
AIの躍進により、私たちの生活やビジネスは激変した。脳内の曖昧なイメージをプロンプトとして入力するだけで、AIは即座に商業レベルにまで昇華してくれる。
一方で「人間の創造性がAIに奪われつつある」と感じる機会も増えつつある。本記事では、AI時代における「人間とAIの共創」をテーマに、両者が歩む未来について掘り下げていく。
なぜAIは「共創パートナー」になりうるのか?

写真、イラスト、モデル、動画、音声、アニメーション、音楽。現代では、あらゆるメディア領域において生成AIが用いられている。
AIの思考の精度や生成物の質は日々向上しており、今や「人間に依頼せずとも生成AIで十分」となるシーンも確実に増えつつある。
そこで懸念されるのが、人間の「創造力・創造性」の喪失だ。
AIは人間の創造性を奪うツールであってはいけない。人間の創造力を即座に具現化する「作業プロセスの簡略化ツール」として機能するべきである。
なぜなら私たち人類は、創造力によって進化し、文明を発達させてきたからだ。生成AIの誕生も創造力の賜物であり、AIはあくまで「人間が蓄積してきたデータから情報を継ぎはぎするツール」でしかない。AIは、0から1を生み出す「創造」をすることはない。
人間から創造力が失われれば、新たな文化や文明の誕生もなくなる。人間とAIの健全な共存のためには、AIと「共創」する姿勢が求められる。
AIをパートナーとする人間の役割

そもそも創造性とは、新しいアイデアや価値、有用な解決策などを生み出す能力だ。生成AIが生まれるまでは、人間は自らの感性や経験をもって「発想」を生み、世に新たな価値を生み出してきた。
生成AIが拡大しても、人間の創造性が失われるわけではない。しかし今後すべての創造をAIに一任すれば、人間が創造力を発揮する必要性自体が下がるため、創造性が退化することは明白だ。
時代が変われば必要なスキルも変わる。AI時代で人間が創造性を失わずに生きる術は、AIを邪見に扱うことでも、ましてやクリエイティブのすべてをAIに委ねることでもない。AIを「良きパートナー」として受け入れ、共に歩む胆力が必要だ。
AIとの共創における人間の役割は「製作者」ではなく「設計者」だ。AIはプロンプトによって機能するため、人間はプロンプトを設計することで、狙い通りの生成物をAIに出力させる。
膨大なデータからサンプリングする能力は、人間よりもAIのほうが圧倒的に高い。AIのサンプリングから生まれる予期せぬ「偶然性」と、人間の明確な「意図(プロンプト)」が融合することで、人間単独では到達し得なかった新しい表現が生まれる。
そしてAI生成物を、最終的に判断するのは必ず人間だ。人間による判断のプロセスこそが、人間とAIのあるべき共創に必須の要素なのだ。
AI生成物に対する「価値基準の所有と選別」は、AI時代における人間の創造性の核となる。
新領域を開拓するクリエイターの事例

共創のかたちに正解はない。AIが人間の創造性を昇華するツールであるならば、人間の創造力が無限である限り、共創のかたちも人の数だけ存在している。
ここでは、AIと共創して新たな価値を生むクリエイターの事例を紹介する。人間の脳と五体だけでは成し得ない、AIと手を取り合って創る新しいコンテンツたち。そこには「あるべき技術の使い方」のヒントが隠されている。
AIと画像編集ソフトを駆使したメディアアート
生成AIの発展は、テクノロジーを表現媒体とする「メディアアーティスト」の可能性を飛躍的に向上させた。生成AIを活用した代表的なメディアアーティストの1人が、ハンガリー出身のDavid Szauder(*1)氏だ。
同氏は画像生成AI『Midjourney(*2)』と画像編集ソフトを使用し、独自の幻想的な世界観を表現している。同氏が投稿する作品は、現実ではありえない造形や動作をする、やや不気味にも見える生き物たちが主体だ。
常識に捉われない美的感覚と、AIならではのサンプリング能力を駆使した作品たちは、世界中から熱狂的なファンを集めている。(*3)(*4)
AIを味方につける作曲プラグインの開発
作曲AIの進化により、一部では「作曲家はAIに滅ぼされる」と囁かれている。しかし作曲家のDani Karanyi(*5)氏はAIの機能を活用し、新たなサービスを提案した。
同氏がリリースしたのは、AIを搭載したプラグイン『CLOUDMAX BREEZE(*6)』。本AIを利用すれば、技術的な知識がない人でも直感的に楽曲を製作できる。
同氏は生成AIを「創造的な仲間」と捉えており、クリエイティブにおけるAI利用に肯定的な姿勢を示している。同氏いわく「クリエイターはAIによって創作活動をより楽しめるようになった」とのことだ。(*7)
クリエイターに求められる新しいスキル

