック・ウェルネス・リトリート」|環境省

参考サイト
持続可能な観光ガイドライン|国土交通省
サステナブルツーリズムとは|JTBコミュニケーションデザイン
サステナブルツーリズムの事例とは?意味やポイント・SDGsとの関連性も解説|JTB 法人サービス

About the Writer
丸山瑞季

丸山 瑞季

大学で国際コミュニケーション学を専攻。卒業後はデジタルマーケティングに携わり、現在は難聴児の子育てに奮闘しながら、楽しく生きることをモットーに在宅で働く。関心のあるテーマは、マインドフルネス、ダイバーシティ、心理学。趣味は、食べること、歩くこと、本を読むこと。この人が書いた記事の一覧

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