ここでは、AI時代のクリエイターに求められるスキルについて解説する。AIを含むデジタル技術とともに歩むためには、技術への深い理解や、技術進化に応じて移りゆく社会やモラルの把握が必要だ。
働き方の変化にともない生まれた「今の時代に求められるスキル」を知ることで、AIとの健全な共創が実現する。
プロンプトエンジニアリング|AIに入力する言葉の設計力
プロンプトエンジニアリングとは、「生成AIから意図した通りの回答や出力を引き出す」ために、プロンプトを設計する技術を指す。言い換えれば「言葉の設計力」ともいえる。
プロンプトエンジニアリングを磨くことで、質問応答や文章生成などをはじめとするAIの能力を、最大限引き出すことが可能だ。効率的に精度の高い結果が出力されるため、より高品質かつニーズに合った生成物を得られる。
AI生成における倫理観|時代とともにアップデートする力
「常識」は社会の変容によって変わっていく。AI技術がさらに発展すれば、常識やモラルのかたち、関連する法律なども当然変化するだろう。
たとえばAIが学習した既存作品の著作権や、AI生成物における権利の帰属といった倫理的なテーマは、AIとの共存において乗り越えるべき課題として存在している。
常識は流動的に変わりゆくからこそ、AI・ITのトレンドや社会変容を敏感に察知しつつ、倫理観をアップデートしていく姿勢が求められる。
人間固有の価値の追求|感情や一次体験の尊重
AIの可能性を引き出すのは人間だ。AIと人間の共創は掛け算であり、どれほどAIが進化しようとも、使う側の人間の能力が低ければ出力の質も下がる。
AIが発展する現代だからこそ、共創のためには「人間固有の価値」を上げる取り組みが求められる。
人間にできて、AIにできないこと。それは人生におけるあらゆる「体験」であり、経験に基づいた「感情の変化」であり、個々の感性や感受性による「気づきやひらめき」だ。
AIには到達できない人間ならではの価値を高め、磨き続ける習慣自体が、クリエイターの差別化要素となる。
AIとの融合が拓く、未来の創造的ウェルビーイング

生成AI自体には、人間の創造性を潰す力はない。AIの善悪や有用性を決めるのは、使う側の姿勢や利用プロセスだ。
人間の「想像力」をAIの「実現力」で強力にサポートし、創造のハードルを下げることで、創造領域そのものはさらに拡張されていく。
AIに仕事を奪われつつあるクリエイターは少なくない。しかし私たちが取り組むべきは、AIの進化を恐れるのではなく、AIを「新しい表現手法」として積極的に学ぶ姿勢を保つことだ。
AIを正しく利用すれば、従来の労力や経験の壁を超え、アイデアを自由にかたちにする「未来のクリエイター」に近づける。AIとの共生は、人間の創造的ウェルビーイングを向上させるための選択なのだ。
Edited by s.akiyoshi
注解
(*1)David Szauder
(*2)Midjourney
(*3)ぽりとぴ|人体・解剖学をモチーフにしたファッション!メディアアーティスト David Szauder さん
(*4)Instagram|davidszauder
(*5)Dani Karanyi
(*6)CLOUDMAX BREEZE
(*7)SONICWIRE|AIを相棒に。起業家兼作曲家のDani Karanyi氏が語る、AI時代のDTMトレンドとは。




























METLOZAPP
数多くのジャンルの経験を生かし、分野横断的な執筆を得意とするWebライター。ウェルビーイングやメンタルヘルス領域を中心に、生活に新たな気づきを与えるコンテンツを発信中。マイノリティな感性に悩む人や、孤独や寂しさを抱きながら暮らす人の心に、少しでも寄り添えるような記事執筆を目指して活動する。現在は、女性のキャリア形成や、人間と動物の関わり方などに興味を持ち学習中。
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